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3ヶ月目でギリギリ完母になった話

子どもを出産して3ヶ月が経った。
出産直前の私は産後うつや睡眠不足にひたすら怯えていたが、今は育児が楽しくて仕方ない。
出産前の自分に今の気持ちを大声で教えてあげたいが、同じくらい強く伝えたいのが母乳育児についてである。

私は最初完母を目指していたが、SNSでミルク育児の利点を知った結果なんとも中途半端な混合育児をすることになり、ここまでたくさんの悩みができた。
正直言って母乳、めちゃくちゃメカニズムが難しい。
「こんなこと知らなかった」
「これは前から知っておきたかった」
と思うことの連続で、随分骨を折った。今も完璧とはいかないし、今後新しい課題も出てくるだろう。
でも3ヶ月を迎える節目として、私が歩んできた道を振り返っておきたいと思う。

出産前 母乳育児推奨の病院で産むことに

出産したのは、里帰り先の総合病院だ。
産婦人科の廊下に『母乳育児成功への道』と書かれたポスターが貼ってある、母乳育児超推奨の病院だった。
この病院に決めた理由は、母乳育児のサポートが手厚いからではない。年齢的に高齢出産に片足を突っ込んでおり、妊娠初期に絨毛膜下血腫を発症と複数リスクが乗っていた私は、「有事の際に対処できる総合病院がいいな」と考えここにした。

当時、私は母乳に対して強い希望はなかった。
むしろXで情報を集めるうちに
「母乳育児はお母さんが休めなくて大変!」
「よく母乳が出る選ばれし者だけが可能な茨の道」
「ミルクだと保育園に預ける時もスムーズ」
と母乳へのネガティブな情報ばかり目につき、「もしかしてミルクで育てた方が楽なのでは…?」と感じていた。
産後うつや睡眠不足にビビり倒し、とにかくいらない苦労をしたくなかった私。
母子同室という産院の方針にさえ、「母子同室って赤ちゃんの管理はお母さんに任せるってことでしょ?病院側に人手が足りなくて負担がこちらに回ってきているだけなのでは?」と懐疑的になる始末だった。

ただ、決めてしまったものは仕方がない。
腹を括って完母を目指すと決め、前情報を入れるため何冊か書籍を読んだり、乳房の訪問ケアを調べたりした。
この時牧野すみれさんの書籍を読んだのだが、今も悩んだ際にお世話になっているのでおすすめです。

事前にできることはやったぞー!と意気込み、いざ出産を迎えました。


出産直後 産院での生活

出産を終え、5泊6日の入院生活が始まった。
母乳育児をスムーズに進めるために必要なカンガルーケアや出産後2時間以内の授乳は、こちらが言わずとも産院側で進んで対応してくれた。

産院では授乳のたびに助産師さんが指導してくれ、血行促進のマッサージや足湯をしてくれたり、温かいハーブティーを飲ませてくれたりと、母乳が増えない私を最大限フォローしてくれた。
ふわふわで頼りなく、少し抱き方を間違えたら折れてしまいそうな新生児。小さな命が必死で乳を吸う姿は、なんとも言い難い多幸感があった。

恐らくこのあたりで、「母乳育児を続けたい」と強く願うようになった気がする。
「とにかく楽に育児したい」とあんなに思っていたのに。「乳を吸う我が子の可愛い姿をずっと見ていたい!」に180°変わった。それくらい自分の乳を吸ってくれる赤ちゃんは愛しかった。

そして最終日。
結局最後まで私の母乳は十分に出ることはなく、1回の授乳につき30mlのミルクを追加する方針で退院することになった。

<退院直後の状況>
・ミルクの量…1回につき30ml
・授乳回数…11-13回


1ヶ月健診 もうミルク足さなくていいんじゃない?

産院は1か月健診を迎える前にも2度ほど母乳相談を行ってくれた。
順調に母乳が増えていくのを確認してもらい、退院2週間後には追加ミルクは20mlでいいよ〜と言われた。
1ヶ月健診では体重増加も1日あたり35g。特に問題なく新生児期間を終えることに。

<2週間の状況>
・ミルクの量…1回につき20ml
・授乳回数…9-11回
・体重増加…1日あたり35g

そしてこの時先生から、
「20mlだったらおやつ程度だし、追加ミルクはなくてもいいんじゃない?」
と言われた。
が、生後半年で保育園に入れる予定にしていた私は哺乳瓶の感覚を忘れてほしくなかったので追加ミルクを続けることに。
助産師さんに意見を求めたところ、「母乳ばかりで哺乳瓶で飲めず苦労するママもいる」と言われ、そりゃそうだよなぁとミルクを足すことをやめなかった。

今思えば我が子は吸うのが上手で哺乳瓶を吸えない事態にはならなさそうだったので、ここで完母にしておけばよかった。
ただSNSの情報を見て、完母は選ばれし者しかできない茨の道だと思い、更に1日あたり50gも増えちゃったみたいな投稿を見るたびに35gしか増やせなかった自分に自信を無くしていたので、完母にする勇気がなかった。

