障がいのあるピアニストとヤマハの最先端技術が、崇高で素晴らしい音楽を生み出した奇跡のコンサート『だれでも第九”』
12月21日、サントリーホールで奇跡が起きました。ヤマハが最先端の技術を使って音楽家たちの情熱を引き出しました。生まれつき欠指の障がいを持つ東野寛子さん、先天性ミオパチーという筋肉の難病で身体を動かすことが難しい古川結莉奈さん、生後間もなく脳性麻痺と診断され両手足に障がいがある宇佐美希和さん。今回のコンサートを彩る最高のピアニストたちです。
今回、彼女たちに最高の演奏を奏でさせた裏の立役者は、ヤマハの最先端技術である「だれでもピアノ」。これは、単なる自動演奏装置ではありません。ピアニストが鍵盤を弾くとその旋律に合わせて伴奏やペダルは自動で追従していくものです。1970年代に生まれたテクノポップはコンピューターが制御するリズムにアーティストが合わせるという表現方法でした。しかし「だれでもピアノ」では、全く違う発想で、アーティストにコンピューターが合わせるという技術のイノベーションが実現しました。このアイデアの発端は、ショパンのノクターンをひとりで弾きたいという車椅子の高校生の願いを叶えたいというヤマハの強い想いの結晶です。
コンサートの楽曲は、ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調というベートーヴェンが残した最後の交響曲であり、通称「合唱交響曲」または「歓喜の歌」として知られています。第9は通常の3楽章構成ではなく、第1楽章、第2楽章、第3楽章の後に合唱が加わる第4楽章で構成されています。
コンサートの幕を開ける第1楽章と第2楽章では東野寛子さんの繊細なメロディーがオーケストラの壮大な響きに溶けていきます。第3楽章では古川結莉奈さんがベッドに横になったままピアノに身を寄せ、右手人差し指の関節を使い力強いメロディーを表現します。左腕は、小刻みにリズムを刻んでいます。第4楽章では東京混声合唱団が加わり宇佐美希和さんが叙情的にメロディーを弾き込んでいきます。複雑な構成の楽曲にも関わらず宇佐美さんはピアノパートが無い時にもメロディーを口づさんでいます。3人の音楽を楽しんでいる姿を見て、こんなに美しい表情があるのかと驚かされました。
音楽は協調であり、一緒に演奏して、互いに作り上げていくものだというマイルスの言葉が頭をよぎります。ピアニストたちが「だれでもピアノ」と対話しながら音楽を奏で、横浜シンフォニエッタのオーケストラの演奏とピアノの演奏を指揮の米田覚士さんが巧みな対話で作品に仕上げていきます。壮大な音の世界の中で、ピアニストたちが奏でる音の繊細かつ力強く、私は完全に心を奪われてしまいました。
交響曲第9を作曲したベートーヴェンは難聴に苦しみながらも、創造性と革新性に富んだ感情豊かな音楽を生み出しました。交響曲第9には彼の内面の葛藤や孤独感が作品に深みを与え、障害を克服する強さが感じられますが、今回のピアニストたちの演奏は交響曲第9に前向きな力強い姿から、楽曲に新たな息吹を吹き込んだように感じます。障がいや苦難にもかかわらず、ピアニストたちは創造性と革新性に富んだ力強い演奏を通して私たちに感動を与えてくれました。
心から、たくさんの幸せや喜びをいただきました。ありがとう。
Peace out,
エリック
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