雨上がりの匂い ふるさと♪~DEAN FUJIOKA @風とロック芋煮会 2日目:豪雨編
どんな気持ちだっただろう…。
初めての野外フェスの2日目、その直前に降り出した雨が大きな音を立てみるみる激しくなる。
容赦なく豪雨に打たれるオーディエンス。
ひとりまたひとりと離脱し後方へ駆けていく…。
DEANやバンドメンバーはもちろん屋根の下だが、DEANは一瞬「いたたまれない」というような視線をこちらに投げた。
でも大丈夫!オーディエンスはそれ以上の熱さで彼を迎えたのだから。
【セットリスト】
1.My Dimension
2.Apple (Pandora version)
3.Be Alive
4.Take Over
5.In Truth
6.Fukushima
7.Plan B
8.History Maker
【プロローグ】
ちょうど始まるタイミングで大粒の雨が降り出したが、一斉に持参のレインコートを着込む時間はあった。
私は列のやや後方の正面に立ったが、ザーっと音を立ててどんどん酷くなっていく雨に、観客の中で次第に大きくなっていく不安を肌で感じていた。
そんな空気の中で「こうなったらみんなで特別な思い出を作ろう!」という誰かのふと発した言葉に「そうですよね!」「こうなったら、忘れられない思い出を作りましょう!」私の周りでは一気に、この豪雨をチャンスに変えるぞ!忘れられない思い出にするぞ!という熱気がドミノのように広がった。これぞ正のスパイラル!
ふるさと福島での晴れ舞台を、素晴らしい記憶として永遠に残すために。
舞台ではサウンド チェックを続行中であり、『My Dimenseion』 や『Take Over』の一部が演奏された。
改めて、公衆の面前で行われるサウンド チェックは普段のLiveでは決して見られないので興味深いものがあった。
サウンド チェックが終わるといったん舞台から誰もいなくなった。
公式テーマパークソング『イモニーシンフォニー”FURUSATO”のテーマソング』が「ドレミ ドレミ レレミレド~」と流れた後、改めてバンドのメンバーの皆さんが入場した。
今回DEANを支えるのは去年の日本武道館を支えた方々。
木内プロ、小林さん、神宮司さん、そして金子さん。この上ない安心感だ。
【My Dimension】
聞き慣れた口笛のイントロにわぁ~っと歓声が沸き上がった。
このイントロにも沸くが、イントロと同時にDEANが下手(しもて。舞台に向かって左側)から登場したからだ。
DEANの原点(デビュー曲)となる『My Dimension』をここ、ふるさと福島で、満を持して演奏するのか。しかも1曲目に!
演奏する前から感動と感謝が溢れ出て来た。
DEANはアコースティック ギターを携え、降りしきる雨の中で彼を迎えるオーディエンスを見渡しながら、正面のスタンドマイク前に立った。
「歌い手として」とBillboardliveでは宣言したものの、完全に「歌い手」に変わってしまったのではなく、ちゃんとまたギターを持って舞台に立ち、以前と変わらずギターを演奏し、むしろ以前よりも良い声で歌ってくれるのは喜ばしい。
DEANの歌声は力強かった。今日は豪雨がライバルなのか!?
