六月好風~DeanFujiokaさん サイン会@台北
プロローグ
2024年6月13日㈭、私は2019年4月のDean Fujiokaさんのアジアツアー台北公演以来5年ぶりに台湾の地を踏んだ。
それはDeanさんのサイン会があると知った翌日の正午過ぎだった。
前日、会社から帰宅途中の電車に揺られながら、Xのタイムラインを何気なくスクロールしていた指が止まった。
昨年発売された Dean Fujiokaさんのベストアルバム『Stars of the Lid』の台湾版が、相信音楽(B'in Music)というレーベルから発売されるという、ファンにとっては大きなニュース。
そして来週の6月19日㈬に、予約購入した人を対象に「サイン会」が台北で開催される…!!!?
私は何度も何度も「サイン会」という文字を目で追った。
信じられなかった。
Deanさんは日本でブレイクしたと言われて8年経つが、今までサイン会をしたことは日本でも一度もない。
台北なら、サイン会をするのか…。
寂しいような、取り残されたような、正直複雑な気持ちが沸き上がった。
ダメだ!ネガティブな絶望に支配されてはいけない…(笑)。
分析タイム。
どのくらい人が集まるのだろう…。
5年前のDeanさんの台北公演を思い起こす。
あの時、オールスタンディングのClapper Studioを埋めた観客はざっと300~400人くらい。
GW期間だったので、日本から来た人も100人位いたかと思う。
さて、平日の夜に、Deanさんのサイン会に来られる人の人数は…?
考えた。
一応日本人にカテゴライズされる自分が、台湾のファンの皆さんのチャンスを奪うことなく、「おじゃましま~す」的に、サイン会に参加することで、台湾のファンにご迷惑をかけないだろうか…?
もちろんコロナ禍や日本での活躍を経て、Deanさんをずっと待っていてくれた台湾のファンの皆さんのチャンスは奪いたくない。
でも、もし、もしもよ?日本人の私が入れる余地があるとしたら…?
考えた。
考えがぐるぐる堂々巡りしている間に家族の夕食を作って食卓を囲む。
考えながら子供の学校の話を聞いたり宿題の確認をしたり、後片付けを終えて、家族が寝静まる普段通りの深夜になった。
お世話になっているFam友さんが既に現地とコンタクトを取り、サイン会の当日に現地に行けば、サイン会に参加できそうな事を聞いた。
んー….。仕事を休んで行くのなら、もっと確実な情報が欲しい。
行ってもらえなかったら悲しいし…。
考えたけれど答えは出ないし、現地はきっと問い合わせメールが殺到しているだろう。
その間に整理券がなくなってしまうかもという一抹の不安。
とりあえず現地で詳細を聞いて、整理券はゲットしてこようと思った。
翌日もサイン会当日も、仕事の調整がつく日だったのも幸運だった。
どちらも前後1日違ったらアウトだった。
日付が変わる直前に、翌日の飛行機の往復チケットを予約して、チケットをスマホに保存した。
時間的に日帰りが可能だったフライトは、行きはジェットスター、帰りはチャイナエアラインの組み合わせ。
どちらも初めて乗る航空会社だけれど、これが精いっぱいの選択肢だった。
飛行時間は3時間ちょっとだからビジネスじゃなくてエコノミー。
さらにオンラインで海外旅行保険に入り、空港で受け取る貸し出しWiFiと、万が一英語が通じない時のお守りに、ポケトーク(音声同時翻訳機。結局英語で充分事足りたので、使わなかったけれども)を予約した。
就寝直前の夫に事情を話して承諾をもらい、明日の娘のフォローを頼んだ。
夫もマニアックな歴史遺産一人旅の交換条件を出してきたが即OKし、交渉成立!
数時間の仮眠のあと、夜明け直後の成田エクスプレスに乗り、パスポートと最小限の手荷物で成田から台北へ飛び立った。
すべてが寝ている間に進行していた娘からはLINEでこっぴどく怒られたけれども…。
Deanさんのサインを目の前で書いてもらうのを、いつか夢で見たことがあった。
それは文字通りずっと夢で、最終目標みたいなものだった。
Deanさんのファンになって8年目だか、私にとってDeanさんというのは、ずっと恩師とかメンターのような存在で、不思議と変わらない。
信者と言われても否定はできない。
入院中のベッドの上で、特に見るとはなしにつけっぱなしだったTVで、英語を喋っている声が耳に飛び込んできたのが、朝ドラで五代さん役を演じているDeanさんだった。これが最初の記憶。
男性と対等(?)に戦って、体を壊す寸前まで働いてきたけれど、五代さんみたいな先輩がいたら、どんなに良かっただろうと不思議と元気が出たのだ。
たった1週間の入院生活で五代さんを発見したことが私の人生を変えた。
それ以来、Deanさんという羅針盤を得た私は、より困難な道へと目標を定め、それまで後悔ばかりだった人生を自分の力で反転させてきた。
Deanさんは暗闇で迷子だった時に道を照らし、進むべき方向を示してくれた恩人だ。
Deanさんの生き方が、背中が、常に今自分が何をすべきかを問うてくれる、道を照らしてくれるのだ。
こんなに心強いことはない。
Deanさんには直接お礼を言いたいと、ずっと思っていた。
以前TV番組で少し共演した時がチャンスだったかもしれないが、人生でおそらく最初で最後だった機会を活かすことができず、それ以来、輪郭のぼやけた「後悔」が、ずっと心のどこかに残っていた。
…だから行かない選択肢はなかった。
你好(ニーハオ)!5年ぶりの台北
ほんとうに、たった2つの中文記事を頼りに台湾に到着してしまった。
記事を読んで18時間後には、もう台湾に降り立っていたことになる。
台北桃園国際空港。
東京とは明らかに違う、むせるような湿気が身体にまとわりつく。
南国らしいヤシの木の並木道と、台北らしい曇り空。
わぁ、懐かしい!このジメっとした身体で感じる台北!
嬉しさに心が弾む。
Deanさんの台北でのライブ以来、5年ぶりの台北!
1時間の時差があり、時計の針を1時間戻すのは時間を得した気分になる。まだお昼の12時過ぎだ。
日帰りとはいえ時間はたっぷりある。
どうぞミッションが果たせますように!
桃園国際空港からMRT(特急列車)で台北駅に来るのに、Deanさんのアジアツアーで余っていた台湾ドルを使った。
5年前に入れたままの封筒から取り出した紙幣が、5年前と変わらずに機械に吸い込まれていく。
220台湾ドル。
MRTの紫色の丸いトークンを買った。
コイン型のトークンだと、つい改札で挿入する入口を探してしまうが、このトークンは入場機械にタッチして入るので少し戸惑う。
トークンで簡単に入場し、コンコースを抜けプラットホームに降り、エクスプレスに乗って台北中心部の台北駅へ向かった。
窓の外は、起伏ある稜線を描く緑に包まれた郊外の景色から、次第に都心の景色になった。
橋のある川を渡れば間もなく台北駅だ。
屋外は台北らしい曇り空だったが、思った以上に気温が高く31℃。
湿度が高いため体感温度はもっと高く感じた。
外気に触れると汗が自然と滲み出し、6月の日本から来たばかりの私の体は暑さによる疲労が懸念された。
日帰りとはいえ明日は朝から出勤だし、余計な時間や体力を使いたくなかった。
台北駅からサイン会場の、誠品生活松菸店へは地下鉄ではなく、迷わずタクシーを利用した。
自分のサステナビリティも大事だもんね!
