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【映画感想】結末を知っていてももう一度観たい『終わらない週末』(2023・アメリカ)
Netflixで視聴。久しぶりにずっと飽きずに観た。2時間20分という時間でも、続きが気になって集中して観ることができた。面白かった!
監督サム・エスメイルの作品で、アマプラで配信されている『ホームカミング』も面白かったので、私と相性が良いのかもしれない。原題は『Leave the World Behind』。
アマンダと夫のクレイ、2人の子どもたちの一家は、人を避けて過ごそうとレンタルした豪華な別荘にやってくる。しかし、到着して早々にインターネットに接続できないことに気がつく。そんなアマンダたちのもとに謎の訪問者がやってくる。その後も、少しずつ異変が起こり続ける。
好き度:★★★★★
「わからない」は怖い
不穏、ずっと不穏。一体何が起こっているのかさっぱりわからない。奇妙なことばかり起こる。こういう、怖がらせてこないのに怖い映画が好きだ。良い!
アメリカ(この主語は大きすぎるけれど、少なくともこの映画のなかでは)は恐れているのだな、と思った。こんな風に自分たちの国のことを思っているのだな。敵国が多く、いつか彼らが結託して逆襲してくる、と。
ドローンが撒き散らしていた紙切れに書かれていた「アメリカに死を」と言う言葉が象徴的だ。文字を見て相手はイラクではないかというクレイたちは考えるが、別の人物は北朝鮮や中国の仕業だと語る。目的や相手がわからないことでさまざまな憶測が広がり、人々はやがて混乱しはじめる。
コスパの良い攻撃
相手を通信を一切繋がらなくして、人々を混乱させ、情報がない中でお互いに疑心暗鬼にし、内側から崩壊させるというのが印象的だった。恐ろしい。
自動運転の車が暴走するところが一番ぞわっとした。
頭の良い顧客でも多額の金を失う。真実ではなく先入観に基づいて選択するからだ。先入観と認識するのは難しい。
恐怖への対応
未知の恐怖に直面したとき、それに対する反応は人によって異なる。
パニックになって、人を信じられなくなる人(アマンダ)
すぐに受け入れる人(クレイ)
冷静に分析をする人(GH)
周囲をよく観察し、どうすべきか考えて行動する人(ローズ)
「人間が嫌い」と呟くアマンダは広告業で働く。「商品を売るために共感したフリをして人にうそをつく仕事」と自分で言っている。その夫のクレイはメディア論の教授。GHは金融アドバイザー。いつも世界の動向を見ている。
彼らの職業と緊急時の反応は必ずしも関係があるわけではないが、メディアの役割や人間、世界の動向について普段から考えている彼らが、情報がないなかで混乱していくのはなんとも皮肉だ。
登場人物たちのなかではローズが一番その場で周りをよく観察し、行動に移すのが早かった。「フレンズが見たい」という欲に基づく行動だったかもしれないが、先入観がない。生き延びるのはこういう人なのかもしれない。
最後は思わず「え、これで終わり!?」とつぶやいてしまった。開かれたラストなので、まだまだ考えるべきポイントはありそう。