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「限りある時間の使い方」
「時間が足りない」
「時間に追われている」
「時間を効率的に使おう」
これらの表現は、日常の中でまあ割と使われていたり、自分も心の中で思ったりしている。
でも、たまにふと「そもそも時間ってなんだっけ?」と思ってしまうことがある。
本書のイントロダクションにこう書いてあり、薄々そうじゃないかなと思っていたけど、やっぱりそうだったのか!と納得した。
本書は、時間をできるだけ有効に使うための本だ。
ただし、いわゆるタイムマネジメントの本ではない。
これまでのタイムマネジメント術は失敗だらけだった。そろそろ見切りをつけたほうがいい。
時間がぽっかりと宙に浮いたような今こそ、時間との関係を再考する絶好の機会かもしれない。先人たちが直面してきた問題を現代に当てはめてみると、ある真実が明らかになる。
生産性とは、罠なのだ。
オリバー・バークマン 著
高橋 璃子 訳
イントロダクションより
子育てのために時短で働いていることにより、日々の仕事に時間制限がある。
効率的に仕事するためタスク管理し、すぐに返信できるメールはちゃちゃっと返信して、カテゴリ分けしたメールボックスに保存(自動仕分けルールも活用)。
複数の案件の想定タスクを設定した上で、関係資料を保存したり、たたき台を作成しておく。
スケジュールを確認し、部下の業務進捗を確認し、必要に応じて声をかけて、現時点の状況や今後の対応方針などを共有してもらう。
上司にも、情報共有する必要がある場合は、要点を整理し、できる限り簡潔に報告するなどなど。
なんだか、書いていて疲れてきたけれど、まぁとにかく対応することが増えることのほうが多く、減ることはあまり少ないのが現状だ。(あくまで自分の主観だけど)
なので、本書の第2章「効率化ツールが逆効果になる理由」に、こう書かれてあり、「まさにそうなんです!」と心の中で叫んでしまった。
それに比べて僕たちは、つねに不安と焦燥に駆られている。
どうやっても終わらない量の仕事を抱え、途方にくれている。
(略)
もう無理だと感じるのも当然だ。
なぜなら、厳密に論理的にいって、無理なのだから。
自分ができるよりも多くのことをやらなければならない。そんなの不可能に決まっている。
オリバー・バークマン 著
高橋 璃子 訳
第2章より
もう、腹をくくって現実を直視しようと思う。
「頑張ればなんとかなる。」なんて幻想だ。
(こういう精神論的なことを真面目な顔して口に出す上司は本気でそう考えているのだろうか?)
本書の帯にあるとおり、平均寿命の80歳くらいまで生きると仮定して、人生はたった4000週間なのだから。
人生を生きはじめるための5つの質問
質問1
生活や仕事のなかで、ちょっとした不快に耐えるのがいやで、楽なほうに逃げている部分はないか?
(略)
心理療法家ジェイムズ・ホリスは、人生の重要な決断をするとき、「この選択は自分を小さくするか、それとも大きくするか?」と問うことを勧める。
そのように問えば、不安を回避したいという欲求に流されて決断するかわりに、もっと深いところにある目的に触れることができるからだ。
たとえば、今の仕事を辞めるかどうかで悩んでいるとしよう。そんなとき「どうするのが幸せだろうか」と考えると、楽な道に流される。あるいは、決められずにずるずると引きずってしまう。
一方、その仕事を続けることが人間的成長につながるか(大きくなれるか)、それとも続けるほどに魂がしなびていくか(小さくなるか)と考えれば、答えは自然と明らかになるはずだ。
できるなら、快適な衰退よりも不快な成長をめざしたほうがいい。
オリバー・バークマン 著
高橋 璃子 訳
第14章より
ここ数年、仕事についてずっと頭の中でグルグル考え続けてきたけれど、本書に書いてあるとおり、無意識に楽なほうに逃げてたかもしれない。
それでも、魂がしなびていくのは真っ平ごめんだし、「あの時、決断していれば…。」と後悔したくないから、不安はあるけど自分で道を拓いていこうと思う。
***
大好きでずっと読み続けている羽海野チカ先生の漫画「3月のライオン」13巻で、主人公であるプロ棋士の桐山零くんの対戦相手であった滑川さん(常に喪服スーツ着用)が、実家の葬儀屋さんを継いだ弟さんのお手伝い(ご葬儀の準備)をしているシーンでこんなやりとりがある。
「どうして人というのはこんなにも忘れっぽいんでしょう。」
「こんな風にたくさんの人生の最後を見送って来ているのにどうしてもっともっともっと切迫感を持って生きられないんでしょう。」
「―これで私死ぬ時にちゃんと『ああ生き切った』―――と思えるのでしょうか…」
「『生きる』って事についてなら僕思うんです。」
「『自分もいつかは死ぬんだ』って事を忘れて呑気に日々を送れてしまう事…それって人間の持っているちっぽけな権利のひとつなんじゃないかなって。」
13巻より
いつかはこの世とさようならしなくてはいけない時が必ずくる。
わかっているのはそれだけだから、生きているうちは自分らしく生きて行くために、そろそろ次の一歩を踏み出そうと思う。
「限りある時間の使い方」を今この時に読むことができて、本当に良かった。