アウェイがホームに変わるまで
日本ではまだまだ永年勤続が美徳とされている風潮だが、私は割と転職を重ねてきた方だ。
その都度少しづつステップアップしてきたつもりなので履歴書に引け目はない。
が、最後の城を決めよう!という覚悟を持って、先週から新しい職場へと移った。年齢が年齢なので転職出来る制限もかかってくるし、今後は勤務年数を重ねて退職金を積み立てていきたいのだ。
新天地にてようやく2週目が終わろうとしているが、特に1週目の先週は、心身共にクタクタであった。
仕事自体は前職と比べてとても楽になったし、人間関係も今までにないくらい良好な手応えだし、慣れたらきっとノンストレスな予感である。
が、その慣れるまでが大山だ。
新しい仕事を覚えることと新しい人に慣れることに神経をすり減らし、その余波が肉体にも影響を及ぼす。
帰宅後特急で夕飯を作り、熱い風呂に浸かり、ちょっと携帯を触ったら爆睡の日々であった。
今日はようやく余裕が出てきたのでnoteを開いた次第だ。
私に関していえば、新しい人達に囲まれると、声も態度も話し方も、よそゆきになる。自分を出せない。
しかし出さなくて正解なのだ。しばらくは自分を殺しつつ、よそゆきの自分でいるべし。
昔、若い時に、転職した数日後の職場での思い出だ。
女だらけのその職場で、見るからに大ボスなお局から、雑巾をこっちに投げて寄越せと言われた。
あぁ投げ損ねたらどうしよう?!とテンパった私はきっと運動音痴に見えたのだろう。
ボスは言った。
「エリコさんは何部だったんね?!」
軽い調子で聞かれたので、つい反射的に
「デブでした」
と、ヘラッと言った途端に、ボスの口元がムスッとへの字口に変わった。
私のオヤジギャグをケラケラと笑おうとしていた(間違いなく笑おうとしていた!)取り巻き連中達が、そのボスの憮然とした表情に気付き、それに倣ってサッと皆が無表情になった。
シーン、、、、、、
しばらくその場が凍りつき、黙々と作業は始まり、いたたまれない思いをした教訓がある。
休憩室などでもしばらくの間は、90パーセント聞き役がよい。
質問されたらパーソナルなことも披露しなければいけない。
年齢は?結婚はしてるの?子供さんは?前職は何処?住まいはどの辺り?
最初は自分を知ってもらうことは大切だ。
あっという間に私の身の上は、口から口へと伝わって広まっていくが、そこから会話も広がる。
しかしこちらが質問するのはまだ、業務内容や職場環境、待遇などのことに関してのみがよい。
そして早い段階で、少し心を開いても良さそうないい人を見つけ出すことだ。
今回ラッキーにも、すぐに良い人を見つけた。性格がよくて、親切で、口が堅そうな人。
まだ子供が小さい為、土日休みで日勤オンリーで働いているというその彼女と勤務がずっと重なったので、少しづつ少しづつ、私はチラチラとよそ行きの仮面を外しての会話を重ねた。
彼女に確認しておきたかったのは、師長を始めとする妙齢の女性陣の中で、独身なのは一体誰と誰か?ということだ。
確認しておかないと地雷を踏んでしまっては大怪我負うことになる。迂闊に家族環境の話題を振るのは禁忌なのだ。
以前、不妊治療に悩む主任にそうとは知らずに
「子供さんは?いらっしゃるんですか?」
と笑顔で聞いてしまい、結果、溝を開けてしまってからのスタートとなり、溝がめでたく埋まるまでは時間を要した。
人間関係を一から構築していくのはほんとに労力だ。しかし、それを承知でぬるま湯を脱出したのだから仕方ない。
きっと時間が解決してくれる。
早くこの新しい城がホームになりますように。