お母さんのTenûr焼きたてナン@Befircan
Nîşan以降の2日間は畑仕事を手伝ったり、ドイツから親の故郷を訪ねて来た女の子と会ったり、結婚式の招待状作りを手伝ったり、ゆるりゆるりと過ごしていた。
今日は朝起きてバルコニーで庭を眺めていると、重そうな鍋を持ったお母さんが家から出てきた。中には羊乳が入っていて、チーズ仕込み部屋に運ぶのだという。「これを置いたら、今からナン(パン)を作るんだよ」。
お母さんについていくと、Tenûr(タンドール)の部屋からモクモク煙が上がっていた。「これもクルドの仕事だよ」と言いながら、超高温になっているTenûrの準備を、着古しのジーンズ一本で巧みに進めていく。
桶いっぱいに仕込まれた生地を熟練の技術でのばし、Tenûrにペタっとはりつけて焼いて行く。Lawşeという薄ーくのばすナンとGeldaというふかふかした食感が残るナンを作る。
いくつか焼いた時点で、「ほら、お腹すいてるでしょ。これ持っていって朝ごはんを食べておいで。食べてからまた戻っておいで」と言って、焼きたてのナンを手渡してくれた。
家に戻ると一番上のお姉さんAysunがバルコニーで朝食の準備をしてくれていた。仕事中のお母さんよりお先に、Aysun、Serdarと3人で朝ごはんをいただく。
Tenûrを使ってナンを作るのはかなり骨の折れる仕事だ。街に出ればどこにでもナンは売られているので、買えば一瞬で手に入る。
しかし、お母さんの焼きたてのナンを食べると、「あぁどんなに大変でも伝承されていく価値があるなぁ」と実感する。チーズにしても同様だ。私はお母さんのチーズの虜になっていて、中毒気味に食べてしまう。
朝ごはんが終わると、Aysunと一緒に、今週末結婚式をあげるAyşeの新居を見にGeverへ向かう。
家具も備品も何もかも新品だ。親戚やお客さんがたくさんくるのが前提なので、リビングは広く、ゲストルームがあり、食器の数もものすごい数だ。
Aysunはリビングに敷かれた新品のカーペットが貧乏くさくて気に入らないと言っていた。どうするんだろう。
寝室で布団にカバーをかけたり、食器を洗って食器棚に並べたり、少し働いたら、みんなが持ち寄った料理でまかないご飯。クスルやサルマ、ポアチャなどがプレートに盛られる。どれも永遠に食べ続けたいほど抜群に美味しかった。
ここでいただくものはどれ一つとっても美味しすぎて、つい食べ過ぎるので、きっと少しずつ太っている。わかっていてもやめられない。
たらふくいただいた後に少し働いてまたチャイの時間があり、「何か歌って」とリクエストされたので、みんなで新婦のAyşeのために歌を歌った。
金曜日にはイスタンブールに帰るので週末の結婚式には参加できない。みんなが「行かないで」「ここにずっといて」と言ってくれるたびに切ない気持ちになる。