誰も教えてくれないツバメのリアル
燕が、うちに巣を作りました。
ここから先、あまりいい話ではありません。
7月5日。チュン子とチュン太が何日もかけて完成させた巣に、卵が4つ産まれました。
大事に、自分達の羽で包んで。
パパが、こっそり盗撮。本当に可愛くて愛おしかった。
7月8日、何故か卵が3つに減り
一家でパニックに陥りました。
その後、あっという間に1つまで減ってしまい…
チュン子を手に入れたいチュン吉が、卵を盗みに来て、遠くに捨てているようだと分かりました😭
夜、2匹で、あれ?あれ?と
卵が1つになってしまった巣に留まり、何度も首をかしげていたチュン子とチュン太に、本当に胸を痛めました。
卵を失った雌はまた発情する。
そのために卵を奪ったチュン吉
翌日の昼から夕方にかけて、チュン子がチュン吉から逃げ惑い、それをチュン太が、必死に追いかける、猛スピードのチェーシングが見られました。
普段、滅多な事では怒らない夫も、
「下衆の極みだ」「焼き鳥にしてやろうか!」と、チュン吉に対して怒り心頭でした。
その夜、私は何度も目を覚ましました。
チュン吉を、虫取り網で捕ろう。
捕って犬山あたりで放とう。
だけど冬になれば、フィリピンやマレーシアまで自力で飛んでいく鳥です。
きっと1日か2日で、子供を殺しにまた戻って来るでしょう。
その執念を想うと
恐ろしくて、恐ろしくて
私は1人で嘆き、夫に抱擁を乞い
息子を抱きしめて
無理やり2人の間に挟まる事で
狂いそうな夜を乗り越えました。
ふと、考えたのです。
もしかしたら去年は、チュン吉がチュン子の夫だったかもしれない。
昨年のペアと日本に着くタイミングがズレてしまう事で、繁殖のペアが変わる。燕界では、よくある事だそうです。
思えば巣づくりの段階から、チュン吉はチュン子に付き纏っていました。
「ごめん。私はもう、他のひとのお嫁さんなの」
だけど、それは誰にも分からない。そして、何事も子供を殺していい理由にはならない。
どんよりと重たい頭を抱えて起きた朝
つばめの巣では、一つだけ残された卵を、チュン太が温めていました。
ベランダから、チュン子と…チュン吉が見えました。
チュン吉を、交代で見張っているのかな
寝ぼけ眼で眺めていると、飛び立っていくチュン吉を
チュン子が追って飛んでいきました。
見るからに穏やかに。
いかにも、牧歌的に。
私は悟りました。
チュン子は、チュン吉と夫婦になったんだ…
昨日まで大嫌いだった男に
何事もなかったように、付いていく女。
昨日までの夫の目の前で。
なんてやつだ…だけど、これが自然なんだ。
急激に、私の中で冷めていく熱がありました。
あの時ほど無表情になれる瞬間は
人生に於いて、そう何度もないはずです。
その日の夕方、雄が増えていました。
チュン助です。
4匹で、何やら会話をするかのように、歌うかのように電線で鳴き続ける様子は
もはや微笑ましくも何ともありません。
もちろんこの時も、私は無表情で電線を見上げていました。
プログラムされた「強い子を産み育てる」というミッションを、生きるしかなかったチュン子。
2日ほど卵を温めながらチュン子を待っていたチュン太も、とうとう巣に戻らなくなりました。
彼もきっと私のように、冷めていく熱をもてあまし、そして全部、捨てたくなったのだと思います。
一つ残された卵を保護しようか…夫と話し
人間が野生の燕を育てる方法をネットで調べるも
・まず雛の段階でほとんど死んでしまう
・奇跡的に育っても、野生に還れず死んでしまう
今、あの綺麗な巣の中で、化石になるのを、待っています。どうか、魂が安らかでありますように。
祈ってください🙏
私はこの出来事から学べる事を探し、生きていきます。
長文お読みくださり、ありがとうございました。
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