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44歳のままの、リーダーへ
今年の、8月のことだった。
私は空港にいて、乗り継ぎ便を待っている間にお昼ごはんを食べようと、洋食店に入る順番待ちをしていた。
母に無事1本目のフライトを終えたことを連絡しようと、機内モードに設定していたスマホを開いた。
すると、1通のメールが届いていた。
どうせ迷惑メールだろうと思いながら確認してみると、送信者は昔の仲間だった。もう18年くらい会っていない、海遊びの仲間の1人。
ん?どうした?
と、不思議な気持ちでメールを開くと【 訃報 】という2文字が目に飛び込んできた。
【 リーダーが亡くなった 】
とのこと。
【 数日前から行方不明になっていて、発見された 】
とのこと。
頭が真っ白になる、とはこういうことか。と思うことさえできず、私はただただ絶句した。
お昼ごはんどころではなかったが、1人ではなかったので、鳥肌が消えない腕のまま、味のわからないごはんを食べた。
2本目のフライトは悪天候や地上のハプニングに見舞われ、別の空港に降り立った。何が起こっても私にとっては訃報の驚きのほうが遥かに大きく、頭の中で、どうして?どうして……と、出口のない【 どうして?】が、ずっと回り続けていた。
隣に座っていた大学生の男のコが、予定の時間に予定の空港に到着できない動揺から饒舌になり、友達から入る地上の情報などを何度も教えてくれた。
そのコは、私にメールをくれた仲間にやたら似ていて不思議な縁を感じたが、やはり縁よりも何よりも【 どうして?】が止まらなかった。
リーダーとも18年以上会っていなかったが、数年に一度、電話をくれていた。
去年の夏の終わりに、
「そっちにキャンプに行くから、そのとき寄るよ」
と言っていたのに、結局その後リーダーから連絡はなかった。
私は、待ってるから早くおいでよ!と連絡しなかったことを心底悔やんだ。
体が大きくて、行動力があって、スポーツが得意で、海が好きで。
とにかくみんなに笑顔と安心感を与えてくれる、最強の存在だった。
老若男女、みんなリーダーが大好きだった。
みんなで集まってワイワイと飲むこともあったが、リーダーはよく1人の時間も過ごしていた。
「今、公園でひとりで飲んでる」
そんな電話が、昔、何度もかかってきた。
仲間の中で私だけ遠くに住んでいたから、今からそこに行くよ、とは言えなかった。
もしかすると、それがわかっていたから、私を選んで電話をくれていたのかもしれない。
1人きりで何かを考えたり、逆に何も考えなかったり、そんな時間が必要だったのかもしれない。
リーダーは亡くなる前、1人の時間をどんな気持ちで過ごしていたのだろう。
ご家族とは交流がなかったから、詳しい事情は何も知らない。
行方不明になった経緯も、発見されたときの様子も、何もわからない。
突然の病死だったのか、そうではなかったのか、それもわからない。
だから今でも時折、【 どうして?】が回りはじめる。
12月22日。
毎年、今日はリーダーの誕生日だな、と思っていた。
私より若いのに、先に旅立ってしまったリーダー。もう年は重ねず、ずっと44歳のままのリーダーの誕生日を、私はきっと来年も思い出す。
リーダー、いつかまた必ず会おうね。
それまで穏やかな気持ちで、どうぞ安らかにお眠りください。