バルセロナ公式テストから:ルーキー、フェルミン・アルデゲェルがMotoGPマシン初走行後に語ったこと
2025年シーズンは、小椋藍を含めて3名のライダーがMotoGPクラスデビューを果たす。ソムキアット・チャントラ、そして、フェルミン・アルデゲェルである。
今回は、アルデゲェルの基本的なプロフィールと、2024年11月19日に行われたバルセロナ公式テストでのコメントを紹介したい。
2005年4月5日生まれのスペイン人。2025年シーズン開幕時点では、19歳である。余談ではあるが、2024年シーズンのルーキーだった、ペドロ・アコスタも、2024年の開幕時点ではまだ10代で、19歳だった。アコスタ同様、アルデゲェルもまた、マルク・マルケスが持つ最高峰クラスにおける最年少優勝記録(20歳63日)を更新する権利を有していることになる。アルデゲェルは、第7戦イギリスGPまでに優勝すれば、マルケスの記録を更新する。
近年のMotoGPへのルートとしては、FIMジュニア世界選手権(スペインを中心に開催される選手権。以前はFIM CEVレプソル Moto3ジュニア世界選手権という名称だった)、レッドブルMotoGPルーキーズカップなどで成績を収め、世界選手権Moto3にステップアップしていくのがスタンダードだが、アルデゲェルが歩んできた道のりは最近のライダーとしては特殊である。
2020年、現在のパーソナル・マネージャーであるエクトル・ファウベル(125cc、250cc、Moto2、Moto3クラスに参戦したスペイン人ライダー)のチームから、Moto2欧州選手権と混走のストック600に参戦し、チャンピオンを獲得。2021年はMoto2欧州選手権に参戦するとともに、ダブルエントリーで、MotoGPに併催される電動バイクレースMotoEにも参戦した。なお、Moto2欧州選手権ではチャンピオンを獲得している。
個人的には、2021年の電動バイクレースMotoEでの活躍も印象に残った。MotoEはルーキーが活躍するのが難しいカテゴリーなのだ。MotoEは電動バイクによって争われる選手権のため、内燃機関のバイクとは走らせ方が異なっている。コーナー中間でグリップがあるため、そのアドバンテージを生かし、コーナリングスピードをキープすることが重要だが、同時にアクセルを開けはじめたときにともなう大きなトルクもうまく使わなければならない。MotoEマシンの特性を使った走り方が必要だ。
そして、MotoEはこの走り方に慣れるためのレースウイークの時間が非常に短い。2021年当時、MotoEの2回のプラクティスは各30分のセッションだったが、バッテリーが30分間もたないため、実際の走行時間は20分程度だった。レースの周回数も、10周以下。というわけで、ルーキーにとって、MotoEマシンに慣れるのは容易ではない状況なのだ。
ところが、アルデゲェルは優勝や表彰台こそ獲得できなかったものの、ベストリザルトはオーストリアGPの4位。オーストリアGPではポールポジションを獲得している。その元気な走りと適応力は、強く印象に残った。そして、翌年の2022年からは世界選手権Moto2クラスに参戦するスピード・アップのライダーに起用されている。
Moto2では2023年シーズンの活躍が顕著で、イギリスGPでの初優勝を皮切りに、シーズン終盤のタイGPから最終戦バレンシアGPまで、4連勝を果たしている。
2024年3月18日、ドゥカティ・コルセがアルデゲェルと2年契約を結んだと発表したのはご存知の通りだ。2年契約だが、さらに2年延長のオプションが含まれている。
アルデゲェルのバルセロナ公式テスト
それでは、2025年、グレシーニ・レーシングMotoGPからMotoGPクラスに参戦するアルデゲェルは、バルセロナ公式テスト後の囲み取材で何を語ったのだろうか。
ドゥカティのデスモセディチGP24を走らせたアルデゲェルは、ベストタイムは1分40秒564で、20番手だった。ルーキーとしてはトップである。なお、小椋は21番手、チャントラは23番手だった。
「何もかもすごかったよ……、加速もスピードも。でも、いちばん重要だったのはブレーキングポイントだと思う。ブレーキングポイントがすごく深いんだ。それが1周目からわかって、難しかったね」
「それから、タイヤが全く違っている。このタイヤに自分のライディングスタイルを適応させないといけない。これはいいことだよね。バイクも違うんだから。僕は全部に適応しなくちゃいけないんだ」
「(ライドハイトデバイスは)1周目から使ったよ。このデバイスを自動的に使えるくらいにならないといけない、と思ったからね。1周目はクレイジーだったよ」
アルデゲェルによれば、「少し腕上がりの症状があり、手の手術の影響があった」と言う。手の手術というのは、2024年タイGPの転倒で骨折し、手術を受けた左手首のことだ。それでも58周を走っている。
このように、アルデゲェルがバルセロナ公式テストの囲み取材で語ったのは、初走行後ということもあったのか、また、1日走っただけということもあったのか、まだ控えめなコメントだった。
ただ、アルデゲェルのポテンシャルや適応力を考えると、2月のセパンでどんな走りをするのか、興味は尽きない。
トップ画像©Gresini Racing
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