タクシーに乗り込むと、ドライバーの男性は、差し出した中文記事に書かれた場所をすぐ理解し、カーナビも設定せずに出発してくれた。
走り出すとほどなく、大きな看板のあるビルや、台北101や、寺院、素朴な商店など、懐かしい台北の街並みが目の前に広がった。
旅行やDeanさんの台湾Liveで数回来ただけの私でさえ懐かしさを感じるのだから、長く住んでいて沢山の思い出があり、多くの友人がいるDeanさんは、ここ台北に来てもっとホッとするんだろうなぁと想像した。
整理券番号は14番!
初めて訪れた誠品生活松菸店(チャンピンシエンフォー ソンイェンディエン…発音も一応覚えられた…かな?)は、巨大な臺北文創(New Horizon)の建物の中に組み込まれた、3F建てのカルチャー専門の百貨店、さながら洗練されたLOFTみたいな雰囲気だった。
周辺は公園や学校があり、炎天下を若者が行き来していて、東京でいうと御茶ノ水のような、知的好奇心を掻き立てられる雰囲気の街だなと思った。
ドキドキしながらエスカレーターを上がり、いよいよ今日の目的地、3Fの音楽と映像メディアの売り場、誠品音樂へ。
洗練されてお洒落でモダンな店内は、日本のHMVやタワレコなどメジャーな店舗とも違ってシックな装いで、それぞれのジャンルに分かれて特徴のある空間を演出しており、売り場の陳列にしても聴こえてくる音質の良さにしても、普通のレコ屋とは明らかに一線を画している。
さっき通った2Fの書店では、中国語のほかに英語の本も数多く並んでいた。さすが、中国語と同じように英語が通じる国だけある。
日本もこれくらい英語の本を気軽に手に取ることができたらいいのに…。
こんな素敵なお店なら、1日中でも居られる!
Deanさんがお店に来たら、きっと気に入るだろうなぁ…。
平日の昼下がりの店内は、数人の客がいる程度でとても空いていた。
あ、教授…!?
大きなパネルを用いて広いスペースを使った坂本龍一さんのコーナーが、視聴スペースも含めて充実しているのを目にすると嬉しくなった。
日本人のアーティストなのに台湾でこんなに大きく取り上げられている。
Deanさんのアルバムもこんなふうに大きなスペースで並べて展示されたら嬉しいなぁ…。
中央のレジカウンターへ足を運ぶと、メディア記事で見たDeanさんの青灰色のB5サイズのちらしがクリアスタンドに入って、レジ横の台の上にさりげなく展示してあるのを発見!
サイン会の告知もあまり目立たないが確かに書いてあった。
心拍数が急激に上がるのを感じながら、深呼吸をして息を整えてから店頭の女性店員に英語で話しかけてみた。
「すみません、Deanさんのこのニューアルバム、『Stars of the Lid』を予約購入して、来週のサイン会に参加したいのですが」と切り出すと、女性の店員さんは、感じの良い笑顔と英語で応えてくれた。
隣に立っていたロン毛で髭の男性店員も、好意的に反応してくれた。
だいぶ安心した。
「まだありますか?」あると分かっていても一応聞いてみると
「もちろん大丈夫です!」と女性がまたもや感じの良い笑顔で答えてくれた。
「何枚要りますか?」と聞かれて、Famの先輩方のぶんも含めて「えっと…もしできたら10枚買えますか?」と遠慮がちに尋ねると、女性の隣で聞いていたロン毛で髭の男性はハッとしたように「あ、だったら、ちょっと確認しますね」と、その場で主催者へ電話してOKをもらってくれた。
このロン毛で髭の男性は、この音楽売場の店長さんだという。
(本当はマネージャーと言っていたが、Deanさんのマネージャーさんと後で混同してしまうので、ここでは店長さんと言いますね)
「昨日の夜に記事で知って、今日、日本から来ました」と言ったら、「え~!すごい!」と笑顔で返答されたが、とても好意的な反応で、この店長さんが必要な事をすべて教えてくれた。
そのうえで「日本から問い合わせが沢山来ているんですよね」と言って、レジ横にあるパソコンの、おびただしいメールの返信画面を差し支えない程度に見せてくれた。
今のところサイン会は、6/19㈬の19時~20時。
19:30までにアルバムを買った人が対象で、人数によっては枚数制限を設けるかもとのことだった。
当日は19:30までにポスターをカウンターへ受け取りに行き、サインはポスターにのみ可能とのことだった。
値段は1枚598台湾ドル。日本円に換算すると1枚約3000円(2024年6月現在)。
そしてお金を払う時に「免税の手続きが2階でできます」と言われた。
DeanさんのCDを免税で買うって、何だかとても新鮮!
手際よく整理券を渡され、自分の名前と連絡先を書いた。
整理券はB5の白い紙で、上と下を切り離し、引換券になる構造だ。
整理券が何枚あるのかを聞いたら「何枚でも!コピー取れるからね!」とB5の白い紙の整理券をパラパラ漫画のようにめくって見せて、全く心配のない笑顔の店長さん。
Famの先輩の問合せに「とりあえず当日に来たらサイン会に参加できる」というメール返信の真意もこの笑顔で読み取れた。
でも一応上限が知りたいので、用意しているポスターの数を尋ねたら、なんとその数500枚!
「日本からファンの人が来てくれて、とても嬉しいです!」との力強い言葉を頂いて、二重に安堵した。
単純だけど台湾がさらに好きになった。
こんなふうに、幸運なことに、すべてがトントン拍子で、私は当日にここで会うFam先輩のぶんも含めて10枚の整理券を入手することができた。
今日が情報解禁2日目だったのだが、私の整理券番号は驚くべきことに、14番から23番の10枚だった。
え?まだそんなもん?台湾での人気のバロメーター。
少し安心したけれども、少し寂しい。
やはり2019年と今とでは、ファンの数はそんなに増えておらず、事情はそんなには変わっていないらしい…。
でも今後は分からない。
6月21日から世界配信されるNetflixドラマ『誰是被害者2』でもっと知られるようになり、ベストアルバム『Stars of the Lid』の台湾版が出たら、台湾でももっともっと人気が出て、このサイン会を「ブレイク前夜」と思い出すのかもしれない。
可能性が無限大のDeanさん!
