最後の歌レッスン@イスタンブール
今日はレッスン最終回。
“Şamîranê”という歌に取り組む。”Stranên Govend”ダンスのための歌。Seîd Beg統治時代、王妃Şamîranが治水工事のために700人の労働者を雇い、それぞれに100の金を与えた、という内容のお話。Seîd Beg時代の繁栄を讃えている。歌詞は共通で、少なくとも4つ、メロディー(マカーム)の異なるバージョンがある。
どのバージョンも短いフレーズの繰り返しで、一見シンプルに思えるが、ひとたびAliが歌えば、たちまち歌が踊り出す。先日のコンサートもそうだったが、Aliは歌に色を与え、命を与える人だ。
Gotin û Vegerînという方法で2人で交互に歌っていくとどんどん盛り上がって楽しくなってGovendの会場にいるみたいになった。そしてレッスンを終えた。
「大きな関心を持ってレッスンに来てくれてありがとう。クルド人に教えてもこんな風に歌えるようにはならない。自分にとってとても誇らしいことだ。本当にありがとう」と言ってくれた。
「あなたは本当に偉大な先生です。本当にありがとう。無数の歌があって、まだまだ学びたいことがたくさんあるので、日本でもオンラインでレッスンを受けられますか?」
「もちろん!君が望むとき、望むこと、なんでもやろう」
今日も1時間後からはグループレッスンがあるので参加させてもらう。実はグループレッスンの受講者の半分くらいは音楽家で、めちゃくちゃ歌がうまい人が何人かいる。歌を仕事にしているが、民謡を学ぶためにクラスに参加しているのだ。そんな人たちと歌うのもまた楽しいし刺激になる。
今日も引き続き7月のコンサートのためのリハ。”Nîrecot”という労働歌をAliの指示するアレンジで歌っていく。Aliがソロで歌うところ、大勢で歌うところ、それぞれがフリーで語りを入れるところ、そのアレンジまでもが最高で、一気にミュージカル調に仕上がった。楽しくなりすぎて、うきうきしすぎて、コンサートでこの曲に参加するためだけに帰ってきたい!と思ったほど。
こうして3時間のグループレッスンを終え、合計5時間歌い続け、喉が死んで、イスタンブールでの歌レッスンは終了した。
人々に親しまれてずっと受け継がれてきた歌の数々に触れて、受け取ったバトンを今まさに掴んで走っているAli Tekbaşから直に指導を受けられたこと、それによって、背景にある知識を得られたこと、特別な技術を学べたことは、本当に本当に貴重な経験になった。
いつかAliと一緒にコンサートが開けたらいいなと思う。
明日の早朝、Aliは奥さんのRubarと幼い息子Ronîが待つGeverへ飛ぶ。Ronîロスが激しいのでとても嬉しそうだ。「ご安全に!」と見送って別れた。
そういえば、途中Aliが鼻をぐずぐずさせていたのでティッシュを一枚あげた。すると、「え、なんだこの感触!」と感嘆の声をあげていた。「鼻セレブ」。少し使って、カバンに大切にしまっていた。そしてグループレッスンのときに、「なぁみんな!えりかにもらったこのティッシュすごいよ。触らせてもらいな!これ死ぬまで大事に使うよ」みんなに触らせると、「うおーすげー!シルクやん!」という反応。この時点ではAliにあげたのは、たった一枚の鼻セレブ。こんなリアクションが起こるとは想定していなかったので新鮮でおもしろく、Aliにポケットサイズの鼻セレブを贈呈しておいた。深々とお辞儀をして赤子を抱くように受け取る。次来るときは、何個かパックになったものを土産にしよう。
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