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【映画感想】そのしんどさは、その人のもの『夜明けのすべて』(2024・日本)

観たい映画、まずは1作品目。

もっと混んでいるかと思ったら、空いていて意外だった。おかげで快適に観ることができた。

原作は瀬尾まいこさん。読んだことのある作品は多くないけど、その雰囲気が伝わってきた。恋愛映画でもないし、泣ける!って触れ込みでもないし、地味で静かな映画だから人を選ぶのはわかるような気もする。個人的にはデートにも向かないと思う。でもだからこそ、私は大好きだった。じわりもあたたかい。

好き度:★★★★☆

藤沢さんと山添くん

映画全体のトーンとしてもそうだけれど、演技がとても落ち着いていて静かなので観ていて疲れない。ものすごく嫌なやつが出てくるとかストレスのかかることが少ない。助かる。

北斗くんと萌音ちゃん、普通の人を演じさせたら、この2人、本当にうまい。私の隣で働いていそうな雰囲気がある。北斗君に関しては「背、高い!足、細い!」とは思ったけれど。髪を切る前と後の表情、目の感じが全く違
う。すごい俳優だ…。

藤沢さんと山添くんは「普通」に見えて抱えているものがあるし、ちょっと変なところはある。藤沢さん、PMSのことだけじゃなくてけっこう面白くて、初対面の人にいきなりお守りを渡したり、急に自転車を持ってきてあげると言ったり、歩きながらみかんを食べているのも良い。みんな、どこかで普通ではない。

その人を知ろうとすること

誰かのしんどさに気づいた時、どう接するか。「わかるよ、私も同じだよ」と言うのは藤沢さん。「僕のしんどさはあなたのしんどさとは同じではない」と突き放すのは山添くん。それぞれのしんどさは、人によって違う。「しんどい」は同じだけど、まったく違う。

正解はない。もし誰かを助けたいと思うのであれば、まずはその人のことを知り、その人の抱えているものを知ることが必要なのだ。完全に理解することはできないし、わかったところで何ができるのかも限られているけれど、それを知った上で、近くの人の存在で救われることもあるのだと信じたい。

きっかけをくれる

PMSが出てくる映画って、今まで観たことがない。この突然怒りのスイッチが入る感じ、私もわかる。身近な誰かに当たってしまったりする。

今までパニック障害もPMSも聞いたことがない人からしたら、この映画が知るきっかけになるだろうか。それはとても価値のあることだ。この映画ですべてを知ったような気になるのは違うが、まずはそういう人がいると知ることの第一歩にはなる。

映画の中では何かが劇的に改善したり、何かが大きく変わったわけでもない。成長もしていない。でもほんの少しの変化が、誰かを救うこともあるのだと忘れずにいたい。

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