DeanさんのファンクラブのFamBamは7月で区切りを迎えるが、8月から計画している「シンFamBam」では、世界各国のファンのみんなと交流できたら楽しいだろうなぁと思った。
さっき書いたように、サイン会に際して用意したポスターは500枚と聞いたけれど、1週間後サイン会当日の予想は、集まった皆さんが何枚のCDを購入するかわからないけど、実際にサインをしてもらう人は、たぶん来ても100人くらいかな…。
もっと日本からも来れる感じかな…。
そんな雰囲気だった。
さらに『Stars of the Lid』台湾版は、9月に発売(発売日はこの時点では未定)になるので、サイン会に参加する人は、CDを受け取りに9月以降にまたこの店に来なくてはならない。
余ったポスターの数を考えると、もしかしたらDeanさんのスケジュールさえ大丈夫なようなら、9月にも何かイベントがあるかもしれない…と予感した。
Deanさんがサイン会をする店内の”Forum”という部屋は、本を美しくライトアップした書棚が半円形にレイアウトされた一画で、ここにDeanさんが立ったら素敵だろうなぁと当日の想像が膨らんだ。
店長さんと、台湾で流行っている音楽の事とか、このお店の事など、笑顔で会話を交わし「また来週お会いしましょう、ありがとうございます!」と最後に挨拶をして、その場を後にした。
空港へ行くタクシーを呼ぶアプリが中国語の表記だけなのに苦労して、2Fの免税コーナーでさきほど対応してもらった親切な若い女性店員さんに、アプリでタクシーを呼ぶのを助けてもらった。
勤務を抜けて地下のタクシーの待ち合わせ場所までわざわざ私と一緒に来てくれた彼女と、免税コーナーに残してきた彼女の同僚に、冷たいお茶を2本自販機で買ってお礼にした。
女性店員さんはとても恐縮していたけれど受け取ってくれて「来週、また会えるといいですね!サイン会を楽しんでくださいね!」と、私が乗り込んだタクシーが見えなくなるまで手を振ってくれた。
私も手を振り返した。
ようやく乗れた空港へ向かうタクシーの中で、今日台北で出会ったたくさんの人からの親切な助けを思い出しながら、私は深い安堵に包まれた。
台湾の人、台湾の若い人たち、なんて親切なんだろう!とても心に残った。
そして、よほど仕事で何か事件がない限り、私も家族も健康でいる限り、来週Deanさんに会える!会える!会える!そしてサインがもらえそう!
(ジタバタ!)
行きの空港とは違うもう一つの空港、市街地に近い台北松山空港に着いて、ようやく台北へ来て初めての食事、カリフォルニア スタイルのビーフフォーを食した。台北の湿度と暑さ、そして室内の効きすぎた冷房で疲労がたまっていたので、新鮮なパクチーの香りのする温かいビーフフォーで癒された。
時間があったのでオンラインで適当に予約したチャイナエアラインの座席を窓際の座席に変更し、帰路の飛行機は、美しい夕焼けのマジックアワーの中を飛び立ち羽田へ向かった。
夕焼けに霞んでいく台北101が美しかった。
終電には間に合って帰宅すると娘はすでに寝ていたが、翌朝になると1日ぶりの再会を喜び合った。
私は早朝作ったお弁当を持たせて、いつも通り娘を学校へ送り出した。
空港で最後に買った、台北101のデザインされた靴下のお土産も「101(イーリンイー)だ!可愛い!」と喜んでくれた。
台北日帰り、ミッション完了!
「会いたい気持ちが強ければ必ず会える」とは言うけれど…
Deanさんの初プロデュースの映画「Pure Japanese」では「会いたい気持ちが強ければ、必ず会える」と携帯電話を持たない立石に連絡を取りたい時はどうすれば良いか尋ねたアユミに、立石はこう言った。
とは言え、Deanさんに同じ事を願ったって、なかなか実現するわけではない。
サイン会当日の、台北に1泊する往復の空の便の選択は、1週間前よりもずっと慎重だった。
何故なら、現地で会うFam友さんの整理券を持っていて責任重大だったというのもあるけれど「絶対にDeanさんに会いたいから」。
地元台湾最大手の航空会社チャイナエアを選択した。
日本への本数が多いので、何かトラブルがあって飛ばなくなった時も振替が比較的容易で、なるべく確実に当日サイン会に間に合うように到着し、かつ翌日予定通りに帰国し、翌々日には出社できるようにとの理由だった。
朝自宅を出発する想定で無理ない出発時間を選び、先週台湾へ行った時の手順でオンライン予約や各種手続きを行った。
時間を優先すると、今回は、行きは松山空港到着で帰りが桃園空港出発という、1週間前の行きの桃園到着、帰りの松山出発とは全く逆のパターンでの検索結果が出た。
空港を間違えると一大事なので最後まで気が抜けない。
(それでも最終日、つい松山空港へ行く時間計算をしてしまい、後で気が付いて焦ってホテルを出たっけ(;^_^A))
台北の2つの国際空港、松山(ソンシャン)と桃園(タオユェン)は少なくとも発音できるようになり、いつも英語で会話するタクシーの運転手さんにも、この中国語は通じるようになった!
中国語も頑張りたい!というモチベーションは、コミュケーションが成功した時にグッとあがる。
とにかく今回の往路は、前回よりも会場に近い松山国際空港に着陸できたのは幸運だった。
出発の前日は、以前Deanさんがインスタライブをしてくれて興味を持った、渋谷慶一郎さんのアンドロイドを駆使したオペラ公演があり帰宅が遅く、先週以上に寝不足のまま台北に来ざるを得なかった。
それでもこの斬新な公演は胸に刺さり、心から観て良かったと思えるものだった。
ちなみにこの公演では、Deanさんのスタイリストのイソンさんや、デザイナーの芦田多恵さんや、ミュージシャンの小室哲哉さんをお見掛けすることができた!
この1週間、Deanさんと対面できる、サインを頂くであろう3~5秒くらいの間に、Deanさんに感謝を伝えることができるのか、そもそも何語で話しかけるのか、何を言ったら良いか、どう振舞えばいいか、服装は、とは言えあまり目立ちたくないし…(笑)と、マックス5秒のチャンスに自分を最大限投影するために、考えることは無限にあって、はちきれそうだった。
ずっとサイン会の事が頭の片隅にあったけれど、仕事も家庭も忙しかったし、サイン会の2日後には実父がメインの演奏会も控えていたし、会社帰りに美容院と眉毛サロンに立ち寄るのがやっと、ネイルサロンやエステなどは諦めて根元の伸びたジェルネイルで行くほかなかったし、特別な準備はほとんどできずに、とにかく体だけで飛び出してきた感じだった。
今回、台湾最大手のチャイナエアラインを予約する際に、前回よりも少しは時間的に余裕があったので、往復ともに窓際席を選択した。
行きの機内では、だいぶ雪の少なくなった富士山の火口が良く見えた。
飛行機は日本列島をなぞるように飛び、やがて九州を抜けて真っ青な海の上を飛ぶ頃になっても、期待とプレッシャーでドキドキしている私は、寝不足や疲れが溜まっていても眠ることはできなかった。
食事の選択肢では、行きは通常食に替えてDeanさんにあやかってグルテンフリーの機内食、帰りも通常食に替えて、ミシュラン獲得の店とのコラボ機内食を予約してみたが、グルテンフリーの昼食は野菜とフルーツがたっぷりでなかなか良かったし、ミシュランコラボの昼食は、機内食としては信じられないくらい美味しかった!
