Bedroom Talk♡小笹大輔サンで妄想
「ちょ..あぶないよ。!」
後ろから腕をぐいと引かれた。
歪んだ景色から一気に現実に引き戻される。
あの日私は疲れ切っていた。
表ではいい顔をしていてもみんな腹の中では黒い感情が溢れていて、誰も信じられなくなっていた。
全部なくなっちゃえばいい、私なんてこの世界からいなくなればいいと思っていた。
信号が赤になった横断歩道を、すごいスピードでトラックが横切ってくる。それを分かっていて足を踏み入れた、はずだった。
なのに。
邪魔しないでょ..
ようやく焦点の合った目で、声の方向を見上げる。
サラサラの髪、綺麗な瞳、長いまつげが近くにあった。
こんな風に言ったら、「女の子を褒める時の言葉みたい」って大輔は嫌がるだろうか。
「徹夜続きだったから、ちょっとふらついただけです。もう大丈夫なので、、」
死のうとなんかしてないから、と言い訳をして急いで去ろうとする。
死のうと思っても結局死にきれない自分が恥ずかしかったから。
大輔はなんでもお見通しだった。人の気持ちを察して共感する力が高いというのだろうか。
だから、簡単には心を開かないけれど、だからこそ仲良くなった人には情が深い。
「1人で居られない夜があったら、連絡して。」
そう言ってさっと電話番号を書いた紙を渡し去って行った。フワッと金色の髪が靡いた。
なぜ初めて会った私に優しくしてくれたのは分からないけれど、
その高すぎないでも確かな温度の優しさが、心地よかった。
それからは大輔の部屋に行くことが多くなった。元カレとは違って、仕事終わりに急に連絡しても、大輔は嫌がったりしなかった。
紅茶でいい?と迎え入れてくれ、
眠れないと言うとそっと肩を抱いてくれる。
吐き出せないモヤモヤに押しつぶされそうになっていると静かに話を聞いてくれる。
大輔は一晩中一緒にいても、襲ってきたりしなかった。友達以上恋人未満というのか、関係に名前がない私達。私だけ癒してもらうばかりで、彼に何も与えられていない。
「なんでこんなに優しくしてくれるの?」
ある時唐突にそう聞いた私に、
「んー..なんか自分に重なるからかな。」
と彼は言った。
"俺は音楽のことしかわからんけぇさ、何も言えんけど" いつもそう言う彼は、詳しくは知らないがギタリストらしかった。
「そうだ。○○に聴いて欲しい曲が完成したんよ。」
-このまま独りきり
誰にも言えない言葉を抱えてるなら
まだ強くなれそうにない 自分のことも
愛せるように 話をしようよ-
そう歌われた歌詞とメロディーは、大輔が作ったものらしい。
全てが私のことのようで、聴き終わる頃には自然と涙が溢れていた。
「好きやけぇ、これからも側にいてくれますか?」
私は返事をするように、やわらかく唇にキスをした。