見出し画像

結婚式のこれから

コロナの影響で結婚式をキャンセル、または日延べ(業界用語 : 延期)をした方も多いことと思います。今回は、結婚式の企画に携わっていることもあり、結婚式のこれからについて考えたいと思っています。

私は、ブライダル関係の映像制作もしている動画制作会社のディレクターとして働いています。ブライダル専任スタッフではなく、企業様向けのプロモーションやマニュアル、インタビュー動画制作がメインで、企画書や絵コンテ・台本作成と編集が主な仕事です。ブライダル関連のお仕事は、結婚式の多い日にエンドロールの編集を担当、オフィスでの仕事の合間に時々婚礼映像商品(プロフィールムービーや記録ビデオ等)の納品前チェックや事務処理を行う程度でした。

突如コロナに襲われたブライダル業界

今年2020年の2月半ば、まだコロナ感染者は少なく、何となく嫌な雰囲気はあるもの通常通りの日常を送っていました。最初に延期の連絡が入ったのは、確か2月の終わり頃。「いつからキャンセル料が発生しますか?」という会場からの問合せ。そこから、延期の連絡が瞬く間に増え、3月下旬からはほぼ延期、4月からは0件という衝撃の結果に。

同業者もブライダル専門のところはかなり厳しい状況の様。私がお世話になっている会社は、幸いにも他の映像制作をしていたため、変わらず仕事を継続。

7月現在、今月は小規模結婚式の開催があり、この先も春に延期をしたお客様の挙式予定が続々と入っており、打ち合わせなどが再び増えてきたという状況。

新しい生活様式に合わせたブライダルを考える

これから、コロナがおさまったとしても、これまで通りの結婚式は行えない、というのが現実。これからは、新しい生活様式に合わせた形での結婚式になる。

具体的には、密を避けるために
・1つのテーブルのゲストは、これまでの半分もしくは1/3
・定番の演出「キャンドルサービス」は難しい
・余興も密を避け、大声を出さない様なもの
・披露宴最後の新郎新婦によるお見送りも難しい
などという状況…

そんな中、密を避ける、遠方からの移動を避けるなどの対策として出てきた「オンライン結婚式」。今、少しずつ一般的なものになろうとしている。
この企画を考えるのが今回のお仕事。

結婚式の目的や意義

まず確認しなくてはいけないのが、そもそもの結婚式の目的や意義
個人によって違ってくる部分ではあるけれども、これまでの結婚式をとり行えなくなくなり、形が変わってもここだけは外せないというポイントになる。

実際に結婚式をした、もしくは予定している友達へヒアリング結果↓
(ネット上には意外にもあまり数値的な情報がなかったため)
①お世話になった家族や友達に感謝を伝えるため、おもてなし
①友達や家族に祝ってもらい、一緒に写真を撮る。→節目を記念に残す
②親族同士の顔合わせ

ざっとこんな感じだった。

なるほど!ということは、結婚式の形が変わったとしても、これらのことを満たしている結婚式であることが望ましい。

この結果については、動画制作会社の社長とも共有をして、再認識した。

結婚式の価値とは?なぜ高いの?

コロナ渦でも、そうでなくても結婚式というのは高いお買い物。
なぜ、それだけお金がかかるのか?どこにそれだけの価値はあるのか?
この疑問を持つ新郎新婦は多く、結婚式を既に終えている夫婦も明確に答えられる人は少ない。

お買い物をする際に消費者が、「この商品には、この値段に見合う、この様な価値がある」と頭で理解できる動機付けがあると買い物はし易くなる。

例えば、少しお高めのエコバッグ。
値段は少し高めだが、一瞬にして畳めるという機能がある。
毎回の畳むという作業の時間が省ける→それには値段が高い分の価値がある
この価値をわかり易く提示してあげると、消費者が購入を検討する際の手助けとなる。これが動機付け。


値段が高いと高いほど人は躊躇してしまうので、明確な動機付けが効果を発揮するが、結婚式はこの部分が何となくの雰囲気になってしまっている。

例えば(内容はこうだったらいいなという妄想)、
・結婚式をしたカップルの方が離婚率が低い。そのヒントも結婚式準備に隠されている。
・結婚式をした新郎新婦の両親は幸福度が高まり心身共に健康に過ごし、寿命が少し伸びる傾向がある
上にあげた例は、お金には変えられない価値だけれども、この様な判断の材料となる何かしらがあれば新郎新婦も結婚式の決断がしやすくなる

この辺りが、しっくりくる説明がなされているものがない。

ここがブライダル業界のとても大きな問題の1つ。

幸福学からみる結婚、そして結婚式ってどうなの?

結婚式で新郎新婦の幸福度が上がれば、それも1つの価値となる!
そもそも人は結婚式で幸福になるのか?結婚式は幸せを作るのか?という疑問を持った時に出会ったのがこちらのイベントの動画。

幸福学の第一人者である前野教授夫妻を招いて行われており、とても興味深い内容だったので、幸福学に関するところをピックアップしてまとめてみた。
※幸福学は哲学でなく心理学がベース。統計データがベースになっている。


◯結婚している人の幸福度は、結婚していない人に比べると明らかに高い

◯体験は購買よりも幸福度を高める
節目の時に自分にとっての良い体験をすることが後々良い思い出となり、幸福度を高める。
→節目の時に旅行なり、写真撮影なり、印象的なイベントをすることは大事