この時は体重は増えれば増えるほど優秀!と勝手に思っており、客観的な判断ができていなかった。成長曲線ど真ん中にきっちり収まる優秀ベビーだったので、いらんことをしたかもと今は思う。

生後1ヶ月半 赤ちゃんが授乳中に泣くように

生後1ヶ月半頃。
相変わらず授乳のたびに愚直に20mlミルクを足していたが、この辺りから授乳中に赤ちゃんが泣き出すようになった。
途中まで順調に吸うのに、5分ほど経つと泣いて吸ってくれなくなる。

赤ちゃんなんておっぱい大好き、おっぱいさえあればご機嫌、おっぱい最強!だと思っていた私はめちゃくちゃ焦る。
泣くたび「母乳が出てないに違いない!」と思い、追加のミルクをどんどん飲ませるようになった。

ただ疑問だったのが、赤ちゃんが泣いて吸わなくなった乳首を指で絞ってみると、たらたらと母乳が出てくる。
ちゃんと出とるやないかい、と赤ちゃんに乳首を差し出すが、なおギャン泣き。
無理にあげておっぱい嫌いになってしまったらどうしようと恐れ、泣かれるくらいならと更にミルクを追加するようになった。

母乳は吸われるたびに新しい母乳が作られて量も増えていく。
母乳を増やすには頻回授乳が鉄則だが、この頃は

頻回授乳しようとする
→授乳すると赤ちゃんが泣く
→ミルク追加
→ミルクでお腹いっぱいになるので授乳の機会が増えない
→頻回授乳できず母乳が減る
→ミルクの割合がどんどん増える

というループに陥り、どんどん完ミ寄りになっていった。

<1ヶ月半の状況>
・ミルクの量…40-100mlの追加をほぼ毎回
・授乳回数…8-9回
・体重増加…1日あたり32g

生後2ヶ月 授乳中に泣く原因判明

なぜ出ているのに吸ってくれないんだ〜〜と悩む私。
吸ってくれない分を搾乳したりも試したが、30mlくらいしか取れずあまり効果を感じなかった。そもそも出ていない可能性も否定できない。
母乳にこだわるあまり、赤ちゃんを無駄に泣かせている気がして辛かった。

手っ取り早く原因を探りたかったので、区の助成で助産師訪問を依頼し、赤ちゃんが授乳中に泣く様子を見てもらった。
最初の2-3分は順調に吸い、途中からギャン泣き。片方の乳首に入れ替えても最初の2-3分は吸うけど後から泣く。
結局吸ってくれなくなり、追加でミルクを足す。

乳頭混乱であれば最初に咥えた時点から吸ってくれなくなるはずだし、乳首を絞ればちゃんと母乳は垂れてくるし、途中から泣き出す理由がわからず困った。
しかしさすがは助産師さん。「なるほどね〜」と言って、理由を教えてくれた。

「母乳は出るスピードが一定じゃなくて、最初は勢いよく出るけど途中からたらたら勢いがなくなってくる。この赤ちゃんは最初の勢いよく出る母乳が好みで、途中でたらたら出るようになると『もっと欲しいよー!』って伝えたくて泣き出す。だから赤ちゃんが泣き出したら、左右を入れ替えてあげるといい。入れ替えるうちに片方が充填されて、また出るようになるよ」

とのこと。
なるほど!それなら絞ったら出てくるのに飲んでくれないのも説明がつくぞ!と私は小躍り。
また、おっぱいの上部や内側にも母乳がたまっているからその辺りを抑えながら絞るようにすると勢いよく出て、赤ちゃんがいっぱい飲めるよとも教えてもらった。
この辺りを実践し、ちょっとずつ赤ちゃんが吸ってくれるようになった。

<2ヶ月の状況>
・ミルクの量…40-100mlの追加を1日4-5回
・授乳回数…7-9回

生後2ヶ月半 やっぱり完母を目指したくなる

助産師さんの助言から2週間。
最初はいい感じに進んでいたが、毎回うまく吸ってくれるわけではない。赤ちゃんがどれくらい吸ってくれているかを確認したかったので、区主催の母乳教室に参加した。

母乳教室に参加し、測定してもらうと60mlほどしか出ていなかった。
助産師訪問以降は吸ってくれるようになったし、ミルク足さなくてもいいくらい余分に出てないかな〜と期待したが甘かった。
母乳、本当に必要な分しか出るようにならない。ボーナスでいっぱい出してくれるとか、そういうラッキーなサプライズはないらしい。

助産師さんに
「1日に300-400ml足してるなら、それでピッタリくらいだと思うよ」
と言われた。
が、この時点でまた欲が出る。
出来ればミルクを足さない方が手間が省けるし、何より私の母乳でお腹がいっぱいになって満足してくれるならめちゃくちゃ幸せだ。毎回足りないと泣かれるのは心が削られる。
子供には1秒でも長く笑顔でいてほしいのが親心である。

