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指先に色を塗る

これだけの長い時間、毎日スマホを触る私たち。
1日で最も多く目にする体の部位は、指なのではないかとさえ思います。

幼い頃、母がするネイルを見るのがとても好きでした。
見ているうちに羨ましくなり、母に頼んで子ども用のネイルを小さな小さな爪に塗ってもらった覚えもあります。


母の施すネイルの中でも、ラメ入りピンクのグラデーションネイルをしている時が特に好きで、三段階に分けて丁寧に色を重ねていく様子をじっと見つめました。

指先を内側に折り、彩られた爪をふーふーと乾かしたのち、「よしっできた〜」という頃。
節がしっかりとあり、温かさと柔らかさを持つ母の指はドレスを纏ったように変身。
それを見た私は何度でも「キラキラでかわいい!」「綺麗な指!」とテンション爆上がりキッズになるのです。


大人になり、私にとってネイルの持つ意味は「単純な憧れ」から少し変化しました。

私が自分の爪に施すのは、もっぱらジェルのセルフネイルで、(正確には台湾のネイルサロンで一度だけフットネイルをお願いしたことがあるもののそれっきり)色やモチーフを工夫して、その時の自分が少しだけ元気になるよう考えます。

久しぶりのデートの前にとびきりかわいいネイルにする時もあれば、ひとり鑑賞予定の魔女見習いの映画に合わせカラフルにしたり、「自由に創作しようよ」と自分への応援を込めて派手めにしてみたり、様々。

視界に推せる自分の小さな創作物が入ることで、ちょっとオシャレをする勇気が出たりするから不思議です。


先日、わたしの秋色のネイルを見た母が「綺麗な色だね、ネイルしてると少し元気が出るよね」と言ってくれました。
あの時の母もあの美しいネイルに、何か心を乗せていたのだろうか。

少しのおまじないを指に乗せ、今日もゆく。

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