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とろ日記(2/9〜10 三、3、さん)


 恥ずかしい。


うまく出来なくて、恥ずかしい。笑われる。無かったことにしたい。ぐるぐる回る気持ちが三すくみのようになって、円を描いている。


何事もまずはやってみないと分からないよ。成功者だって、何度も失敗を積み重ねてきたはずだよ。
自分で自分を慰めてみる。多少は気持ちがマシになるが、少し経つと恥ずかしさが戻ってくる。三すくみがまたスタートし、円が濃く黒くなっていく。



 歯医者も通院しなきゃならなそうだ。
お金が、時間が、通う体力が……。
外に働きに出なきゃ、とは思いつつも、実際はそこまで本気に思っていなかった。いつ転勤になるか分からないし、とかいろいろ理由をつけて。けれど、今回は本当の本当に働き始めたほうがいいのかもしれない。お金も必要になるし、体力もつけたほうがいい。


ふぅー。
気持ちを立て直したと思ったら、しつこい風邪のように悩みごとがぶり返してくる。




 今日はつり革に掴まって電車に乗った。
座席はいっぱい。わたしの左側にあるボックス席をなんとなくチラ見すると、若い女の子たちが座っている。


顔や服装はよく分からないので多分だが、眠っている女友だちをスマホで撮る、隣に座っている男の子。それを見てクククっと笑う向かいの席の女の子。その女の子も、眠っている友だちの写真をこっそり撮ろうとしている。


日常のひと場面を目撃してしまった。
なんでもかんでも恋愛関係に結びつけるのは良くないが、なんだこの3人の関係性は!
胸がこそばゆい。むず痒い。
加えて、わたしの胸に生えた産毛が春風に撫でられて、軽く揺れ出したみたいな感じもする。


もし、もしもよ?わたしが起きている側の女の子だったら、寝顔を撮っている男友だちを見て(何やってんの〜)という感じで笑いながらも、(わたしのことも撮ってよ…)なんてやきもちを妬いてしまうんじゃないだろうか?


わたしは何を想像しているんだ。
とにかく、人の日常を勝手に覗き見し、青春を感じてしまった。




 
 一旦家に帰ってから、スーパーへ行く途中。
小学3年生くらいの少年が、角を曲がって姿を現した。と、


「がんばってみるかぁーーーー!!!!!」


めいっぱい息を吸って、自分を鼓舞するために言ってみたような大きい声が聞こえてきた。

タンッ タンッ タンッ

力を込めながら駆け出していく。


子どもでもそう思うことがあるんだもん。
大人のわたしなら尚更。

「がんばってみるかぁ」

三すくみと3人と3年生。さん、は絶妙だと思う。






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えりぱんなつこ
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