続いては今回のホテル。
サイン会当日は、平日の19時から始まるサイン会の終了時間があらかじめわからず、Deanさんのスケジュールの都合で遅くなるかもしれないという可能性を鑑みてホテル1泊を予約した。
会場に隣接するホテル、5つ星の『誠品行旅(Eslite Hotel)』を予約したのは、前回のアジアツアーの台湾公演の帰りに、タクシーがつかまらず苦労した苦い経験があるからだ。
あの時は娘の手も引いていたから、夜間に自力でタクシーを捕まえるまで想定外の時間がかかってしまったのは恐怖でしかなかったし、ほとんどトラウマになっていた。
今回のホテルは会場と隣り合っているので歩いて帰れる。
開始ギリギリまでホテルで休んで旅の疲れを癒すことができるとの選択肢。
あとから、Deanさんがホテルからの景色をインスタグラムのスレッドにあげたのだが、私が前日にXにあげた写真と角度と標高がわずかに違うだけの、殆ど同じ景色で、Deanさんも同じホテルを利用していたとわかって驚いた。
その写真は共に、中央やや左に台北101、右には台北ドームが見える。
宿泊ではなく取材や控室だったかもしれないけれど、Deanさんと同じホテルで過ごせたのは貴重な体験だった。
客室に備え付けられた、良い香りのするAVEDA社のRosemary Mintのアメニティを使ったかもしれないと想像するだけで、そのAVEDAは特別な香りとなり、帰国してシャンプーやコンディショナー、ボディソープのボトルを買い求めた。
さて、このホテルは松山文創園區の静かな公園に面した環境にあり、誠品グループのホテルらしく知的で上品でモダン。
ロビーラウンジでは中国語や英語の数千冊の本を手に取ることができ(部屋でも読める)、そのディスプレイの美しさにはため息が出るほど。
インスタ映えすること間違いなしだ。
Deanさんもきっとこの空間がお気に召したはず…。
ホテルのレストラン The Chapter は朝食で使ったが、オムレツや温かい麺などを選んで料理を注文し、サラダや点心やフルーツがビュッフェで頂けた。松山文創園區の緑と台北101を眺めながら、ゆったりしたくつろぎの時間が過ごせた。
ホテルの情報はこちら↓
1週間後の「ただいま台北」
というわけで、今回は昼の13時過ぎ頃に到着し、台北中心地に近い松山国際空港から直接ホテルへタクシーで向かった。
ベルスタッフに荷物を預けてから、今日の会場である、先週アルバムを予約した店、誠品音樂に徒歩で様子を見に行った。
その時点での整理券番号も80番代で、まだまだ余裕という感じだった。
今日の人出は、100人くらいかなという予想は変わらなかった。
日本ではバタバタだったけど台北に着いたらまだ時間の余裕がある。
とにかくチェックインしたら、大切な瞬間の為に少しでも休もうと思った。
サイン会は19時からなので、今、何か食べておこうと、遅めのランチをするために誠品音樂の階下にある2階のカフエ Eslite Cafe へ行った。
注文したのはビタミンと疲労回復を意識して、ブロッコリのスープとトマトソースのパスタ。そして心を落ち着かせるホットコーヒー。
ちょうどその頃に、Famの先輩の方々が次々にカフェに合流して、皆さんに整理券を渡す事ができた。
ここで台湾人のビクターさんという30代の男性と知り合った。
Fam友さんが行ったり来たりしている中で、彼は気づいたらそこにいた!という感じで何となく合流してきた。
ドリカムが好きで、日本と日本語に興味があり、サイン会にも参加するDeanさんのファンとのことで、日本語も英語も流暢で人懐っこいビクターさんとはすぐに打ち解けて、私が不足している中国語情報を色々と聞くことができた。
みんなで話しているうちに、まだまだ整理券にも余裕があり、人数もそんなには多数にならないだろうという結論に達し、みんな1枚づつアルバムを追加購入することにした。やっぱりサイン会に来る人数はトータル100人くらいかもね、みたいな話をしていた。
先に先輩たちが店に行き、私たちはカフェで待つことになった。
戻ってくると、今回サインをもらうポスターも引き取ってきたと言うので、初めてポスターを見ることができた。
「!!!」
あの、青灰色の背景の、Deanさんのサイン会を告知したポスターかと思いきや、初めて見る写真のポスターだった。
茶色い背景で、落ち着いた、少し憂いある表情のDeanさんがじっと見つめているポスターは初めて見る。
私は今回の情報源になった青灰色のDeanさんじゃなかった事に少し戸惑いを感じた。「この茶色い背景なら、サインは黒マジックじゃなくて、金か銀かもしれませんね」と私。先輩方が持ち帰ってきたポスターは1枚1枚丸めて筒形のビニールに入れられていた。「これ、サインをもらう前に袋から出して平らに延ばさなきゃいけないね!」「わーどうしよう!」カフェで口々に戸惑いの声が上がった。
交代で今度は私が店へ行くと、1週間振りに会う、先週お世話になった、ロン毛で髭の店長さんが対応してくれた。
「来てくれましたね!今日は楽しんでください!」
すっかり顔を覚えて頂けて、嬉しい言葉を頂いた。
1枚追加購入すると86番の整理券だった。
さきほどの筒形のビニールに入っていると、サインをもらう時に伸ばしたりして扱い辛いなぁと思ったので「フラットな状態で頂けますか?」とリクエストすると「OK」と快く応じてくれた。
お店にとっても、平らなまま渡せれば、ポスターを丸めて筒形ビニールに入れる手間が減る。
店長さんのご厚意でポスターが100枚づつパッケージされていたフラットな紙袋を頂くことができた。 そのパッケージの上には見本としてDeanさんのポスターがもう1枚貼り付けてあるのだ。
店長さんがポスターをおまけしてくれた感じだ。
事前購入した分と、今回の追加ぶんのポスターを、フラットな状態で丁寧にそのパッケージに入れてくれて、筒形のビニール袋も同数を一緒に付けてくれた。
サービス満点!ありがとうございます!
今日の集合時間が17:30だということも教えてくれた。
「谢谢你!See you later!(ありがとうございます、また後ほど!)」私は笑顔で売り場を後にした。
ちなみに私は中国語を習ったことはないので、台湾での中国語(北京語)は、Deanさんが中国語を話すインタビューや、2008年のドラマ「不良笑花」(「笑うハナに恋きたる」)のハナの言い回し(あのテンションも含めて)を、そのまま丸暗記して使っていることが多々ある。これが意外と使えたりする。
それからDeanさんの出してくれる動画のお陰で、挨拶と自己紹介、簡単なやり取りはできるようになった。ほんとに私の中国語はDeanさんのお陰です!
