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ただいまイスタンブール 降ってくる鍵とMikail Aslan

ただいまイスタンブール。最後に訪れたのは2019年10月だから、3年半ぶりということになる。羽田を出発して、韓国で金浦空港から仁川空港へ移動し、イスタンブールへ。イスタンブール新空港に早朝5時頃に到着した。

鳩まみれのタクシム広場


毎度お馴染み、ジーザス宅へ移動する。ジーザスはアメリカに亡命したからそこにはいないし会えないのだけど、ジーザス宅には弟が二人と、ジーザスの友人が一人、合計三人が住んでいる。

空港からバスに乗って40分ほどでジーザス宅近くのタクシム広場に到着。バスを降りて、ジーザス宅まで10分ほど歩く。今回は17kgのスーツケースを引きずっているので、凸凹道での移動がちょっと大変。実は急な坂や階段も多くて、スーツケースを持って階段を降りていると、青年がスッと駆け寄ってきて、スーツケースを持ってくれる。そうだった、こんな感じだった、と思い出す。

「俺はアリ。シリアから来たんだ。君はどこから来たの?」と人懐っこげに話しかけてくれる。階段ゾーンが終わっても、「大丈夫、持っていってあげるから」と言ってくれる。ジーザス宅に到着。弟のFatihに電話するも出ず。早朝にメッセージが来ていたけど、そのまま寝てしまったのかな。と思って建物の前で突っ立っていると、さっきのアリが、「これが俺たちのスタイルだよ」と、なんと、その建物全戸のドアベルを鳴らした。「気づいた誰かが建物の玄関を開けてくれるから」とのこと。驚きすぎて笑ってしまった。早朝6時にそれをやるなんで、日本では考えられない。

さらに驚くことに、すぐさま最上階の部屋の窓から鍵が降ってきたのだ。「これで開けろ」ということらしい。

建物のエントランスを解錠し、無事ジーザス宅前に到着。そこで、Fatihに再び鬼電し、ドアの外から「Fatih!」と呼んでみたりして、するとFatih遂に登場!ちなみに、荷物を持ってくれたアリは、Fatihが登場するまでずっと一緒にいてくれて、私の引き渡しが完了すると「またね!」とすぐに去った。こういうことが本当によくある。ありがとうアリ。

成長したFatih

Fatihとの久々の再会。会っていない間に大学4年生になっていて、英語が驚くほど上手くなっていた。そして、私のクルド語の力も少しアップしたのか、彼がとてもきれいなクルド語を話すということにも気づいた。受験勉強をサボってばかりで、兄にやいのやいの言われていた男の子がこんなに立派になって・・・姉心が自然と発動してしまう。

Fatihが綺麗に整えてくれたベッドで少し仮眠をとって、街をぶらついた。

instagramで知った情報によると、今夜は、イスタンブール郊外のKüçükçekmeceという未踏のエリアにある音楽学校で、大好きな音楽家Mikail Aslanという人が新作アルバム発表イベントを行うらしい。当然トルコ語だろうから理解できないだろうけど、Mikail Aslanの生演奏を聴けるのなら、と参加してみることにした。

外は土砂降り。Küçükçekmeceはバスを乗り継いで1時間半以上かかる見込み。持参していたイスタンブールカード(イスタンブール内の交通機関利用のために使う)がすでに無効だということが判明し、とりあえずはバスの利用を諦めてタクシーで向かった。


郊外にある立派な音楽学校

意外に早く到着し、建物の中で待たせてもらうことにした。中に入ると、みんな珍しげながらも温かく声をかけてくれた。英語で話しかけてくれた人Erdalといろいろ話していると、なんとフワ〜っとMikail Aslan先生が通りかかった。Erdalが私のことを紹介してくれる。クルド音楽を勉強していること、新しいアルバムが素晴らしくていつも聴いていること、お会いできてとても嬉しい、というようなことをクルド語で伝えると、Mikail Aslan先生は穏やかな笑みを浮かべてとても喜んでくれた。嬉しい。


イベントがスタート。最前列に座る。もちろんトークの内容はよく理解できなかった。けど、演奏がもう、涙が出るほど最高だった。Mikail Aslanがサズを鳴らすと、一瞬で惹き込まれた。なんだこの音。なんだか祝福されているような気分になった。サズってこんなにいい音がする楽器なんだなぁとしみじみと感じた。そしてゆっくり深く染み込んでくる奥行きのある声。なんて素晴らしいんだろう。

彼が音楽を愛でていて、音楽に愛でられていることがジンジン伝わってきた。

到着早々、こんなに素晴らしい演奏を聴くことができて本当に幸運だったなと思う。

終演後、物販コーナーでMikail Aslanが作曲したほぼ全曲が収録された楽譜を購入した。300円ほどのお釣りがないとのことで、会計してくれた兄ちゃんが「ごめん、釣り銭がなくて、これあげるから、それでもいい?」と新作アルバムをくれた笑。エビで鯛を釣ってしまった。

写真撮影に応じるMikail Aslanのところへ行って、買ったばかりの楽譜ともらったCDにサインをしてもらい、一緒に写真を撮る。終始穏やかで優しい微笑みをたたえ、「ありがとう。とても嬉しかったよ」と言ってもらえた。

Mikail Aslan先生

そんな最高の1日から音楽修行の旅はスタート。いい出会いがたくさんありそうだな。

楽譜

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