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バンコク旅行記①

 タイランドの首都、バンコクへ行ってきました。
 齢30を超えて一度も東南アジア諸国の豊饒さに現地で触れたことがなかったので行きたくて行きたくてたまらなかった。この世界に住むみんなが大学時代にタイとかベトナムとか行ってるイメージがあって、とても引け目を感じていたのです。
 出発は0時発だったのだが、出国手続きを終えたのは21時過ぎで早速時間を持て余す。さてどうしようかと思慮するも、ラウンジで暇を潰すしかない。ラウンジでしこたまカレーを食べ、ミルクを飲み干しながら、柿崎一郎『物語 タイの歴史 微笑みの国の真実』を読んで急ピッチでタイへの教科書的な理解を進めていく。
 なんとか定刻を迎え飛行機に乗る。どうしても現地で早朝から動きたかったため、当然フライト中は寝なくてはいけないのだが、ここで「寝なくてはいけない」というプレッシャーが襲い掛かる。結果、老人の如く眠りの浅さで断続的に覚醒しながらも、なんとか現地スワンナプーム国際空港に到着。
 入国審査は指紋と顔写真を撮るだけで拍子抜けだった。これは名高い日本パスポート効果なのだろうか、それとも全世界の人々に対して割とザルなのか。疑問は尽きぬまま、しかし確認する術もなくぬるっと入国完了……。

タイ語

 空港の地下にある両替店のレートが良いらしく、向かって幾ばくか替えてもらう。よくわからないままレシートを見て、概ね1バーツ=4円であることを理解する。有識者からすると円安の脅威を感じるところらしいが、わたしはまったく理解が浅かったため、そんなもんなんだと思うほかない。市街地へ行くためにgrabを呼ぶ。
 耳馴染みのない名前なのだがバンコクで主流の配車アプリは完全にgrabで、UBERは駆逐されてしまったらしい。この旅ではもう数えきれないくらいgrabを呼んだ。
 本当のところ、旅先では御当地の音楽でも聴きながら歩きたい主義なのだが、バンコクは歩行者にとってまったく優しくない。
 道がところどころ崩れている程度なら良いのだが、歩行者通路は狭く、容赦なく車が至近距離をビュンビュン飛ばしている。そして何より、長時間歩くのが危険に思えるほど蒸し暑い。初日の間に即座に諦めて車移動中心に切り替えました。
 なお、grabの他にも移動手段としてはバイクタクシーやトゥクトゥクという選択肢があるのだが、grabはスマホで呼べるし、呼べばその場まで大抵10分ほどで来てくれるので、カフェや売店で暇を潰しながら待つことが出来るというのが非常に便利だった。皆さんもバンコクへ行かれる際にはおすすめです。

 大体1時間くらいで市内に着き、まずはホテル近くの『Sarnies Roastery』なるカフェに行く。客層はほとんど欧米人。メニューも特にタイっぽくなく、それもそのはずで、後で調べたらシンガポール資本の店とのことだった。まあ、ええか…と自分を力なく肯定する。
 店内でコーヒー豆を焙煎していて雰囲気も良かったし肝心のコーヒーも美味しく、まったくもって不満はございません。
 バンコクはおしゃれで居心地が良いカフェが多かった。あまり資本が入り込んでいないだろうか、日本のように均質化されたチェーン店はほとんどなく(強いて言えばモールや人目に付くところにはスタバがある)、代わりに個性的な店が町中に点在しており、平均的なレベルの高さを感じた。
 旅行中だけでもそれなりの数のカフェに行きまして、これがどこも三者三様の特色があった。もしかしたらカフェをディグりにバンコクへ行く、という贅沢な旅行もありかもしれない。

光が入って気持ちいい。
浅煎りのコーヒーが沁みる…

 その後バンコク芸術文化センターで若手アーティストの展示を見て、周辺の店をぶらつく。
 バンコクはキャラクター文化圏のようで、NewJeans的というかY2K的なポップさを持つショップが人気のようでした。月並みな感想で申し訳ないですが、韓国と日本の影響を受けている感じがする。Tシャツや雑貨、レコードなんかをちらほら見て楽しむ。なんかみんな若々しくて男性も女性もキャイキャイしているのは国民性なのだろうか……。エネルギーを感じた。

