Alîとお父さんの再会@Befircan
朝ごはんを食べたあとは、バルコニーで庭を眺めながら1人でボーッと過ごす。聞こえるのは鳥のさえずりと風に揺れる木々のサワサワという音だけ。GurzoとŞîno(村の犬)も木陰で気持ち良さそうに寝そべっている。
村の人たちはみんなこの美しいBefircan村を愛している。ここで過ごしていると、ここから出て行きたくなくなる気持ちがわかる。
村の学校の年長組の卒園の日というので、ちらっとのぞきにいったり、隣の家の孫娘とお絵描きをして遊んだり、従兄弟のCivanとピスタチオを食べながら話したり、ゆったりと時間がすぎていく。
あれこれ用事をしていたSerdarが家に帰ってきて「AlîとRubarとお客さんがくるよ」と教えてくれる。庭でチャイを飲みながらのんびり彼らを待つ。しばらくすると彼らはやってきた。
Alîは到着するとすぐにSerdarのお父さんの元へいく。
「おじさん、Alîです。覚えていますか?Alîですよ」
返事はない。ただ、お父さんは話しかけるAlîのことをじっと見つめていた。
お父さんは5年ほど前にアルツハイマーを発症し、徐々に進行して、1年前頃から歩くことも話すこともできず寝たきりになった。Serdarとお母さんとで介護している。
毎日決まった時間に水や栄養剤や薬を投与したり、おむつを変えたり、入浴介助をしたり、夜中にも何時間かおきに起きている。
Alîが以前にお父さんに会ったのは一昨年。その頃はまだ会話をしていたのだという。
言葉はなくただじっと見つめてくるお父さんを見るAlîの悲痛な表情を見て、たまらない気持ちになり、そこにい続けることができなくなってしまった。
なんとか持ち直して庭に移ったみんなに合流すると、Alîが「わかるよ」と目で話しかけてくれる。
みんなでチャイを飲みながら、Alîたちが連れてきたゲストが他愛もない話をしているが、耳に入ってこず、チャイのおかわりの世話係をすることによって気を紛らわせていた。
Serdarとお母さんが来客の相手をしているので、時々お父さんの様子を見に戻り、いつもそうするように「お父さん」と話しかける。しばらく青い目でこちらを見つめてまた元に戻る。
Alîたちが帰ったあとも、ずっとAlîの悲しげな顔が目に焼き付いていて、残り続けた。
↓写真は本文とは関係のないこの日の夜の話。目前に迫った弟Sedatの婚約披露式のための準備について。
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