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故郷の風に吹かれて〜DEAN FUJIOKA @風とロック芋煮会 1日目:風編

すごいものを見てしまった。 
DEAN FUJIOKAの、日本での初野外フェス!*
それが故郷福島の「風とロック芋煮会」とは運命というほかない。
彼がこんなに野外ライブ得意とは思わなかったし、故郷を自分の原点としてチョイスした選曲には心鷲掴みにされた。
DEANの故郷福島で行われた「風とロック芋煮会」初日の様子をレポします。

*(海外では2016年インドネシアのボルブドゥール遺跡で行った「アジアの友」以来で、日本では屋内フェスのKUREVAフェスのゲスト出演以来かな?) 


【セットリスト】


1.My Dimension
2.Apple (Pandora version)
3.Be Alive
4.Take Over
5.In Truth
6.Fukushima
7.Plan B
8.History Maker

【瞬きもできないマジックアワー】


舞台登場前からDEANの笑い声が袖から聞こえてきた。
私は前のほうに詰め寄る観客とは少し距離を置いた中央後方に居たが、それだけ芋煮会のステージは近かった。
芋煮会のテーマソングが流れたあと、バンドメンバーが登場した。

【My Dimension】



イントロと同時にDEANが下手(しもて、舞台に向かって左側から)から登場した。
白い薄手のシャツを重ね、ベージュのパンツ、白いスニーカーのいでたち。うっすら口元と顎に蓄えた髭。
アコースティック ギターを抱えている。

懐かしい口笛のイントロ(口笛は生ではなく録音)が響くと観客が明らかにどよめいた。
その中をギターを片手に入場するDEAN。
ギターを弾きながらDEANは初めから「LaLaLa」を一緒に歌うよう観客を促す。いま思えば、初っ端から結構な賭けだと思うが、1曲目で恐るべき一体感を生むのに成功した。
しかも観客がLaLaLaを担えば、必然的にギターのリフは静寂になる。武道館で成功した実験だが、これを正のスパイラルと言わずして何と言おう。
客席では多くの拳とペンライトが振られ、充分に胸熱なオープニングだった。
大歓声のなか、いつかの Musical Transmute Tour のアンコールでしたように、ギターを頭上にかかげ何度もガッツポーズをすると
「福島!」とDEANが叫んだ。
新聞の一面を飾りそうな格好良さだった。


【Apple (Pandora version)】


息をつく間もなく、Appleのストリングスのイントロ。しかも、サビから歌う「パンドラの果実」主題歌バージョンだ。
鍛えた声を十二分に聴かせてくれ、華やかな身のこなしや最後のお決まりのポーズも格好よく決まった。
Appleが終わるとあまり間隔を開けることなく次の曲が始まった。
持ち時間40分の間にたくさんの曲を演奏したいという意気込みが伝わってきた。


【Be Alive】



蜂がブンブン飛ぶようなストリングスのイントロは「BeAlive」。
披露するのは2022年12月22日以来。筆者も観に行ったが第五人格の決勝戦のイベント以来だ。
もともと第五人格のテーマ曲として製作され、DEAN自身は産みの苦しみを味わったと言いながらも、DEANの妥協しない魂が込められた素晴らしい作品となった。
パフォーマンスの完成度が高かったので、ずっとどこかのLiveで披露されるのを心待ちにしていた。その機会にようやく恵まれ、ポジティブなメッセージを観客はしかと受け取ったに違いない。


【Take Over】



畳み掛けるように、エネルギッシュでアップリフティングな曲が続く。
めちゃめちゃフェスっぽくて、今日のセトリ最高!
先月のBillboardliveTourではしっとり聴かせる曲が多かったから、今日のセットリストは、もちろん故郷へ捧げる決意や原点回帰の意味もあるが「ビルボードライブでやりたくてもできなかった曲」リストだったのかもしれない。
改めてDEANの曲は多彩であると感動した。


【初 野外フェスのステージで】



「改めて、福島ただいま!DEAN FUJIOKAです」(拍手と歓声)
「この日をどれだけ待ち望んでいたことか」(笑顔で観客を見渡す)
「このたび風とロック芋煮会、主催 箭内さん、関係者そしてここにお集まりの1人1人、あなた、あなた、あなた、あなた(と指さして)、本当にこのステージに立てて、この時をこの空間をみんなと共有できることは、とてもとても意味のある特別な貴重なことだと思います。感謝申し上げます。ありがとうございます。
初野外フェスにふさわしい、初披露の曲を用意してきました」


【In Truth 】



もちろん初披露の曲はといえば、今年の新曲であるこの曲しか思い当たらない。
マイクスタンドの下方に手を添え、DEANの真っ直ぐな歌声は、ステージを優しく包み込み、夕暮れのマジックアワーにふさわしい夢のひと時となった。