◯淡々としている人より熱中している人の方が幸せ
同じ仕事をしている人でも静かに淡々と仕事をしている人より、情熱的に熱中して仕事をしている人の方が幸福度が高い
幸福の4つの因子
①やってみよう(夢や目標、強みを持って頑張っている人は幸せ)
②ありがとう(人々に感謝していたり、利他的に親切にしている、繋がりが豊で多様である人は幸せ)
③なんとかなる(前向きで、楽観的な人は幸せ)
④ありのままに(人の目を気にしすぎずに、あなたらしく生きられる人は幸せ)
  ↓
結婚式の大事なポイントは、
・結婚式のやる、やらない、を自分で決める
・感謝を伝え、繋がりを感じられる
・みんながいれば、この先もどうにかなると感じられる
・型にはまらず自分たちらしい


→ただ、これらを感じられる瞬間というのは個人個人で違う。
結婚式作り手の役割は、
新郎新婦が幸せを感じられる瞬間を結婚式に落とし込む。
どんな結婚式を選んでも、一定数の感動が約束されている様にすることがこれからの仕事。

個人的には、新郎新婦本人も自分たちにとって結婚式の目的や自分たちにとっての幸せを見つめ、どういう結婚式であればそれが達成されるのか、考えることが結婚式の成功やその後の夫婦円満に繋がるのではないかと感じた。

幸福学について興味があったので、色々見てみた。参考までに。
前野夫婦の幸福学についてのYoutubeチャンネル↓

そもそもの結婚式へのニーズ

そもそも結婚式をあげる人、あげない人がいる。結婚式というもの自体、現代の新郎新婦のニーズにあっているのだろうか?
結婚式をしない人は、結婚式に興味がないのか?という疑問からしたの記事に辿り着いた。

 『結婚が決まった夫婦のうち、 『挙式、 披露宴をともに実施』したと回答したのは53.9%となり、いまや2人に1人は結婚式、 披露宴ともに『ナシ婚』を選ぶという結果に。ナシ婚層が半数を占める中、全体の81.9%が "本当は結婚式を実施したい"と回答をしている。
回答者からは「ほんとはやりたいが、 派手にやりたくない。 」「どんな結婚式がしたいか分からない。 」「同じような結婚式は嫌だ」という声があがり、本当は結婚式をしたいが "やりたい結婚式" が見つからない新郎新婦が多く、結果、結婚式を諦めることになるという回答が多く見られた。』

私が驚いたのは、結婚式をしなかった人の81.9%が、本当は結婚式をしたいけどしなかった、ということ。
結婚式をしない人は結婚式に興味がないわけではない。多くの人はしたいと思っている。
しかし、「やりたい式」が見つからない。

近年、結婚式が多様化し、選択肢の幅は広がっている。しかし、その一方で新郎新婦は置いてきぼりになっている。どの様な種類があって、どの様に選べばいいのか、誰も教えてくれない。

ということは、これからのプランナーの仕事は、当日の式のスケジュールやプランでなく、新郎新婦に寄り添い、二人にとっての幸せとは何か、最適な式とはどんな式なのかを一緒に探すのが主な仕事になりそうだな…と感じた。
ここをいち早くしっかりと取り組めたところが業界の中でも抜きん出た存在になれるのではと思った。

結婚式のこれから

ここまで結婚式について考えたことをまとめてみた。
既にオンライン結婚式の企画書は提出し、その企画は採用されることになった。加えて、オンライン参加者には、家でも結婚式の雰囲気を味わえる食事を届けたいという提案も通っていた。全く同じは難しくても、同じご飯を同じ時に味わうことには大きな意味があるとコロナを通してしみじみ感じたから。
色々と検討した結果、オンラインに形を変えても大事な部分、感謝を伝えたり、おもてなしをすること、繋がりを感じ、友達や親戚に祝ってもらうことなどがあれば結婚式であり、低予算でオンラインだからこそ出来る新たな可能性も見えてくるのではないか、という結論に至った。

これからの結婚式は、新郎新婦にとっての価値や幸せ、感動を感じるポイント、思考などをしっかりと掘り下げる作業がメインになってくる。
それは、新郎新婦自身ももちろん。もう他人に任せっきりの時代は終わっている。

こんなことを考えていたら、本日、内容がバッチリあっている動画を見つけたので貼っておく。プランナーだけでなく、新郎新婦にも役立つ内容。

最後に、正直、こんな記事を書いている自分に驚いている。
私は結婚式が嫌い。
正確にいうと結婚式の映像の仕事は好きだが、自分がゲストとして結婚式に行くのは嫌い。
日頃着慣れないドレスに身を包み、ヘアセットとメイクの崩れがないか心配し、なぜその金額なのかもわからないご祝儀を払う。新郎新婦と話せる時間はとても短く、次々と運ばれてくる食事とイベントに追われ、トイレに自由に行くことも許されず、バタバタと1日が終わる。これだけ聞くと何かの罰ゲームなのかと思うけれども、もちろん好きな友達の節目をお祝いしたいという気持ちは強い。しかし、ドレスや小物の準備、ヘアセットの予約、ネイルどうしようなど、ゲストでも行く前の準備段階でやることが多すぎる。
豪華さを前面に押出し、かしこまりすぎた会場。堅苦しいお決まりのプログラムに疲れる。

これまでの業界の当たり前や訳のわからない決まりはなくし、
もっと気軽に、リラックスして新郎新婦の門出を祝える、2人らしい結婚式ならいいのに…といつも思っている。そんな願いを込めて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?