大人の知恵熱。【ユーモアエッセイ📖ショート】
知恵熱というのは、産まれて間もない乳児だけに現れるものだと思っていた。
私は大人になって知恵熱を出したことがある。それをストレス性高体温症というらしいが、確かにアレは脳と心臓が逆になるほどのストレスだった。
原因は高速道路。
高速道路の運転を苦手とする私。
しかし助手席は大歓迎。優雅に爽快な真っ直ぐの景色に、まるで満面の笑みを弾けだすCM女優になったような気分になる。
決して高速道路がイヤなのではなく、高速道路を運転するのがイヤなのだ。
特に合流する瞬間が、異国の迷路口かと思うほど緊張で汗がにじむ。
その日、運転できる物が私しかいなかった。
軽自動車で隣県の隣県に日帰りで遊びに行くことになり、案の定、迷宮の高速道路に乗る羽目となった。
愛車は華奢で、アクセルを深く踏まないと加速してくれないから、私は思い切り合流地点手前で、限界まで踏み込んだ。
ウィーーーーン!という拒絶反応とも似た唸り声を上げる華奢車。ついアクセルを緩めそうになるのを奮い立たせた。
走行中は常に緊張が走り、ハンドルを握る姿は初心者。直立不動、飲み物を飲む余裕などない。バックミラーがバカみたいに気になる。
アクセル全開で、足裏に響く振動と騒音が余計に不安を襲ってくる。
強風が横切るとハンドルは取られ、酔っ払い運転のようにフラリフラリ。
こんなに車を追い込んだら、とうとうタイヤが取れ、屋根が吹っ飛び、ドアが取れそうだと本気で思った。
そんなこと絶対的にありえないのに、何があるか分からないのが人生。
コントのように車がハンドルと座席だけになってしまったら、私はどうすれば良いのか本気で考えていたりした。
私はいつも左車線を走る。
追い越し車線は時々使うが、基準は左。ペースは保つようにしている。そうでもしないと心臓が分裂しそうである。
交感神経が活発になっているから、私よりも小型で古い軽自動車が追い越し車線を走行して抜かれると、あの車は虐待されていると悪態までついていた。
軽自動車は人間で言う子供なのだから、と、己のへっぽこ振りをなぎ払ってなんとか都合よく落ち着かせていた。
長距離の高速道路の運転が相当なるストレスだったのだろう。
(長距離といっても、隣県の隣県までなのだが)
無事に往復して帰宅した後、高熱が出た。
38度を超えていた。
寝たら平熱に戻っていた。
あの熱は絶対にストレス性高体温症の、知恵熱であったのだと今でも確信している。
最後まで読んでいただきありがとうございました💖またきてね💖
大人になって知恵熱出たことある?
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