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白毛馬ゴージャス紹介【ゴールドシップ産駒】

2024年9月16日
とある馬の勝利に筆者は叫んだ。

ゴールドシップ産駒、白毛馬ゴージャスのデビュー戦勝利である。

上記叫びは
競馬ファンとして
ゴールドシップ産駒ファンとして
そしてクソ掛かりオタクとしての筆者の叫びそのものでした。

(掛かり発言以外の)競馬ファンとゴールドシップ産駒ファンとしての筆者の感想がなぜ全く違うものになったのか。
この白毛牝系は何か。
筆者の備忘録として、できる限り書き残そうと思います。

追記:2024年10月2日
G1ショータイムさんに動画の引用の許可をいただいたため追記しました。

注意
・この記事は血統評論ではありません。
・競馬の予想に役に立たない情報です。
・この記事の情報はX(Twitter)で公開することがあります。

この記事は2024年9月16日ゴージャス新馬戦までです。
翌週のメイショウタバルの勝利は含まれていません。

今回ゴージャス(サトノジャスミンの22)の見学動画、新馬戦などの動画の掲載をみなみの競馬channelさん(https://twitter.com/keibachannelmnm)に許可いただきました。
またサトノジャスミン、サトノジャスミンの22の動画の掲載をG1ショータイムさんに許可いただきました。(2024年10月2日引用許可確認済み)
みなみの競馬channelさん、G1ショータイムさんの動画は無断転載禁止でお願いします。
そのほかの個人チャンネルの動画はURLを添付しておりますので、お手数ですがYoutubeで検索お願いします。



誕生

2022年2月15日
村上欽哉牧場に一頭の馬が産まれました。

ゴールドシップ
サトノジャスミン
母父Wilburn

その馬は白い毛に覆われた、今なお珍しい白毛の女の子でした。
出産時に仔馬を取り上げた牧場代表によるとピンク色でウーパールーパーみたいだったそう。

サトノジャスミンの初仔はオルフェーヴル産駒のラブリネス(栗毛)。
繁殖2年目にゴールドシップを配合した経緯は、ゴールドシップ産駒初の白毛馬アオラキを生産したディアレストクラブの高樽代表におすすめされたからという理由。
生まれた時の馬体重は54kg

誕生から8日後の2月23日に撮影されたサトノジャスミンの22

壁を舐める白毛の仔馬。
みなさん一度は見たことのある動画ではないでしょうか。
見たこと人は見てください。滅茶苦茶かわいいので。

筆者にとってはサトノジャスミンの22を初めて見た動画でした。

「この激カワなサトノジャスミンの22のとねっこ動画を紹介できれば…!!」と心から思っていたので、今回引用の許可をいただき大変感激しております!

村上代表は「思っていた以上にいい馬。こんなにいい子を出すのならと、今年もゴールドシップを配合することにしました」ということで、翌年もゴールドシップ産駒の白毛馬の全妹が生まれています。

サトノジャスミンの22は生産牧場の村上欽哉氏が代表を務めるローレルレーシングの愛馬会法人「株式会社ローレルクラブ」の所属馬となります。

一口6万円×500口
総額3000万円

珍しい白毛とはいえこの牝系の成績(後述)で3000万円は高いと思われた方もいたでしょう。
しかし、白毛で生まれてから購入オファーが殺到し「これは先に(クラブで募集すると)発表しないと、仕事に支障が出る」と判断するほどだったそうで、なかには募集総額以上のオファーもあったとか。

ではなぜクラブでの募集になったのかというのとご家族に「売らないでほしい」とお願いされたからだそうです。
下記の動画を参照。

【競馬・馬主】村上欽哉牧場に!天使の白馬が現れた❤️いい馬みつけ旅(Vol.119)
https://youtu.be/rk9o-iNYO4M?si=zWDrlfnWeG2ZFHIF
(YouTubeでURLかタイトルで検索お願いします)

その時がきたら繫殖牝馬として牧場へ戻るようにとクラブ馬に。

また、海外からのオファーもあったそうです。
もしかするとこの牝系にまつわる歴史が関係しているのかもしれませんね。

さてローレルクラブで募集開始されたサトノジャスミンの22。
当歳でGallop2022年3月13号の表紙を飾りました。

まだまだ仔ヤギのようなちんまりとした姿でかわいいです。

親子での成長動画の引用も許可いただいたので「成長日記」シリーズからいくつか動画を紹介します。

3月22日撮影

5月25日撮影

そのほかたくさん可愛い動画や、『馬産地ならでは』の動画を投稿していらっしゃるのでぜひG1ショータイムさんのチャンネルを確認してみてください。

少し経って2022年8月の姿。

こちらはみなみの競馬channelさんの見学動画。
表情豊かなお嬢さんに癒されます。
みなみの競馬channelさんはゴールドシップ産駒を中心に動画を投稿していらっしゃるのでこちらもぜひチャンネルを確認してみてください。

