ジョン・ル・カレ
年齢は違えど、同じ時代に生まれてよかったと思う作家が何人かいます。
その一人が、英国の作家のジョン・ル・カレです。
スパイ小説が有名なその作家の存在を知ったのは、同じ英国生まれの作家ジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記第5部「剣より強し」で主人公が妻に推薦した作品「寒い国から帰ってきたスパイ」によるものでした。
どうしても気になって、「寒い国から帰ってきたスパイ」を手にいれて読んだところから、私の読書人生にジョン・ル・カレの作品は欠かせないものとなっていきました。
特に好きな作品は、1970年代の「スマイリー三部作」と呼ばれる長編3作品。
「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」、「スクールボーイ閣下」、「スマイリーと仲間たち」は、すべて長編で登場人物もたくさんで誰が敵で誰が味方だったか?と頭がパンクしそうになったり、この描写がなぜあるのか?と不思議に思ったりしますが、読み終わると、緻密なプロットに感動すら覚えます。
また、主人公の老スパイ、スマイリーをはじめとする登場人物たちの豊かな人物像もとても魅力です。
仕草ひとつで登場人物の性格を表現していたり、一読後に読み返すとそんな発見をする楽しみもあります。
とりわけスマイリー三部作の中で自分の中で一番好き(亡くなったら棺に入れてほしいくらい!)なのは「スマイリーと仲間たち」。好き過ぎて、ネットの古本屋さんで版数が若い旧訳のハードカバーを入手してしまいました。
↓は文庫版。新訳もあり。
もうすぐ、ジョン・ル・カレがこの世を去った日がやってきます。
1960年代~2020年までの作家としての活動期間中に、私が作品を知ってからおそらく15年弱くらい。
それでも、同じ時代に生きて、これまで刊行された作品を読むことができ、新刊を首を長くして待つことができたことが、今となってはなんて豊かな経験だったのか。
有名な作品はスパイ小説ですが、作品の根底にあるのは、ジョン・ル・カレの人間と社会に対する深い観察力や洞察力であったと文芸評論家の方が新聞にて話していましたが、まさにそのとおりだと感じてます。
もう、新しい作品を読むことができないのが残念でなりませんが、これまでの作品をこれからも大事に何回も読んでいきたいと思います。
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