mixiの中の彼
私がインターネットに本格的に取り掛かったきっかけは、mixiであった。まだガラケー時代。
当時私は彼氏を求めて、毎月5回は合コンへ行っていた。再婚を求めない、いいとこ取りだけの付き合いを希望していたので、お相手は既婚者であろうとなかろうと関係なかった。既婚者相手の合コンの時は刺激を求める主婦友達を引き連れて行き。独身者の男性がメンツの時は女性陣も独身で揃えて。という具合に、まるでやり手ババアの様に合コンを手配し、段取りし、参加することに日々を忙殺されていた。
結論をいうと、約1年間で60回は合コンへ行った。の中で、彼氏として付き合った出会いは2回。ワンナイは5回くらい?かな?
場数を踏み過ぎて初々しさは皆無だったのだと思う。
「うーん、場馴れしてるわー。落ち着いてるもん。」乾杯して10分も経たない内に向かい側の男性から指摘されたこともある。
職場の若い子に教えてもらい、主に合コンの報告を日記としてmixiに記していくこととした。昔から文章を読んだり書いたりするのは好きなので、すぐにハマった。
反響やマイミクの数は関心はなかったのだが、日記にコメントしてくれる人の日記は読みに行ってコメントをして、という繋がりはポツポツと広がっていった。mixiにログインするのが楽しみになった。少しの手持ち無沙汰の時間や何かの待ち時間の絶好の時間潰しでもあった。
その内目的が、日記を書く為に合コンへ行くようになったといっても過言ではないかもしれない。
中でも、初期の頃から毎回コメントをくれる、ある男性とはとても気が合った。ツボを得たコメントだったし、彼の日記は毎回とても面白かった。ちょっぴりエッチでくだらない日記というコンセプトで、毎回、昔の?女の子とのエピソードを書いておりモテる要素も伝わり、女の子のファンがとても多かった。カリスマ性も感じられた。
その彼が、私の日記を面白いと褒めてくれ、私と同じく、ピッタリと気が合うと気持ちを同じくしてくれる。ほどなくして私と彼は日記のコミュニティを立ち上げた。会長は彼で、副会長は私だ。
私と彼のファンを軸にして会員は広がっていった。
携帯を手にし、mixiにログインさえすればそこは彼や仲間達が待っている。本名も住まいも知らない同士であるが、そこには確かな繋がりがあった。日常と別世界であり、楽しかった。
彼との心の繋がりも確固となった頃、友達と一緒に、あるアーティストのライブの為に東京へ行く計画が立った。彼が住む東京だ。彼に会えるかもしれない!いや、会おう!
私は友達より一日早く前泊して、彼と夕食を共にすることとなった。その日の為のワンピースを買い、当日は美容院へ行ってセットしてもらった。
一人で飛行機に乗り、人混みに揉まれ、見よう見まねで電車の乗り継ぎも成功した。
直前に写メの交換は済ませていたが、思っていた通りの男性がそこに立って、笑っていた。
「まんま ○○さん じゃん」
抱き締められそうな勢いで両肩を掴まれ、胸が高鳴った。私は来てよかったと心の底から思った。
夕食は会話も弾み、やっぱり気が合って楽しい時間であった。まるで昔からの馴染みのように落ち着きと居心地の良さを感じられた。
エレベーターの中で自然にキスし、当然のようにラブホテルに泊まった。心も体も一体感を感じられる満足のいくセックスだった。
改札口で手を振る彼の姿はまだ思い出せる。遠距離であることと、彼に家庭があることの障害がなければ、きっと私達は結婚したに違いない。おそらく、ボタンをかけ違えた運命の人であったのだろう。
その後も私達はmixiで交流を続けたが、時代がスマホへと変換すると何だか使い辛い画面となった。ガラケーからの移行が上手くいかなかったのと、mixi側がニーズを読み間違えて迷走始めたのが原因だと思う。mixiの衰退と並走して、私も仲間達もmixiを辞めてしまった。
随分時は経ったが、彼とは今でも毎年、お互いの誕生日おめでとうメールと、お年賀メールのやり取りをしている。
いつか、もう一度会いたい人だ。