カフェに戻ると今日の集合時間が17:30であることをビクターさんも知っていた。
19時開始のサイン会に17:30から並び始めるそうだが、番号順ならば整理券番号が14番の私は遅くに着いてもそんなに心配することはない。
また、プレゼントは渡せないが、手紙は渡せるとのことだったので、お礼状のようなカードを書いてみることにした。
ちょうどチェックインの15時近くになったので、Famの先輩たちやビクターさんといったん別れて、ひとりホテルへ向かった。
ホテルへ行くついでに文具売り場でDeanさん宛てに書こうとカードを選んだ。さすが文化の専門百貨店で、様々な趣向のものがあったが、最終的には落ち着いて洗練された色合いのピカソの絵が描いてある、オリーブグリーンのカードを買った。
チェックインの15時よりも少し早くホテルに着いたが、もう部屋の準備ができているということなので、鍵を受け取り9階の部屋へ案内された。
さっき預けた荷物も、すぐに部屋に届けられた。
部屋は角部屋で、天井の高いツインベッドの室内は間取りが広く、お洒落で機能的な家具が据え付けられ、壁面の絵画やディスプレイされた雑誌も洗練されていて美しかった。
独立したバスルームはシャワーのある洗い場とバスタブに分かれていて充分に広く、バスタブに足を伸ばして体を沈めるとちょうどよい感じのスポンジ枕があり気持ちがよさそうだった。
ツインベッドもダブルのサイズで、パリッと糊のきいた白い寝具は申し分のない清潔感だ。
窓際には落ち着いた青灰色の二人掛けのソファーがあり、色違いの差し色クッションが2個並べられていた。
サイドテーブルにはウェルカムフルーツが盛られ、ここにも本が置かれていた。
壁際にはデスクと文房具セットがあった。
広いバルコニーに出ると、台北101や台北ドーム、中庭の見晴らしが素晴らしい部屋だった。
私は一人旅の時も好んでツインベッドルームを予約する。
突然家族が来ても良いように、という Musical Transmute Tour からの習慣だ。
また、ベッドが2つあると、服の組み合わせを考えたり、荷物の整理をするのが容易で、今回のようにベッドを昼寝用と夜用と分けて使える利点もある。
集合時間の17:30は少し過ぎても、18時くらいまでには行けばいいかな、と思い、17時までは休むことにした。
温かいシャワーで汗を流し、目指し時計を複数セットし、真っ白なバスローブを着たままベッドに入ると気持ちよく寝てしまった。
目覚まし時計よりも早く目が覚めた。
スコールの音で目が覚めたのかもしれない。
大きな窓から外を見ると、激しい俄か雨が白く視界を遮っていた。
稲妻が光り、雷の轟音が響く。そして激しい雨の音。
傘をさしてもずぶ濡れになりそうな滝のような雨が、台北の夕暮れを烟らせているのをバルコニーからしばし眺めていた。
Deanさんのチームは、この激しい雨の中を、車でここに向かうのかしら…。
これは何かの始まりかもしれない。
何か素敵な事が起こりそうな期待にワクワクした。
思い出したように起き出して、さきほどのピカソのカードにDeanさん宛てに手紙を書いた。
ほとんどが感謝の気持ち。
Deanさんが読んでも読まなくても構わない。
書いたことで、自分の気持ちが落ち着いていくのを感じた。
雷鳴が轟く中、台北101が見えるサイドテーブルで、集中して書くことができた。
今回はここに来るまで何を着るか決めていなかったから、RIMOWAのスーツケースの中に何パターンかの服を持ってきたけれど、最終的に、今日の気候や会場の雰囲気から白が良い気がして、真っ白いサッカー生地のトップスと、セットアップになっている同じく真っ白いマキシ丈のスカートと、造りが繊細なシルバーのサンダルに決めた。
雷雨だけど会場は隣だし屋根続きだから濡れないで行ける。
改めてこのホテルに泊まれたことに感謝した。
冷房が効いているから羽織ろうと思ったジャケットが邪魔なので腰に巻き付けてウェストマークした。
これは2019年のDeanさんのアジアツアーでDeanさんが衣装として着ていたNIKEのジャケットと同じもの。引き継がれる台湾とのご縁に感謝する証。
徒歩でホテルを出ると、ちょうど雷雨は止んだところだった。
サイン会の開始を待つ時間
18時過ぎに会場に到着すると、1時間後にサイン会が始まると思えないほど、会場は閑散としていた。
サイン会に来た、ポスターを持っている人たちも、ちらりほらりという程度で、とても17:30から列を作っているようには見えなかった。
さきほどカフエでご一緒したFamの先輩たちは後方に点在する椅子に座って待機していた。
いつの間にか着替えたりして美しく整えられ、素敵になっている先輩たち!
それとは別に、お世話になっている別のFamの先輩たちのグループともここで会えた!
昨日から台北市内に宿泊しているそうだ。嬉しい再会を喜び合った。
だいたい全ての予定に都合をつけて、Deanさんを優先させて、告知からたった1週間で海外まで駆け付ける行動力があり、それができる環境にも恵まれたFamの先輩の皆さんは、実はメンバーがある程度決まっている。
2019年の4月~5月のアジアツアー、上海・香港・台湾・ジャカルタでの公演に参加できて、古くは2018年12月に映画「海を駆ける」のジャカルタ上映会に来られた、恵まれた行動力あるFamの先輩の皆さま!
(私は海外は香港が初だったので、先輩たちに比べたら、まだまだひよっ子です!)