完母の夢をあきらめられず、少しでも母乳が増やせるよう頑張ることにした。

まず母乳を出すために当時の食事量では足りなかったので、おやつに毎日サトウの切り餅を2個たべて生産力をアップ。米の量も30%くらい増やした。足した分吸われたのか、意外と体重は増えなかった。
半信半疑ながらミルクアップブレンドも購入して飲んだ。産院で飲んだハーブティーと同じものだった。
母乳が増やせるのは生後1カ月とか50日とか100日とか色んな説がありすぎて、自分に都合のいいことだけを信じた。
そして母乳をあげている内に、授乳途中に泣くのは必ずしも母乳が勢いよく出なくて泣いているわけではないことに気づいた。寝ぐずりと勘違いしていたことが半分くらいあったらしい。
泣き出してすぐはミルクを足さず、あやしてご機嫌をうかがってみるとミルクを足さなくても乗り切れる。
そうすることで母乳の間隔が狭くなり、あげられる回数や時間が増えていった。

<2ヶ月半の状況>
・ミルクの量…60-100mlの追加を1日1-2回
・授乳回数…9-12回

生後3ヶ月 ほぼ完母が軌道に乗る

そして今。
ミルクを足すのは寝る前最後の授乳だけになり、日中は母乳で事足りるようになった。
母乳の勢いがなくて泣かれることもなくなった。
体重も成長曲線ど真ん中を推移しており、排泄も問題ない。乳首をつまんでみると、射乳もかなり増えていた。

もちろんミルクをあげても順調に育っていたけれど、自分の母乳で赤ちゃんが満足してくれるのは見ていて心地がいい。満足感で心が軽くなった。

最後に残った寝る前の追加ミルク100mlだけは、どうしてもやめられなかった。
赤ちゃん側が習慣として受け取ってしまったのか、寝る前はミルクを吸わせないと母乳を吸ってくれなくなってしまうのだ。これだけは刷り込まれてしまったんだと捉えて諦めた。

<3ヶ月の状況>
・ミルクの量…100mlの追加を1日1回
・授乳回数…8-10回

まとめ

ここまで記録を書いたが、正直母乳でもミルクでも、赤ちゃんがすくすく育つことには変わりないと思う。
どっちの方針でもお母さんが一生懸命頑張っていて、赤ちゃんは元気ににこにこ育つ。両方に利点とリスクがあり、どちらも万能ではない。
そして赤ちゃんはきっと将来、このことを覚えてなんていない。大人になってから「お母さん、完母で育ててくれてありがとう」とか言ったことないし。
私は自分のエゴのために、母乳をあげたかっただけだ。

ただ、どうしてここまで上手くいかなかったか振り返ると、産前の時点で産後の生活を予想することがめちゃくちゃ難しかったことが理由の一つにあると思う。

母乳育児のためには頻回授乳が鉄則だ。
だが、知識としては認識していても、「出産直後のお母さんは交通事故に遭ったのと一緒!」という前情報を聞くと、頻回授乳なんて到底出来ないように感じる。
交通事故直後に1-2時間おきに起きて昼夜関係なく授乳できるか?会陰が裂けて座るのも困難なのに?無理すぎるだろ。

また、母乳が出るのは体質による、出ても赤ちゃんが吸うのが下手かもしれない、たくさん出ても乳腺炎になる可能性がある……とかなんとか言われると、ますます母乳育児は茨の道のような気がしてくる。

私に完母は無理かもという思いが根底にあったせいで、最初の方針がブレて中途半端になってしまった。
母乳育児は滑り出しが何より肝心で、最初にビタッと方針を決めないと後々リカバリーが難しいのだ。それすら最初は知らなかったけど。

そして何より、自分がこんなに母乳育児に執着することを予想できなかった。
母乳は出ればラッキー、出なくてもミルクですくすく育つしなんとかなるなる!と思っていたのに、いざ母乳を吸う赤ちゃんを目にしたら、1回でも1秒でも多く吸ってほしくてたまらなくなった。
この感情の変化は全く以て説明できない。
上手に割り切る方法もあったかもしれないが、私にはできなかった。


ここまで3ヶ月。やっと3ヶ月。
たくさん悩んでたくさん心配し、何よりたくさんの幸せを感じた3ヶ月だった。

きっとこれからも悩みは尽きないし、保育園や体調不良、交友関係や進路など、どれも心配でたまらなくなるんだろう。
そしてこれからも子どもの些細な仕草に、今まで想像もできないくらいとびきりの幸せをもらうんだろう。

母乳のことだって解決したみたいに書いたけど、この分だとまた断乳のときにひとしきり悩む気がする。
でもそのたびにたくさん調べて、誰かに頼ろうと奮起して、上手くいかずに頭を抱え、子どもの笑顔で全てチャラになりながら、乗り越えていくんだと思う。
そんなふうに育児の思い出をひとつずつ作りながら、暮らしていけたらすごく幸せだ。

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みはいる
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