「sing it !」と言われたけれど「La La La~」は昨日のように仕掛けられずとも、すでに観客はこの豪雨を蹴散らす勢いで「La La La~」を力強く、アンセムのように高らかに歌っていた。この瞬間すべてを目に耳に焼き付けながら、雨雲を追い払うかのように。
歌い終わると大きな歓声があがった。
DEANは昨日と同じように、ギターを何度も何度も頭上に掲げ拍手を求めた。
【Apple (Pandora Version)】
『Apple』はラップからではなく、ザビから入る『パンドラの果実』の主題歌バージョンだ。
重々しいサウンドに、メロディアスなDEANの高音と、ラップの対比がカッコいい。
激しくなる雨にだんだんと前方から離脱者が現れ、ランダムに並んでいた列が次第に前方に押し上げられ、後方にいた私でさえも前へ押し出されていくスリルを味わった。
リンゴを回す手つき、最後のポーズまで完璧にオーディエンスを魅了していた。
心優しく美しいDEANだけれど、一度歌えば力強さも繊細さもの思うがまま。そんな彼の魅力を、今日会場で歌声が聴こえているひとりひとりに届いて欲しいと願った。
【Be Alive】
2022年12月22日、第五人格の決勝戦で、テーマ曲であった『Be Alive』が初めて人前で披露されて、昨日が2回目、今日が3回目の演奏だ。
ポジティブなメッセージと中毒性のあるこのメロディが大音量で聴けるのは至福のはずだった。
けれども最も雨がひどかったのは、この頃だろうか。
足元がみるみる水たまりになり、荷物が泥水の中に水没していくのをちらっと確認したが、比較的密集した中ではそんな事を気を留めてはいられない。
挙句の果てに雨音でDEANの歌がよく聴こえない、こんなにすぐ近くにいるのに音が聴こえないなんて、逆に笑ってしまうくらい、そんなのは初めてで貴重な体験だった。
「Come alive!」DEANの歌声が雨音のフィルターを通して耳に入ってくる。
気持ちいいくらいの土砂降り…。
「雨降れ!もっと降れ!」ただ体に響いてくるリズムとかすかに聴こえる音楽に身を委ねて揺れている感覚は、もっともっと雨を求めてしまうほど、非現実的で何とも心地よかった。
【Take Over】
アップリフティングで高揚感のあるイントロ。
DEANは「福島!」と呼びかけ「あいにくの雨だけど、最後まで楽しんでいってください!」と声を上げた。
そして豪雨にさらされるオーディエンスぎりぎりの、舞台の縁まで歩み寄り熱唱した。
きっとDEANにも降りしきる雨は降りかかってきただろう。その気遣いと優しさが嬉しかった。
一方で観客の反応は昨日より良かった。良かったというより、鬼のような気迫だったと言っても言い過ぎではないだろう、戦っている感じすら覚えた。
ポジティブなメッセージとメロディに、観客たちの手も一層大きく高く振り上げられた。
【MC①】
「改めまして、ただいま、福島!」(「おかえり~」の声声声)
「風とロック芋煮会、イモニシンフォニー ”FURUSATO”。
雨降っちゃったねぇ!(歓声)みんな、大丈夫?」
(「だいじょうぶ~」との観客の声)
「すごいねぇ。いや~みんな雨の中、集まってくれて、本当に本当にありがとう。めっちゃ嬉しいよ今!」(大歓声と拍手)
と本当にめっちゃ嬉しそうな顔になるDEAN。
「みなさん、ありがとうございます!DEAN FUJIOKAです!」
「初めて野外フェスに参加したんですけど、ちょっとこれヒドくないですか?(笑)」観客の「大当たり!」との声に
「大当たり!ありがとうございます!素晴らしい、ありがとうございます!
雨でも晴れでも、初フェスにぴったりの、初披露の新曲を用意してきました。聴いてください ”In Truth”」
【In Truth】
ピアノのイントロが静かに流れ、オーディエンスの集中力が増す。
美しいメロディを伸びやかに歌いあげる、昨日に引き続き新曲の披露、『In Truth』。
昨年台湾のNetflixシリーズのドラマ「次の被害者2」の撮影時に台北のホテルで作り、のちにドラマのエンディングとしても採用された曲だ。
リリースは今年の新曲を、先月のBillboardliveではなく初めてフェスで聴けるとはなんと贅沢な仕掛けだろう。
雨の音は次第に小さくなった。
風とロック芋煮会には、DEANを知らない人も多く来るので、彼の素直で真っすぐな声が、会場内のどこかにいる人にも届いて欲しい思いで聴いていた。
【MC②】
「『In Truth』を聴いて頂きました。いかがだったでしょうか?(拍手と歓声)
この曲はNetflix シリーズ『次の被害者2』の主題歌として作られて、全編中国語です、ぜひチェックしてみてください。
この曲は中国語バージョン『被愛者』という曲も、エンディングで流れていますので、皆さんもし良かったら、聴き比べなんかして頂いて、楽しんで頂くことができます」(拍手)
これ、私たちには当たり前だけれど、初めてDEANの歌や話を聞いた人は、すごい音楽、俳優、英語、中国語、それに美しさ(それだけではない)…すごい才能だと思うに違いない。そんなすごい人を生んだ福島、すごすぎる!最高!
