Mem û Zînの街 Cizîra Botanへ
昨晩Gernas宅からBêrîvan宅へ帰ると、部屋にまた7〜8人転がっていた。婚約パーティーがあったらしい。
部屋の一角に寝床を準備してくれていて、そこで休もうとするが、誰かが睡眠導入のためのヒーリングミュージックをかけていて、何時間も続く。睡眠に全く導入されずモゾモゾする。そうこうしていると夜中に別の誰かの電話が断続的に鳴る。その中で人々は安らかに眠っていた。安らかでないのは私だけのようだ。
眠れないまま朝を迎えた。いろいろあったのに会いたい人に悉く会えたAmedを離れ、バスでCizrê Botanへ向かう。
寝不足だったこともあり、バスが出るとすぐこっくりと落ちていた。ふと目覚めると、車窓からは一面に広がる眩しい新緑が見えた。Mêrdînあたりだった。
緑と、草を食む羊と、Şivan、あぁクルディスタンにいるんだなぁと感じる。
出発から4時間ほどでCizîra Botanへ到着。今夜はこの旅で初めて、自分で予約した部屋で泊まる。数人の友人が、誰か私を世話してくれる人がいないか探してくれたのだが、あいにく今日はCizîr にいない、ということが重なった。逆に、「そこにいない」という理由以外で、来客を断る人を知らない。
クルド人のMêvandarî(ホスピタリティ、というような意味)に触れると、誰もが驚く。私がクルドという存在に惹かれた第一のきっかけは、このMêvandarîに他ならない。今回の旅でも毎日毎日彼ら彼女らのMêvandarîに守られて、心地よく安全に過ごさせてもらっている。
さて、クルド近代文学において大変重要で最も有名な「Mem û Zîn」という作品がある。クルド版「ロミオとジュリエット」と言われる作品だ。Cizîrにはそのモデルとなった2人が眠る墓があり、公開されている。
「Mem û Zîn」は悲恋を象徴しており、それを元に無数の音楽が生み出されてきた。歴史深いCizîrでMemとZînに会えたということは私にとっても特別なことだ。
もう一か所、訪れたかったのが、「Denjbêjの家」だ。先日Amedのものに訪れたが、ここCizîrにもある。Cizîra BotanのDenjbêjの歌は絶対に聴いてみたく、行ってみるとドアが閉まっている。そうか、今日はメーデーだからか。明日の朝、出発前に訪れることにする。
チグリス川を眺めながら日の入りを迎え、今日はおしまい。
明日イスタンブールへ帰る。