グツグツグラタンを見ながら考える落ちた視力や世界のはなし
今年に入ったあたりから、急激に目が悪くなった気がしています。
以前はキッチンの方にダイニングのテレビをぐいっと向けて、ちらちら見ながら夕飯を作っていたのですが、最近じゃあすっかりボヤボヤで、テレビを見たい時にはメガネをかけなければいけなくなりました。
かといって、そこまでして見たいテレビもあまり無いので、テレビをぐいっとこちらに向けることもほぼ無くなり、ほとんど毎日ラジオを聴きながら夕食を作っています。
先日スーパーに買い物に行った際、メガネをかけ忘れて行ってしまいました。
初めは「不便だなあ」と思っていたのですが、少しするといつもよりまったりと買い物ができている事に気がつきました。
これはあくまで私の場合ですが、スーパーのような物がたくさんあふれる場所へ行くと、あれやこれやと視界に入ったものが気になり、何かを選びながらも違う場所に注意が向き疲れきってしまうのが常でした。
その点、メガネを忘れたその日は良くも悪くも近くのものしか見えないので、いま選んでいるもののみに集中できて頭がオーバーヒートしなかったのかもしれません。
なんとも不恰好ですが、25年以上生きてきて初めて気がついたライフハックでした。
まだまだ生活は分からないことだらけです。
もう大人になったのに、アイスを食べ過ぎてお腹を冷やすし、ゲームの止めどきはいつも分からないし、眠り方もしょっちゅう忘れてしまいます。
分かることと言えば、グラタンの作り方とか、冷凍庫のキャパシティは思ったより狭いこととか、洗濯物はすぐ溜まるとか、そんなくらい。
2022年の5月時点では、この星に生きる大人はみんな(もちろん私を含めて)戦争の始め方は分かるのに終わらせ方は分からないでいます。
せめてこのグラタンくらいは、優しいグラタンにしよう。
グツグツ焼けるチーズを見ながら、「だってあなたが食べるものだから、優しいものがいい」と思います。
わたしの涙や祈りにはなんの意味もないけれど、この優しいグラタンで、この世界に生きるあなたやわたしが少しだけ優しくなれば、きっと明日は。
そう、きっと明日は。