「雨すごいですか?めっちゃ降ってる?」観客を気遣うDEAN。
「大丈夫!」「ちょっと小降りになった」という観客の声に
「え?本当に?レインストッパーだ!効果あるね」
DEANは前に出てきて舞台の縁に腰掛けた。(歓声)
足をぶらぶらさせて。
「なんかさ雨降るとさ、土の匂いがしない?(「する~」と観客)
子供の時にさぁ、須賀川で遊んでさぁ、あ、わたくし須賀川市出身、というか生まれなんですけど、今日須賀川から来たという方、挙手!(まばらだが勢いよく手が挙がる)
お、お、お、お、人口が増えております!ありがとうございます。あ、大先輩、後輩、ありがとうございます!(観客笑&拍手)
須賀川といえば、円谷英二さんですよね。(「は~い」という声)
ご存じですか?皆さん、ウルトラマンだったりゴジラだったりね、日本の有名なアイコニックなものを作った大監督ですよね。
今朝わたくし、めっちゃ早起きして須賀川に帰りました。(歓声と拍手)
で、円谷ミュージアムにおじゃまして。行ったことある人いるのかな?行ったことある?(何人か「行ったことある!」の声)
「空想の力」をテーマに、「空想」っていうキーワードで色んな催し物というか、アクティビティが展示されていて、実際参加できるアクティビティとかもあって、子供たちがね、実際にやってみたりとかあって、私普段、映像制作のほうもするので、その可能性に驚きましたね。須賀川市が何か持ってるんじゃないかってね(拍手)!空想の力。空を想う。(と雨雲を眺め)空を想うと書いて空想」
(と言いながら体を左右に揺らし、笑いを誘うDEAN)
「それが、ひとつのことがきっかけで、何とも言えないね、自分の身をもって感じると。子供の時の事を思い出しちゃうんですよね。
自分はそんなふるさとがありながらも、人生の前半戦をだいぶ遠いところに行っていたんでね。
「日本からどれだけ離れていられるかゲーム」みたいなことをやっていたわけですよ、わたくし。
ゲームっていうとチャラい感じですけど、結構ハードボイルドでした。
そのお陰で色んな経験をさせてもらったり、成長のきっかけを頂いてね。
今となっては本当に、自分がこういう形で何の因果か、一時は日本にはもう帰ってこないだろうなって思ってた。
なんだったら、国籍っていうものも、日本じゃなくていいのかなって思ったこともあったんですけど。
ある日を境にそれまで自分の生まれた故郷、福島っていう誰も知らなかった世界が、アルファベットFUKUSHIMAで世界中の誰もが知るようになっちゃってね。
当時は私はジャカルタでファーストアルバム作っていたんですけれど、スタジオにあったTVのニュース映像で、東日本大震災のことを知って、その時はじめて「日本へ、ふるさとへ、帰らなければいけない」と思ったんですよ、何故か。
今は何故だかそりゃそうだろうってわかるんですけれど、当時はそれだけ真逆のベクトルで動いてたんで、でもそれがきっかけで、またふるさとと縁が繋がって、今日こうやって皆さんの前で、このステージの上に、座らせて頂いてます(昨日の「ステージに立たせて頂いている」ではないので観客大笑い&拍手)!」
「そうですね、なんかこうやって座って話すのもいいもんですね、改めて。
自分が子供の時に雨上がりの土の匂いの記憶とか。
再び激しくなる雨。空を見上げるDEAN。(観客から笑)
「空を想う。空想。雨止んでくれよ!」(笑)
「アルファベットFUKUSHIMAっていうものが自分にとっての、何の因果か帰るきかっけになった、子供時代の心象から曲を作りました、聴いてください『Fukushima』。」
【Fukushima】
激しい雨は降り続いている。
その中でDEANが舞台の縁に腰をかけ、みんなに一番近いところで、足をぶらぶらさせながら歌う『Fukushima』。
昨日は「あなたの面影 今はもう夢に見るだけ」の後が涙で続かなくなってしまった。
観客が歌詞を補って歌い、私ももらい泣きしてしまった。
