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Ali Tekbaşのライブ 太陽神は世界を作り変える@イスタンブール

昼過ぎからサズのレッスン。

レッスンのためにも、帰国してからの演奏のためにも、楽器がないととても困る。

手頃な楽器を購入しようと、Şişhaneからカラキョイへ下っていく坂道に林立している楽器屋のうち、三弦サズが置いてあるのが見えた小さな店に入ってみる。

かわいらしいおじいさんが暇そうにしていて、いろいろ試奏させてくれる。私が弾くのに合わせて片面太鼓で参加してきてセッションが始まったりして、それだけでかなり楽しかった。

正直どの楽器も「悪くない」くらいな感じだったが、一番気に入ったKopuzがいくらか聞いてみると、思ったより安かったので買うことにした。するとおじいさんが喜んで、交換用の弦のセットをポイポイっとつけてくれた。

買ったばかりのKopuzを持ってレッスン。ミズラブ(ピック)ではなく指で弾くのに少しずつ慣れてきてより楽しくなってきた。新しい技術ばかりなので練習するのもまた楽しみだ。

レッスンを終えて、今夜はイズミルのバンドAhuraのコンサートがあって、我が師Ali Tekbaşがゲスト出演していることになっているのでもちろん観に行く。

会場につくと、「えりか!元気?こっちおいでよ!」と声をかけてくれたのはLaWjeのパーカッショニストImran。Imranの太陽っぷりもすごい。本当に優しくて穏やかな人だ。

一緒に来ていた友達を紹介してくれる。すると、うち一人が日本在住の友人Muratの幼馴染だった。狭い!狭くなった!

コンサートが始まり、一部はAhuraのみの演奏。打楽器メインのバンドで、ダフが6人、ドラム、ダラブッカ。そこにベース、ギター、ケマンチェ、タンブール、ウード、ボーカルなどが加わる。正直なところ、演奏自体も、曲のアレンジも、ん〜という感じで進んでいく。

Nexşê Mîrzoをやるというから、お!と思ったが、無駄なテンポの変化をつけたアレンジのせいで曲の良さが感じられず残念だった。

二部が始まり、Aliが登場。一曲目は”Delala Dilê Min”。大好きな曲だ。曲自体もLaWjeのアレンジも素晴らしい一曲。Aliが歌い始めると明らかに空気が変わった。聴衆のギアが何段階も上がった。それまでの「聴いている」という空気から「参加している」へと変化した。



二曲目”Ez Xelef im”、三曲目”Werne Rayê”、どれもみんなが知っている、Botan(現Cizireあたり)やBehdînan(現Dohokあたり)地域の民謡だ。

完全に人心を掌握し、太陽神は世界を作り変えた。最後はみんな席を立ち、手をつないで踊り出す。太陽神もステージ上で、もう一人のゲストボーカルの女性の手をとって踊りだす。

圧倒的な声の力と、人々を巻き込むパフォーマンス。これがプロフェッショナルのステージだと心底感動した。

終演後、İmranたちはAliを待つようだったが、23時近くになっていて、帰宅1時間以上かかる私は先に帰路につく。

帰り道でAliに「本当によかった。感動した。Dengê te sax bît!(声を讃える言葉)」と簡単にメッセージを送った。すると、しばらくして、「ありがとう!ステージからえりかが見えたよ。どんな風に良かった?」と返ってきた。おー!良かったポイントを掘ってくるのか!意外だな。

「あなたのパートが、本当に、一番良かった。世界を作り変えた。聴衆の心が開いたことが明らかだった。あなたのエネルギーは太陽みたいだった!」

こっそり太陽神と崇めていることを本人に告げたようなものだ。

Aliは敬意を表す美しいクルド語で礼を言ってくれた。

技術があって、うまい歌い手は星の数ほどいる。昨日出演している中にも「ボーカリスト」はたくさんいて、全員うまかった。でも、人を幸せにする歌い手は、それほどたくさんいるわけじゃない。

師の歌によって幸せな1日になった。

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