その方々に背中を押していただき、今の私があるのだが、海外でFamの先輩の皆さんに会えるのは、正直とても嬉しくていつも目がハートになってしまう。
先輩の皆さんには迷惑かもしれないが、私は全員とても尊敬していて大好きだし、家族のように感じている。
海外で何度も会うFamの先輩の皆さんのほうが、同志という強い結びつきをより感じやすいのだと思う。
ひとりで来ている私は、本当は台北のDeanさんのファンの方々に積極的に話しかけて交流を深めるつもりだったのだが、残念なことに今回は、Deanさんと対面する緊張と高揚感で全く心の余裕がなく、話しかけられて言葉を返した以外はほとんど自分から話すことはできなかった。
日本から今日ここを目指して国境を越えて集まってきたFamの皆さんが集合した興奮と、いよいよその時が近づいてくる鼓動の高まりで、すっかり外に目を向ける余裕がなくなってしまったのだ。
後ろのほうの席で、Famの先輩の皆さんと話しながら待っていると、しばらくして誠品音樂のスタッフではない人たちが現れ準備を始めた。
Deanさんが契約した相信音樂(B'in Music)のレーベルの方々のようだ。
正面には、黒いテーブルクロスを敷いた机と簡素な椅子が置かれ、その手前に仕切りのベルトパーテーションが置かれると、ほどなく台湾のファンの人たちが正面に立ち始めた。
しばらくして私も今日久しぶりに再会したFamの先輩たちと一緒にその並びの端に立った。
この斜めの位置なら他の人のジャマにならずに、しかも最前列でDeanさんの挨拶をスマホで撮影できるかもしれないと思ったからだ。
私たちが動きだしたことで、それまで散り散りにいた人たちが一気に集まり、緊張感が高まった。
Deanさんがサインを始めたら撮影はできない、3枚以上ある人は1回につき3枚までサインをするので、また列に並べば何回でもサインをしますとのインフォメーションを店長が中国語で周知した。(手振りと雰囲気で理解した)
今回『Stars of the lid』の台湾版をリリースする、相信音樂(B'in Music)の人が、今日の告知の紙、ブルーグレーのDeanさんのフライヤーをレジカウンターの横から持ってきて、正面の机の上で写真を撮った。
机の上にマイクと、サイン用のペン数本が置かれた。
そして「皆さん、写真を撮るのでポスターを見せてください」とポスターを手に持ったみんなの写真を撮った。
その写真はインスタグラムにアップされた。
"https://www.instagram.com/p/C8ZQwSdPnYC/?utm_source=ig_embed&utm_campaign=loading" s
Deanさんは台北3日目
ところで、サイン会の日は、Deanさんは台北3日目だったという。
昨年の春に台北で2ヶ月かけて撮影を行い、日本でアフレコも実施したNetFlixの作品『次の被害者2』がいよいよ配信されることになりそのプロモーションのために。
台北に着いた途端に取材が始まり、多くの取材に動画が用いられ、ラジオでは喋りと選曲を一人でこなし「頭爆発するかと思うくらい、めちゃ喋った」と話していた。
取材内容が精査されずにそのまま動画で流されるのは、なかなかのプレッシャーだと思う。
続いて雑誌取材や撮影、昨日は全世界配信に向けてのNetFlixの記者会見があったという。
サイン会の日は「音楽の日」で『誰是被害者2』のエンディングテーマとなった新曲をリリースする流れでベストアルバム『Stars of the Lid』の台湾版を出すことになり、その先行予約をした人へのサイン会の実施は、台湾滞在の最終日に、余った時間を有効に使う企画だったようだ。
Deanさんは、本当に「時」に恵まれた人だと思う。
もちろん、これにうまく便乗できた私たちも「時」に恵まれたことは明らかだ。
突然のインスタライブ
約束の時間、19時開始の3分前になると、Deanさんのインスタライブが突然始まった。
会場には60人~80人くらいいたと思うが、一気にザワザワしはじめ、緊張感が急激に高まった。
周囲が一斉にインスタライブを接続すると、Deanさんはエレベーターの中にいた。
1週間前に、地下のタクシー乗り場と2階の免税コーナーの2往復でお世話になった、このビルの、あそこのエレベーターだ!
もうすぐDeanさんが、ここに来る!
一気に心拍数があがり、緊張感が増し、お腹が痛く、息も苦しくなってきた。
Tシャツにキャップ姿で来るのかと思ったら、お仕事の後だと感じさせるメイクとジャケットスタイル。
この蒸し暑いのに、ふんわりさせた髪型も白っぽくまとめたファッションも、なんて爽やかなんだろう。
なんだか予想を遥かに上回る素敵なDeanさんで、泣きそうになってしまった。
このお店、誠品音樂は、このForumもそうだけれど、いくつかの小部屋に分かれていて、Deanさんはエレベーターを降りた後、Jazzの小部屋にいるようだった。
椅子に腰掛けてサイン会の打ち合わせをして、メイクのお直しをしているようだ。
確かに、スコールが止んだばかりの異常な蒸し暑さで、そりゃメイクも崩れちゃいますよね…と思いながら、隣にいるFam先輩の画面でインスタライブを見つめていた。
待ちきれない!というような中国語も周囲から聞こえてきたけど、緊張感と興奮で会場全体の集中力が一気に高まったように感じた。
私は始まったら儚い夢のように終わってしまうようで、まだ始まらないでと、祈る気持ちでその時を待っていた。
Deanさん登場!
Deanさんがいよいよ立ちあがってこの会場に向かってきたのがインスタライブで見えた。
もう数メートル先の距離にDeanさんがいる。
そのうち後ろから歓声が聞こえるだろう。
心臓が落っこちそうなくらい、ドキドキが止まらない一方で、さっき店長さんが注意していたように「サインが始まる前にスマホのカメラにDeanさんを収めなくっちゃ」と、しっかりとスマホを握りしめている冷静な自分も同時に存在していた。
そのうち、会場の後方から、予想通りにワーッと湧き上がるような歓声が聞こえてきた。
振り返ると、本物のDeanさんが見えた!
インスタライブの画像と私たちがいる場所の画像がついに一体化した。
ほぼ全員が写真や動画を撮っている人々の頭と、おびただしいスマホ画面の向こう側に、誘導するレコード会社の人たち、カメラマンさん、背が突き出てひょろっとしたDeanさんと、後ろに続くマネージャーさんご一行様が、本棚に沿ってこちらへ向かっているのが見えた。
Deanさんは大きな歓声と、Deanさんへ投げかけられる台湾の方々の熱烈な挨拶、それは中国語だったり英語だったり日本語だったりするけれど、その多言語がミックスされてさらにパワーアップしたように感じる挨拶のシャワーに、胸がいっぱいというような笑顔で応え、手を振ってみせ、さらに手を合わせて感謝を伝えるような仕草をし「ハロー」には「ハロー」と返しながらこちらに歩いてきた。
私は自分に「落ち着いて」と言い聞かせながらスマホの動画のスイッチをオンにした。
歓声に包まれながら、Deanさんは私と2メートルほどの距離に笑顔で立った。
近かった。
Deanさんは以前よりも少し痩せて、少し頬がこけて、少し疲れているようにも見えた。
そう、Deanさんだって自分だって、誰しも年を重ねるし明日はわからない。
これまで色々な恩恵を受けたおかげで、今日、日本から台湾へと距離を縮めて、ようやくDeanさんに会えた。
本当に良かったと心から感謝し、泣きそうな気持ちで、とうとう私はDeanさんと対面した。
始まりの挨拶
Deanさんは手を振りながら机の前に立ち、マイクを受け取ると「わぁ」と溜息のような感激を隠せないような声をあげ、集まった人たちを笑顔で見渡すと挨拶をはじめた。
(以下、Deanさんの約1分の挨拶は、私の録画をもとに、Google翻訳に半分くらい手伝ってもらった私の訳です)
「ハ~イ!皆さんこんばんは!ディーン・フジオカです」
日本だと拍手になりそうだけど、拍手はまばらで、一斉にコールアンドレスポンスになる台北の会場、なかなか興味深い。
Deanさんの「晩上好」(こんばんは)に、「晩上好~」とみんなが声をあげて続けざまに「こんばんは~」と日本語で言ってくれる台湾の方々も多数。
ここに集っている台湾の人ってさすが中国語と英語と日本語がとってもスムーズ!
