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桜の散り際
東京はもうすぐ桜が綺麗な新緑になろうとしています。
先週、ある演出家Yさんが急逝したというニュースが私のSNSに飛び込んできました。
15年程前に養成所にいたときにお世話になった方。
私が行きたかった進路で、1年後にはこの方の演出で卒業公演を行うという全日制のクラス。
私はこのクラスに2回落ちた。
1度目は、1年後に再挑戦するために同じ全日制の入門的なクラスに進んだ。
2度目は、本当に落ち込んで自暴自棄になった。誰も信じられなくて、逆に沢山周りの人も傷つけるくらい。そして、そのクラスを諦めて、別のカリキュラムで演技に向き合うことにした。結果、その際にお世話になる演出家Kさんが私の恩師となった。
という訳で私はYさんからは弾かれた存在と自分で思っている。当時よく私と仲良くしてくれた友人は、「きっと、あなたとYさんは太陽と月なんだ」と言ってくれた。役者として今必要な存在ではないのだと。今ならその言葉はとてもよく分かる。けれど、考えが幼い私にはその言葉の真意が分からず、進路を絶たれた絶望感の方が強かった。
そして、Yさんは暫く養成所の中心的演出家として沢山の作品を手がけたが、私はオーディションを一切受けなかった。もう興味が別に移ったということもあるが、単に傷つきたくなく避け続けた感もある。
とはいえ、同じ養成所内にいるので、友人が多数彼演出の作品に出勤し、何度も観ている。嫌いではない、むしろ好きな演出だし、悔しいと思ったこともある、羨ましいと思ったこともある。でも、最終的に離れたのは他でもない自分だ。
そんな思い出のあるYさんの訃報。
最初、彼を恩師と慕う友人達のSNSでのつぶやきを、同じ熱量では捉えられなかった。しかし、頭の中で情報が反芻される度につい思い出を掘り起こしてしまう。
演出された舞台の好きな場面、代講で来てくださったときのレッスン、その中にいた仲間が彼の作品でかけがえない存在になったこと、柔らかい笑顔や言葉…やはり存在していた方が突然いなくなってしまうという事実は辛い。
そのニュースを聞いた2日後、私の恩師と言える存在のKさんと、そこに集う懐かしい方々と会う機会があった。いつまでもそこに存在してほしいという愛おしい空間に包まれ、激務の仕事後に無理してでも行けてよかった。
その帰り道、坂本龍一さんの訃報を知った。
桜が散り始めた先週の出来事。
今私が生きていて、沢山の経験をさせてくれて、ありがとう。出会ってくれた全ての人へ。