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妄想: 髪の毛はVIPなのか

「髪の毛は死んだ細胞でできています」
と読んだ。
だから一度痛んでしまうと修復されたりしないんだそうだ。

私たちの頭にくっついている、死んだ細胞。
なんだかすごいな。

仮に体内の細胞同士に意志があって話なんかしていたりしたら、この「死後髪の毛化」は人気の話題に違いない。だって、それは死後も生き続ける方法。さらに、スタイリングやトリートメントなども施されるVIP待遇。
これはもう、多くの細胞が一度は体験してみたいに違いない。

「◯◯さんは髪の毛化が決まったんですって
「あらいいですねぇ」
「どんな手を使えばいいのかしら」
なんて、色んな情報やデマが飛び交ったりして。

妄想は膨らむ。

例えばこんな話:
「私、この度髪の毛になることが決まりまして」
そう言って、細胞Aは嬉々として出かけて行った。
頭皮を外に出ると、しかし自らの体は髪の毛ではなくフケだった。
はらり
どこかを掴もうとしても願い叶わず、Aは宙を舞って落ちていった。

またはこんな話:
決めたら一直線の細胞B。目標はいつか毛になること。噂に聞く太陽というものの光を浴び、外の世界を見るのが夢。
惜しまぬ努力が実り、Bは生まれ変わりの日を迎えた。毛根からにゅるりと外へ出て、髪の毛としての新たな一歩
と思ったら鼻毛だった。しかも鼻の穴から2センチほど奥まった所。ほんのり明るい光は見えるけれども、外を見られたのは抜け落ちたその瞬間のみ。

なんか、切ないな。

先のことは分からないものだな。


あ、

よくよく考えてみると、髪の毛の細胞は髪の毛になった時点で死んでいるのだった。ということは、外の世界は見えていない可能性が高い。
だとすると、トリートメントの気持ちよさもスタイリングの格好よさも分からないわけだ。どんな待遇を受けてもえっへんとか思えないわけだ。

なんだ、残念。

それぞれがそれぞれで、髪の毛になるのは一部だけ。それがちょうどいい。

だって、細胞全部が髪の毛になったりしたら、私たちはただの毛玉になってしまうもの。

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