「ただいま!帰ってきました!」
会場からの「フォー!」との歓声。「どんと来い!」との日本語も(笑)
「ありがとう、ありがとう」
会場からの「おひさしぶり~」の日本語に
「お久しぶりです」
と日本語で応えるDeanさん。
「こんばんは~」
と日本語でも応えるDeanさん。
胸がいっぱい、感動しているというように顔を左右に振る。
私は、中国語脳になっているはずのDeanさんが急に日本語が話せるのが凄いなと思ったのだが、インスタライブの録画を見たら、サイン会が始まる直前まではスタッフの方々と日本語で話していたから、中国語と日本語の「行った来た」は今のDeanさんにとってはとても容易なことのようだ。
ここまで来る努力は凄まじいものがあったと思いますが…。
ここからDeanさんの本格的なご挨拶。
「皆さん、わかりますか?
本当に感動しています。
こんなにたくさんの人が(感動で声がつまる)…たくさんの人がここに来てくれて、私のことを応援してくれたり、励ましてくれたり。
何て言うんだろう、本当に本当に、ぅわ、これってシメの挨拶かな(会場の笑いを誘う)とりあえず始めましょうかサイン会。OK?」
と机に手をついて椅子に座るDeanさん。
「…で、どうやって?」とキョロキョロ周りを見渡して、さらに笑いを取り、みんなと一緒にアッハッハと笑うDeanさん。
(こんな風景、日本でも見たい!)
日本は拍手の文化だけど、台北は、とにかくレスポンスがすごい。
こんばんは、って言われたら「こんばんは!」
ただいま、って言われたら「お帰り!」
Deanさんが喋っていても、みんなが話の隙間隙間で、Deanさんに話しかけてシーンとする事がなかった。
日本で一般的な拍手って、もしかしたら、レスポンスの手抜きじゃないのかと思い始めてきた。
私も今度からは、拍手じゃなくて熱いレスポンスを送りたいと思います!あ、でも周りに引かれちゃうから、やめよかな(笑)
Deanさんの机の隣りにいた、レコード会社のスタッフの女性が、Deanさんにペンを渡してすぐにサイン会が始まったので、私は当初の約束通りに撮影を止めた。
けれども、まわりでは台湾の方々をはじめ、何故かほとんどの人がカメラを止めずに撮影は続行しているようだった(笑)。
あら?サイン会が始まったら、撮影はしない約束なのに…。
日本だったらここで注意する人とか出てきそうだけど、さすがここは台湾。
誰一人、撮影を止める人はいないし、それを揶揄する人もいない。
いいなぁ自由で。
台湾、好きだなぁ。
心でクスクス笑いながら、私は最前列を離脱し、Deanさんを撮影する人たちを掻き分けて、サインの列に並んだ。
私は14番の整理券だったが、店長さんの誘導で整理券1番から30番までの人が最初にざっくり並び、私の「14番」は30番までの価値と同等になった(笑)
いいなぁ、このユルさ、嫌いじゃない(笑)
Deanさんにサインを頂く!
Deanさんの机を先頭に、さっきDeanさんが歩いてきた本棚に沿った通路にサインを待つみんなが1列にならんだ。
もっと長い時間がかかると思っていたが、あっという間にサクサクと列は進んでいった。
一人づつサインが終わるたび、Deanさんが「次の方、どうぞ~」というような目線を列の先頭に投げかけてくる。
それがスタートの合図。
最初からDeanさんの視線を感じる中で近づいていくのは緊張して、手も足もすべてがバラバラになりそうなプレッシャーを感じた。
あとから、このサイン会の様子が、最初から最後までインスタライブされていた事を知って、心底驚いたのなんのって!
恥ずかしい…。
恥ずかしい内容はDeanさんには話していないつもりだけど、でも恥ずかしい。
この日のことは、甘美な思い出である一方で、穴があったら入りたいような恥ずかしさが表裏一体となった台北の夜(笑)。
というのは後からそのインスタライブの録画を見て気が付いたのだが、あんまりDeanさんに話しかけている人がいなかった!
ニーハオ、シェイシェイ、ニーハオ、シェイシェイ、ニーハオ、シェイシェイ…時々Deanさんとやり取りする人はいて、Deanさんも短く応えたりしていたけれど、こんなふうにリズミカルにサクサク進んでいたのか…。
Deanさんにガチで話かけているのは私くらいだ…(絶句)。
最後までインスタライブの録画で見て、倒れそうになった。
どおりで、あとで自分のスマホを確認したら、XもLINEもインスタグラムもめちゃめちゃDMが入ってるわけだ。
「エリさん、台北にいるんですね!」
「エリさん、Deanさんと話してる!」
「Legacy歌唱の指導を受けているw!」
「エリちゃん、サイン頂けて良かったですね!」
私とDeanさんのやりとりは、全世界が共有していたのだ。
私としては頭が真っ白になりそうだったから、ちゃんと記録が残っているのは有難く、喜ぶべきことかもしれないけれど…。
3枚まで1回でサインをもらえて、4枚以上の人は複数回並ぶルールだったが、私は何回もDeanさんと話したくて、結局4回も並んでしまった。
19:30までにアルバムを買えばサインがもらえると聞いていたので、19:30少し前にFamの先輩ともう1枚アルバムを追加で買って整理券(168番)をゲットしたけれども、その時にはもう並んでいる人が誰もいなくて、サイン会ももう終了な雰囲気で、私は慌ててDeanさんの目の前に駆け出していくような最後だった。
すべての人のサインが終わった。
サインが終わればもうDeanさんは行ってしまうと思うと寂しかった。
本当は19時から20時までのはずなのに、19時40分にはすべてが終わった。
たった40分。
サイン会も「巻きの王子様」だった。
そういえば、サインを頂いたあと一方通行で流れていく方向に、ヘアメイクのRYOさんが立っていらして、あ!と思ったけれどDeanさんと会ったことで胸がいっぱいで、「あ、RYOさん!」と思わず口から出たけれど、笑顔を交わすだけでお話する心の余裕はなかった。
前日はスタイリストのイソンさんにアンドロイドオペラの会場で会えて、今日はRYOさんに会えるなんて、本当にラッキーだ。
Deanさんに近い素敵なお二人に、またお会いしたいなぁ…。
スタッフの人が全員のサインが終わったことを確認して、最後にDeanさんが立ちあがって挨拶をした。
Deanさんの机の前には、最後まで撮影する人々でいっぱいで、私は最初の挨拶は最前列で見たけれども、最後の挨拶はみんなが頭上に掲げたスマホの隙間から見ながら、私も腕を精いっぱい伸ばして動画を撮ったから、話の内容は後からSNSを見ないと分からなかった。
終わりの挨拶
下記に訳を載せます。(訳は動画からGoogle翻訳を使用)
「(最初のように感動の入り混じった深い溜息)はぁ~。台湾を離れてもうずいぶん長い時間が経ったけれど、台湾に来るたびに「ただいま」という気持ちになるんです。
そう感じさせるのは、皆さんがいてくれるから。この意味わかりますか?」
「は~い」という歓声。
