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死んだ星の光を浴びる

恋愛のことは書かないつもりだったんだよ。
だってダサいじゃん。
感情に浮かれて、衝動に溺れて、本能に流されて。
そんなの動物と同じじゃん。みっともないじゃん。
そんなの、ただの女みたいじゃん。
だから、恋愛のことなんか、絶対書きたくなかったんだよ。

賢い人になりたかった。
賢い人だと思われたかった。
女だとか、若さとか、容姿とか、そういうのじゃないところで評価されたかった。
私にとって意味のある誉め言葉は、「頭いいね」「おもしろいね」「がんばってるね」だった。それ以外は、私がたまたま被せられて、その時たまたま持っていた上っ面の皮に対する評価でしかなかった。
そんなものじゃなくて、そんなものじゃないところで、私は私である価値が欲しかった。
でも、「皮」の下にあると信じてた本質って、一体なんだったんだろうね。
そんなもの本当にあったのかどうか。
私が守りたかったものは、一体なんだったのか。

飲み会の後酔っぱらって帰ってきて、着替えることもシャワーに入る余力もなく床に寝転がってスマホをいじった。
インターネットの海をさまよっていたら、とある曲に突き当たった。

ずっとずっと君が好き誰かの彼女になりくさっても

こんなど真ん中ストレートな歌詞、普段だったら「いい曲だね」で終わりだよ。
何かを胸を掻き立てられることなんてないのにな。
アルコールに浮かされてるせいだ。
若い女の子で集まって、みんなの恋だのなんだのの話を聞いてたせいだ。
ずっと考えもしなかった人のことを思い出してしまった。

今どうしてんのかな。
幸せであってくれ。
不幸であってくれ。
絶対知りたくないな。
いまだに気持ちの置きどころがわからない。

君の未来に僕はいない僕の未来に君はいない

ピアノサウンドに合わせて繰り返しその歌は歌う。

ずっとずっと君が好き

簡単に歌ってくれるぜ。

私の暮らす部屋の、笑っちゃうくらい狭い浴室でシャワーのお湯に打たれていたら、悲しいのか悔しいの寂しいのか、原因不明の嗚咽が漏れた。
流すべき時に流せなかった、期限切れの行き場を失った涙だ。
お湯と、髪の毛と一緒に排水溝に吸い込まれてゆく。

女だとか、賢いだとか、それどころか私が私であることだとか、そんなこと考えなくていい日々があった。
今は遠く思いを馳せることしかできない。遠く闇夜に光る星を見上げるように。
瞳に映るのは、何光年遠い、死んだ光だ。

今どうしてんのかな。
初めて会った日のまま、そのまま氷漬けにされて、そのまま止まっていたらいいのにな。

人生最後の恋はもう終わっちゃったのかもしれない。
そうだったら困るし、そうであってほしいと思う。

ずっとずっと。

この先は歌わない。
この光を持つ星は、もう死んでいる。
死んでいてくれなければ困る。


BGM:天才バンド/君が誰かの彼女になりくさっても

Special Thanks:サカエ コウ。/誰かの彼女になりくさりたい。

#エッセイ #日記 #恋愛 #音楽 #天才バンド #小説

ハッピーになります。