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「いやいやえん」

児童文学の名作であり、物心ついた子どもの頃、初めて読んでから、親になった今この時まで、自分の人生の傍らにずっといてくれたと思える物語。

中川李枝子さんと山脇(大村)百合子さんの作品といえば、やっぱり絵本「ぐりとぐら」シリーズは外せないし、図書館のおはなし会で読んでもらったことは子ども時代の楽しい記憶として残っている。

そして、絵本ではなく、児童文学として初めてひとりで読んだのは、真っ赤な表紙が印象的な「いやいやえん」。

絵本は、横長だったり縦長だったり本のサイズは大きめで、文字もひらがなで絵がメインだけど、「いやいやえん」は児童文学だから、大人が読むみたいなサイズ感、そして、文字は縦書きで漢字もあるけど、親切にふりがながふってあるし、なんと本に紐状の栞(スピンって名前)がついている。

子ども心に、この本が読めることがなんとなく誇らしい気持ちになったものだった。

「いやいやえん」には、全部で7つのお話があるけれど、主人公のしげるは、なかなかのきかん坊でわがままで、いわゆる「いい子」とはほど遠いけど、しげるがそのあり余るパワーのまま、自由に動き回ってくれるからこそ、物語に色がつき、夢中になってページをめくってしまうのだ。

大人になってから、読み返してみたら、くじらとりのお話は、ミヒャエル・エンデの「モモ」の中で、円形劇場でモモの帰りを待っていた子どもたちが、暴風雨の中、航海ごっこをする様子を思い出させてくれた。

こうして物語は繫がっているんだななんて、なんとなくうれしくなる。


子ども時代に、中川李枝子さんと山脇(大村)百合子さんの作品を読むことができて、自分の中に、なんにも気にせずに空想したり、ほっとひと息ついたりできる大切な居場所のようなスペースが確実にできたんだと思っている。

その場所は、年齢とか役割とか関係なく、行きたくなったら心の中でするりと行くことができる。

大げさかもしれないけど、そんな居場所があったから、自分はこれまで生きてこれたんだなと心から思う。

中川李枝子さん、本当にありがとうございました。
すてきな作品たちのおかげで、自分の中の大事な子ども心(のようなもの)を手放さずに、自分なりに大事にしてこれた気がしています。

作品を読んでいる間は、安心してその物語の世界に入りこむことができました。
この先もずっと、読み続けていきます。

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