「ありがとう、ありがとう。長年に渡り、こんなに多くの応援と励ましを頂いて、感謝しています。できれば早くまたこちらに戻って、ライブをやりたいなと思っています」
「ウォー」というみんなの歓声。
「台北アリーナで」
さっきよりずっと大きな、地鳴りのような歓声。
ビクターさんかな?男性の声で
「台北ドーム!台北ドーム!」「できればもちろん」と笑顔のDeanさん。
「来てくれた皆さん、本当に本当に、感謝しています」
「1曲歌って~」と会場からの声に、Deanさんが大げさに机にズコーっと倒れこみ、笑いを誘う。
「In Truth!」「In Truth!」
お、台湾の人たちは、みんな『In Truth』知っているのか~。
新曲をおねだりする声声声に私も賛同してしまった。
「え?1曲か~。(まんざらでもなさそう)(笑)
ダメダメ!ダメです!僕のライブ、絶対来てくださいね!いいかな?」とDeanさん。
「は~い!!」とみんな。
「皆さん、今日は本当にありがとうございました!バイバ~イ!」
手を振りながら、笑顔をまき散らしながら、Deanさんはエレベーターのほうへ。
私はしばらく放心していて、Deanさんの後に続いて、ファンのみんなが民族大移動になっていることを把握するのに少し出遅れた。
あのエレベーターへ向かうことはわかっていたので、少し近道をしてDeanさんご一行様に追いつき、エレベーターの扉が閉まるまで見届けることができた。
エレベーターを待っている間、Deanさんはスタッフさんと、インスタライブを締めましょうと相談をしていたようだった。(アーカイブではこの時にインスタライブを終了している)そのうちにエレベーターの扉が開いた。
Deanさんが先に乗り込み、こちらに手を振り(最後に目が合った気がする!(笑))エレベーターのドアが閉まるまでが私のカメラに収まっている。
そのあと、しばらくFamの先輩たちと会場にとどまり、さっきDeanさんが控室に使っていたJazzの部屋で、皆で集合写真を撮ったりして余韻を楽しんだ。
Deanさんがインスタライブで手に取ったJazzアルバム、Art Blankeyの「In My Prime」のジャケットを見ているうちに、スピーカーから、Deanさんの曲「Teleportation」などが次々と流れてきた。
Deanさんは去ってしまったのに、今頃?と思ったけれど、今考えれば、店長さんが私たちのためにDeanさんの曲を流してくれたのだろう。
先週も今日もお世話になった店長さんにお礼を言ったら「これをあなたに」と、ここに来る道しるべとなった、Deanさんの青灰色の今日の案内フライヤーを下さった。
この世にたった1枚しかないのに。
なんて粋な計らい!!
店長さん、本当にありがとうございます!
宝物にします!
お世話になりました!
500枚のポスターのうち、今日のサイン会でさばけたのは170枚との話だった。
残りのポスターが、9月のアルバム発売の時に使用されるようなら、第2回目のサイン会も夢じゃないかも?
台湾でできたFam友さん、ビクターさんとインスタを交換しているうちに、日帰りで来ている先輩の何人かが挨拶もそこそこに帰られてしまった。
明日の仕事のために、深夜のフライトで帰られる。
隣の私のホテルからタクシーを頼んであげたかったな、とちょっと胸が痛んだ。
「先輩の皆さん、どうぞ無事にお帰りくださいね!」と心の中で感謝と共に強く強く念じた。
炭火焼肉専門店「無上」
お会いした流れで、私と同じく今日も泊まりの先輩たちに、Deanさんが行かれた焼肉屋さんに連れて行って頂くことになった。
Deanさんと会えて胸がいっぱいで何も食べられないと思っていたけれど、誘って頂くと都合よくお腹がすいてきた(笑)
心強いことに台湾人のビクターさんも一緒に。
いわゆる台湾ディン活。なんてラッキー!
私は「お宝」のサインを、隣のホテルの自分の部屋に置いて、焼肉に相応しく、白いワンピースから、Deanさんのグッズのconfidentialの黒いカジノTシャツと黒いジーンズに着替えて出てきた。
そしてタクシー2台で炭火焼肉専門店「無上」へ。
ここはタクシーで5分くらい。昼間なら歩いても楽に行ける距離だろう。
Deanさんのインスタにたびたび登場するご友人のシャロンさんの経営していたお店だが、今はシャロンさんはファッションを中心にしたビジネスをされているそうだ。
Famの先輩たちがお店の方にDeanさんのことを聞いて、Deanさんが来られた2階の個室の写真を撮らせて下さったり、Deanさんが食したであろうメニュー?を頂いた。
肉は柔らかな和牛の焼肉、ちょっと捻りを効かせた技があるお料理は美しく、どれもとても美味しかった。
台湾にいるのに和牛がこんなに美味しいなんて。
ビクターさんともFam友さんとも話が弾んだ素敵な夜だった。
帰りはキンキンに冷えた冷房のタクシーから、台北101の緑色のライトアップが美しかった。
美しい姿が大好きな台北101を観ると、Deanさんのポストを思い出す。
「靛」
(diàn)
インディゴブルー
藍色の染料
七色の虹の第6番目の色🌈
台北101の土曜日の色👻
(2016年2月25日)
台北、いいなぁ。やっぱり好きだな。
来てよかった・・・!
エピローグ
Deanさんが大好きな台湾は温かい。
Deanさんがホッとして、いつも帰ってきた気持ちになるのは想像できる。
今夜Deanさんはみんなに温かな視線と感謝を送っていた。
その笑顔が嬉しかった。
個人的には日本から行っちゃいけなかったのか?って、最初は心配して最初の一言は「日本から来ちゃってごめんなさい」だったかもしれなかったけれどそれは杞憂だった。
Deanさんは日本人でも台湾人でも誰でも平等に接してくれて(小さい子はもちろん別格ですが)それがとても心地よかった。
7/25のFamBam最後の配信でも「サイン会では日本から台湾へ飛んできてくれた皆さんありがとう」と身に余る気遣いを頂いた。
そしてDeanさんは「共鳴」や「反応」を強く求めているタイプなのではないかと改めて思った。
(8/16加筆:現在始まっているBillboardliveツアーでも、観客との共鳴をより大切にしているように見える)
台湾のファンの皆さんの、コールアンドレスポンス、というのか、Deanさんへの喋る反応が凄くて、それに素早く応えるDeanさんも、いつになく嬉しそうだった。
私もただ漫然と拍手を贈るだけじゃなくて、ちゃんと声を出してDeanさんを応援することを見習いたいと思った。
いつか日本でも、こんな屈託のないDeanさんに会いたい…
そしてDeanさんが、いつか世界中の多言語でみんなから歓声や祝福を受ける、その日が見たい…。
ありがとうDeanさん、台湾でお世話になった皆さん、先輩Fam友の皆さん、そして協力してくれた私の家族…。
そしてこんな長文にお付き合い下さった読者の皆さまに心から感謝します!
(完)
■サイン会を振り返っての記事