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愛と呼ばずして何と呼ぶ
アサヒビールの「未来のレモンサワー」が再販となった。前は6月に発売されていたから、久しぶりだ。
6月の発売では、数量限定でスーパーに並べられていた。広告も棚も大幅にとって、デデデンと。レモンスライスが入っているレモンサワー。夫は気になっていた商品だったようで、買いたいとせがまれた。でもなぁ。価格を見ると、我が家にとってはやや高いのだ。税込み298円。普通のチューハイ缶よりも値が張る。そりゃお店で飲むよりは安いけれど、家で飲むには高くない?んー。んー。んー。
少し悩んだけれど、味が気になるし買ってみるかと思い切った。
プレーンレモンサワーは甘くなく、大人の味といったところ。もうひとつのオリジナルレモンサワーは甘みも酸っぱさもあって、あまりお酒を飲まないわたしも「おいしい!」と進んで飲んだ。たびたび外でも家でもお酒を飲む夫も「美味しい!」と喜んでいた。
夫は「あー飲みて〜」と時折呟く。連日飲まれるのは勘弁なので、わたしはときどき許可を出すようにしている。夫がいつも飲むのはハイボールかレモンサワー。家飲みのある日、オリジナルレモンサワーを飲むのかと思いきや、美味しすぎるから残り1缶は大事に取っておくと言っていた。
そんな中での再販。わたしたちは絶対買おうねと口をそろえていた。
11月に売られるという情報を得てから時は経ち、秋。
わたしはスーパーに行く用事を済ませて、リビングの座椅子でLINEを開いていた。
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未来のレモンサワー
11.19 年内最終発売(🍋)
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本物のレモンスライス入り。音に高鳴り、浮き上がるレモンに驚く。
香りに包まれ、本物を味わい、果実を堪能する。
かつてない五感でたのしむサワー。
このレモンスライス…じつは食べられます(!!!)
※首都圏・関信越エリアにおいて/数量限定
アサヒビールからだ。へ〜あのレモンスライス食べられるんだ。
って、そうじゃない!
未来のレモンサワー
11.19 年内最終発売
11月19日。19日って、今日じゃない…?
スーパーに行ったときに気づいていれば!
まあまあ、明日見に行けばいいんだし。どんまいどんまい。
夫が帰宅し、今日からレモンサワーが再販だと告げる。
「今日からか!」
「そうみたい。気づくのが遅くて見てこれなかったけど、明日買ってくるからねー」
晩ごはん後。
「レモンサワー売ってるか見てこようかな」
レモンサワーガチ勢の夫が言う。
わたしは昼間に一度行っていたし、寒くて外に出たくなかったので、1人で行ってもらうことにした。
「レモンサワーあっても買ってこなくていいからね。明日買いに行くし」
それだけお願いした。
「ひとつも無かった」
歩いて行ってきた為、あちーと言う夫。でもなんだか、心も体も冷え切っているように感じるのはなぜだろう。
「え。無かったの?」
「無かった。オリジナルレモンサワーだけすっからかん。1人24缶までって張り紙もしてあった」
まさかここまでとは。
昼間の楽観的なわたしにデコピンしたい。声を掛けたい。がんばれ!がんばってもう一度スーパーに行け!レモンサワーを買え!
明るく努めようとしている夫を見て(そう見えた)、わたしは何としてでもレモンサワーをゲットせねばと思った。
次の日、またスーパーへ行った。酒売り場へ直行。が、オリジナルレモンサワーの棚はすっからかん。店を何周しても補充されないので、今日ここでは買えないと諦めた。また入荷されるのだろうか。数量限定。数量限定。後悔が押し寄せる。
未来のレモンサワー 販売店 で調べると、どうやらコンビニにも売っているらしい。中でもセブンイレブンが多いみたいだ。昨日の会話を思い出す。
「スーパーBにも行ったの?」
「行ったよ。でも無かった」
「セブンは?」
「あそこのセブンには無いでしょー」
つまり、あそこのセブンイレブンには行っていない。最後の望み、と帰りにセブンイレブンに寄ることにした。
セブンのお酒コーナーを上から下へ見ていく。
空の棚があると値札を確認し、名前が違うと安堵する。
……ない?
いやいや、もう一度。
やっぱない?
落胆しかけたそのとき、わたしの目線よりもだいぶ上の、最上段が目に入った。
あった。
あったあったあった!!!
わたしに見つけられませんようにと言わんばかりの場所に置いてある。へっへっへ、見つけたもんね!
嬉しすぎて、セブンにいるお客さんや店員さんに「めちゃめちゃ美味しいレモンサワーなんですけど、コレ知ってますか」って、教えてあげたいぐらいだった。
缶が倒れないように冷静にカゴに入れていく。
ミッションコンプリート!
安堵と達成感と、喜ぶ夫を想像すると、にやけてしまう。
1回目の結婚記念日から、さらに1年が経った。
去年のnoteを見ると、わたしは美容室に行き、夜はピザを食べていた。
すっかり忘れていたけれど、今日の夜もピザを食べることになっている。周期的でおもしろい。
わたしたちは結婚して、恋愛から成り立つ恋人関係ではなくなり、信頼からなりたつ夫婦、同志のようなものになった。2年経って、さらに強固な関係になっているのでは、と思う。
いい意味であしらい方も分かってきて、気を遣いすぎず楽でいられる。それがときに寂しくもなるが、嬉しくもあるのだから不思議だ。
夫に、食べたい料理を聞いて作る。食べたいお菓子を聞いて買う。掃除をする。
高級バッグ、アクセサリー、腕時計、洋服。そういうものが欲しくてやっているわけじゃない。
いつも外にいるのだから、少しでも家で喜んでもらいたい。日々の糧になってほしい。そう思ってやっている。見返りを求めるためにやっているわけじゃない。確信する。そう思えていて嬉しい。
エコバッグにあるレモンサワー。10缶の重み。右手、左手と持ち替える。
これは博愛主義?ボランティア?
いやいや。これって、愛なんじゃないですか?
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