そのことで「あなたの面影」の「あなた」は、なんとなく DEANの祖父であることか解った。
昼のDJ合戦でも、奈良美智さんに、夕暮れに「赤とんぼ」を聴きながら、祖父と手を繋いで帰った話をしていた。
今日は言葉を詰まらせることもなく、満ち足りた表情で完璧な『Fukushima』を聴かせてくれた。
間奏では立ってバンドメンバーのほうに歩いていき、アイコンタクトを取って回る余裕も見せた。
ラストでは戻ってきてまた、観客と近い位置に座って最後まで歌いあげた。
「頬をなでて」
の歌詞のところでは昨日と同じく左の拳を左の頬に当てて微笑んだ。
「ありがとう!福島!」
何とも幸せそうな笑顔だった。
この時間を共有させて頂いて本当に良かった。
拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
【Plan B】
2021年のツアー、Musical Transmuteで初披露した振り付けを踏襲したPlanB。キラキラしたイントロ。
DEANはさっきまで親しみやすい笑顔を振りまいていた素顔を封印し、俳優の顔で向かって左の下手(しもて)でスタンバイ。
歌唱が始まるとハンドマイクで歌いながらゆっくり中央へ歩を進めこちらを向きしばらく佇んだ。
次に再び歌いながら上手へ歩いていき、観客のほうへ向き直った。
この曲は1番とか2番とかなくて、オール1番のキメラ構造の曲だが、途中から別の曲?と思えるほどドラマティックで華々しい爆発力があり、受け止める側にもエネルギーが要る曲だ。
これがフェスで演奏されるだなんて最高!
ていうか、今回のセトリ本当に最高!
前半では高揚感のあるアップリフティングな曲たち。
中盤の『In Truth』、『Fukushima』でDEANのパーソナルな人物像をあぶりだし、聴かせ、最後は壮大なフィナーレ。
上手く出来すぎている!
今回『Spin the Planet』も『Teleportation』も『Sukima』も『Searching for the Ghost』や『Shelly』もなく、これだけ短い時間に満足度高いプログラムがまとめられるとは、改めてDEANの音楽の多様性と空間支配力に感動したのだった。
【History Maker】
とうとう雨が止んだ。
ドラマティックな『Plan B』から、トンネルから抜け出るような 『History Maker』の6拍子が始まる。そして壮大なフィナーレ。
オーディエンス、振り返ればDEANのファンじゃない人も、色々な年齢層の男の人も、みんな「wow wow wow」を一緒に歌っていて胸が熱くなった。
DEANも満ち足りた笑顔で熱唱している。
曲が終わるとDEANは右手をあげ、その手を胸に当てて深々と頭を下げた。
大きな歓声と拍手。
なんて素敵な景色だろう。
「みんな、写真 撮ろう!」
感動的な余韻に浸る時も惜しんでDEANが現実に引き戻す。
昨日は無かった記念写真タイム。
みんなギュッと集まって手早く何枚かの写真を撮る。
「ありがとうございました!DEAN FUJIOKAでした!」
最後にもう一度挨拶すると、DEANは颯爽と舞台袖へ消えていった。
【エピローグ】
DEANの国内初めての野外フェスが終わった。
大成功だったと思う。
DEANの音楽に初めて触れる人も巻き込まれるような、高揚感ある最初の4曲、次にDEANのパーソナルな人柄や魅力が伝わる2曲、最後にフィナーレを飾る2曲という構成、選曲が良かった。
本当の意味で彼は祖国日本に帰国し、今度はふるさとから、福島から新たに発信し、感動と感謝を伝え、ふるさとの仲間を増やすという絶好の機会に恵まれた。
『風とロック芋煮会』これ以上相応しい、初野外フェスの舞台はなかっただろう。
DEANも今回、祖母に会ったり祖父のお墓参りができたと言っていた。これからもふるさとの思い出が彼の背中を押してくれるだろう。
ありがとう!『風とロック芋煮会』!
グッバイ言うてもまた会える!
最後までお読み頂きありがとうございました!
(完)