バンコク的ポップの一例

 店をぼんやりチェックしているとお腹が空いてくる。旅の醍醐味の一つは食事であると固く信じているため、絶対に外したくない。そのため、ふらっと見つけた良さげな店に入るなんてことは絶対にせず、事前にチェックしていた店に行くこととなる。大体みなさん、日本でもふらっと店に入りますか?わたしはできません……。
 ということで、昼は『Yoong Khao Hom』という小さなモールの中にある店に赴いた。そこまで賑わっていないがキレイ目でどことなく洗練されている=観光客向け感があるということで、期待感が高まる。
 総じておいしい上、刺激的な味わいの南部料理を食べたいが、あまり辛すぎては困るという観光客のわがままにもしっかり答えてくれるありがたいお店だった。ちなみに一皿一皿のポーションがそうでもない、というGoogleレビューの口コミを信じたものの、そんなことは全くなく、昼からたらふく食べてしまった。道楽の限りを尽くし、1人4,000円くらい。安い。

中華っぽい炒め。葉っぱがぎゅっと締まった味わいでうまい。
カニがゴロゴロ入ったカレー、3000円くらいしたが納得の味。

 その後行ったのはタラートノーイという地区で、ここは中華系の人々がローカルな街並みを今に残している……という触れ込み。実際、家内制手工業的な零細工場や謎の屋台などが並んでいるし、中国的なイキフンもありで、歩いているだけでなかなか楽しかった。バンコクには珍しい路地を歩いている感覚が得られるというか。カフェやレストランなんかも点在しており、何をするでもなかったのだが退屈しなかった。
 タラートノーイは上述のような魅力溢れるエリアなため、当然のように観光地となっている。のだが、そこまで人が溢れている感じもなく、オーバーツーリズムにはなっていなくて一安心。
 ちなみに観光地的な見所としてストリートアートが点在しているという話だったのだが、自分が見たときはスポンサー企業の名前がデカデカと記載されていて、ストリートアートとは……と考えたくなるような代物でした。
 あと路上すぎてその辺に鼠の死体や鳥の死体が転がってたのもハーコーな雰囲気があってかっこよかった。

ギアだのなんだのが大量に置かれており道がベトついている
中華っぽい古屋敷
ストリート性をあまりに剥奪されすぎていて単に路上のイラストであった。
朽ち果てた車、これにも広告が……
中国ライクなカフェ。居心地がよい。

 タラートノーイエリアから歩いていくと、『Warehouse 30』という倉庫を改装した複合施設に辿り着く。50〜60年代のアメリカ古着/雑貨が置いてあるショップやギャラリー、カフェが併設されており、ローカルな施設というよりは観光客向け。とは言え置いてあるものは普通に面白いので近くに来たら行ってみるのも良いと思います。
 なお、わたしが行った時にはMr.BrainwashとかGoldieといった懐かしの面々による展示が開催されておりました。

カッコいいんだけどどこかノスタルジーを感じてしまう
同上

 そうこうしている間にすぐに夕飯の時間となってしまった。予約していた『Plu』にgrabで行く。店は外国人の接待や裕福そうなタイファミリーで賑わっており、ピースフルな雰囲気。
 昼食をたらふく食べていたのであまり空腹ではなかったのだが、それを後悔するくらいには出てくる料理がすべて高品質。暴虐の限りを尽くしてこちらも一人4,000円くらいという破格オブ破格の値段。この旅ではいわゆるファインダイニングにも気取らない定食屋にも行ったけど、このくらいのレベルのレストランで出るタイ料理が一番満足度が高い気がするな。

エビと卵と野菜の炒め物。
見かけ中華料理なのだが、香味野菜が東南アジアのスタイルというだけでまったく違った料理になっていた。
海老みそのようなものに野菜などをつける。要は野菜スティック的に素材を食べる料理なのだが、ペーストのスパイスと奥深い味わいが食欲を増進させる。
その場でハーブとごはんを混ぜてくれるちらし寿司のような料理。
香りが効いていてスイスイと軽く食べられる。

 たらふく食べて流石にもう動けないレベルだったので食後の運動がてらホテルまで30分ほど歩いて帰った。少なくとも大通り沿いは夜道を歩いていても恐怖感や危ない雰囲気を感じることは一切なく、日本と同じ感じ。寝不足と満腹感から崩れ落ちるように寝た。こうして振り返ると飯食べてばっかりですね……2日目に続く。

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