カラフルな世界
今日は体力的にも精神的にもとても疲れてしまった。そんな日が続いているように思う。
疲れすぎたり、心が傷つくと、周りの景色も灰色に見えてくる。
そんな灰色の世界の中で、たまにやらかす珍現象が起きた。
距離感分からない現象。
夕食時、ビールをグラスについで飲もうとした時、
冷たい!
私は何が起きたのか、そんなことが起きてしまうのかと自分を疑った。
グラスのビールを飲もうとして、ここが口だと思って傾けた所は、まだ口ではなく、ジョボジョボと服の上、腹の部分に大量にこぼしてしまったのだ。
驚きながら見渡すと、夕食を食べている息子と娘も驚いた顔をしてそんな私の姿を見ている。
「今の、何?」
「うそでしょ、お母さんどうしたの?」
息子も娘も、若干引き気味でそう言った。
そんなの、私が1番聞きたいことだ。
私はビショビショになったTシャツをタオルで拭いたが、結構な濡れ具合だ。腹が冷たい。
この、距離感が分からなくなる現象は一体なんだろう・・・。
グラスを唇にちゃんと付けたと思い、今が流し込み時とグラスを傾けたつもりなのに、現実はこぼれてビショビショだ。
グラスが唇に触れた感覚は、どうやら幻だったようだ。
自分が怖くなる。
分からなくなる。
そして、一瞬のうちに考えてしまう。
私、大丈夫?
ボケすぎなんじゃないの?
教えて、今のはどういうことなの?
頭は大丈夫?
無意識のイタズラ・・・?
そんなの少しも笑えないわ。
そんなにこぼしてしまって恥ずかしいわよ。
ウケ狙い?
なんでこんな現象が起きるの。この前も同じ事したわよね? バカなの?
というように、負の感情で忙しくなる。
距離感って、大切。
でも、距離がありすぎるのも寂しい。
気持ちを内に閉じ込めて、距離を広げ過ぎたら、虚しくもなる。
狭すぎても息苦しい。
もうあれこれ考えるのはめんどくさい。
なんだか分からないからとりあえず、
「めっちゃ冷たい! 信じられん! どんだけ~!」
と、無理に笑ってみた。
笑ってみたら、若干引いていた子供たちも笑いだした。耳に心地の良い幸せな笑い声だ。
キラキラと眩しい光が差してくる。
灰色の世界に華やかな色が付いたような感覚。
カラフルでとても美しい。
重い気持ちがスっと抜けていく。
一瞬前は全く楽しくなかったのに、ただ笑ってみただけで不思議と楽しくなってきた。
今週一週間、頑張った。
私はすごい! と、自分を褒めた。
このカラフルな世界で、次の一口、私はゆっくりとグラスを傾けた。