歌ったあとは Netflixシリーズ「次の被害者2」のエンディング曲、中国語で作詞した「被愛者」とも聴き比べほしいと語った。

【故郷(ふるさと)のステージに立つ】



「せっかくなので故郷の話をしていいですか?ただいま〜」と切り出すと、「おかえり〜!」と観客。
「たつお!」と男性の観客の声がかかると、
「おう、竜雄(本名)や!竜雄なぁ。みんな聞いてくれ!福島県須賀川市で生まれたんだ!」と返した。
拍手と歓声に沸く会場。
「ただいま!子供の時に、福島の空の下で、福島の風を浴びて色んな所で遊びましたよ。
阿武隈川行って釣りしたり。
夏も冬も色んなアクテビティをしたり思い出がたくさんですね。
ちなみに須賀川市から来たという方、挙手!」

あちらこちらから、まばらに手が挙がった。
「あ、結構いるね、お、お、先輩、先輩、後輩かな?(ひとりひとりを見て)ありがとうございます。
須賀川いいところだよね。自分の子供のときの思い出っていうとね、須賀川の景色、食べた桃とかね、梨とかね。
改めてこうして福島に戻ってきて、色々思い出すことが沢山あるなと思って。ちょっとお付き合い下さい」
し〜んとする会場。観客は聞く姿勢だったのだと思うが、
「は〜い。しぶしぶ?」
と返すDEAN。客席はどっと笑い声につつまれる。

「わたくし、そんな素敵な故郷がありながらね、人生の前半戦というか中盤戦はねどうやったら、日本からどれだけ離れられるかゲームみたいな事をね、やって生きてきたわけです。ま、もちろんゲームといってもサバイバルゲームというか、生き抜くために必死だったという、ゲームなんて生優しいものではなかったですけど。
当時、自分がどっから来たのかって話すじゃないですか、ほかの国に行って。
で、福島という地名を言ってもね、知ってる人はほぼいなかったですね。
いなかった、すまん!(観客の笑い)
え?福岡?みたいな。
え、福島だって言ってるじゃん、みたいな。
1回クレジット書き間違ったこともありましたね。福島県です。

それがですね。2011年3月11日を堺に、世界中の誰もが知る、アルファベットFUKUSHIMAになって。
自分は当時、インドネシア ジャカルタでファーストアルバムをね、製作をしていた、そんな日々を過ごしていたんですけれど、スタジオにあるテレビで、ニュース映像を見て、東日本大震災のことを知って、驚愕しましたね。
なんかこう、それまで遠くに行こうと思っていたのに『帰らなきゃいけない』っていう気持ちが、そこでハッキリ切り替わった事を今でも覚えています」

言葉を力強くも、ぽつりぽつりと運ぶDEANの話に聴衆は聴き入り、涙を拭く人々の姿も。
宵闇が迫る会場に福島の風が通り抜けて行く。

「それがきっかけでそれまで途切れていた祖国というか故郷というか、縁がまた繋がって、早送りすると今日、このステージに立っている訳ですよ。(拍手)

ありがとうございます!」


【Fukushima】


「自分にとっての福島、
その景色であったり、思い出であったり、自分にとっての故郷(ふるさと)と言うものを書いた、紡いだ、そんな曲をここで皆さんと歌いたいと思います。
それでは聴いて下さい、Fukushima」。

故郷の風に吹かれて、スローなクラップが響く。
DEANからはこの景色がどんな風に見えただろう。
どんな風に過去の記憶と今を結びつけただろう。
DEANの声が途中から聴こえなくなった。
「あなたの面影 今はもう夢に見るだけ…」の直後で。
泣いてる!?

手拍子が拍手に変わり
「頑張れ〜」との声。
やがて
「小さな声〜ありがとう〜」
と観客席から歌声が聴こえてきた。

DEANが向き直ると、両目から大粒の涙が溢れて流れ落ちている。
ライトに照らされ、涙はダイヤモンドのようにキラキラしている。
いつもより4小節長い間奏。
彼の「涙流しタイム」に合わせて間奏を調整する素晴しいサポートメンバー。

しかしここからは、しっかり歌詞を紡いでここからは自力で歌い上げた。
「どんなに時が流れても、いつまでも忘れない」

「頬を撫でて」
自分の頬に軽く握った拳を当てるDEAN。
目が優しく笑っている。
なんとも幸せそうな笑顔を見せてくれた。


【Plan B】


前半は2021年 Musical Transmute Tour以来の振り付けを踏襲しており胸熱だった。。
前奏でハンドマイクを手に舞台下手(しもて)に移動すると、歌いながらゆっくりと舞台中央に移動し、前方を見つめると、再び歌が始まると歌いながら上手(かみて)へ移動した。懐かしいこの演出!
後半は中央に戻ると力強く歌いながら、足をアンプに乗せ、頭を揺らした。


【History Maker】



イントロなく歌が始まった。
持ち時間は40分と少ない。
「Sing it !」会場にwow wowを求めるDEAN。
Yes, we were born to make history!
We=私たち を強調して会場との一体感を作り上げ、福島の初日の夜が幕を閉じた。

「DEAN FUJIOKAでした!ありがとうございました!
次は岡崎体育さんです、最後まで楽しんで下さい!
それではまた!」
と舞台を後にするDEAN。

故郷の風が優しく頬を撫でる、心地良い野外Liveだった。
2日目はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。

最後までお読み頂きありがとうございました。

(風編:完  後半は雨編に続きます)