よく産駒の気性に感して荒いところがあると「ゴールドシップの血が…」と言われますが、サトノジャスミンの22(及びサトノジャスミンの23)の気性はほぼ母サトノジャスミンと白毛故のものではないかと思います。

こちらの放牧風景をご覧ください。

尻っぱねしながら他馬を追いかけまわす母サトノジャスミンについていくサトノジャスミンの22。

この時の近況にはこんな感想が書かれていました。

社長が「気が強くて普段はキャンキャンしています」と評していますが、離乳前には、走りながら尻っ跳ねするお転婆ぷりを発揮する母の横で落ち着いて走っていたのが印象に残っています

ちなみに全妹の近況では「母はうるさい馬なので、放牧地をよく暴走しています」とのこと。

…子は親の背中を見て育つものです。

また白毛馬は毛色の違いからいじめられやすく、存在を消すように大人しくなるか反発してボスになる子が多いそう。(噂話なので話半分に)

そんなわけでサトノジャスミン姉妹は群れのボスになりました。
ポニーのミルクティー(ユニバーサルドナー)と一緒に放牧され他の仲間と仲良く育ち、のほほんとした性格に育った同じゴールドシップ産駒のアオラキとは真逆の性格になった経緯は興味深いです。

月日が経ち、サトノジャスミンの22に名前がつきました。

馬名 ゴージャス(Gorgeous)
意味由来 華やかで素晴らしい。父名、母名より連想。

ゴー」ルドシップ
サトノ「ジャス」ミン

Gorgeous
日本語では「素敵」「素晴らしい」「見事」最近の言葉でいうと「ヤバイ(語彙が出ないほどの褒め言葉)」でしょうか。
その見た目の華やかさ、そして歴史ある白毛牝系の血統。まさにゴージャス。
両親の名前も想像できる素敵な名前だと思います。

誕生から約2年5か月
栗東、四位洋文厩舎に入厩したゴージャスはゲート試験を合格しました。

競走馬として最初の試験も無事クリア。
そして中京競馬場で待ちに待ったデビューが決定。

四位師の評価
「順調に来ている。ゲートも出るし、癖がなくて操縦性が高い。スピードもあってグイグイ走りたがる前向きさがあるね。条件はピッタリだと思う」


新馬戦

2024年9月16日
中京競馬場
5R 2歳新馬(牝馬限定戦)
芝左1600m
晴:良

1頭出走取消の11頭で行われたデビュー戦。

鞍上は浜中俊騎手

浜中騎手はゴールデンスナップの主戦騎手であり、この翌週に大仕事をやってのけたメイショウタバルとコンビを組む、近年ゴールドシップ産駒と相性の良い騎手です。(ほかにマカオンドールの京都新聞杯3着など)
浜中騎手は母サトノジャスミンのラストレース(中京)の鞍上も務めていました。

8枠11番
ゲートはやや出遅れ。
中団後方の外につけたゴージャス。
白い馬体で位置がよくわかります。

3コーナー坂のくだりから徐々にポジションをあげ外外回って4コーナーで一気に加速。
直線半ばで先頭に立つとパワフルな走りで上り坂を駆け上がる。
追うは2番手12番のアイサイト。

アイサイトが後ろから迫るも間に合わない。
白い馬体が颯爽とゴールを駆け抜けた。

デビュー戦、白毛のゴージャス勝利!!

2着に3/4馬身差の完勝!

レース後のゴージャスはピンクに色づいていました。

白毛馬のJRA勝利はシラユキヒメ牝系を除くと
2017年6月に未勝利勝ちしたホワイトドラゴン(2017年6月17日)、カスタディーヴァ(2017年6月24日)以来の7年ぶり3頭目

浜中騎手「好位で流れに乗った競馬ができた。反応がゆっくりなところがあるので早めにふかしていった。抜け出すのが早くて1頭になったけど、最後まで集中していた。一生懸命に走るところがいいところ」

そして二度目のGallop表紙に決定!

白毛馬のデビュー戦勝利は7頭目。
シラユキヒメ牝系以外でのデビュー戦勝利は初でした。

ホワイトドラゴンはゴージャスの伯父
カスタディーヴァはアオラキの母

その時、競馬ファンとして筆者が叫んだのがこのポストの1つ目。

そして2つ目の叫びの通り、この勝利は全ゴールドシップ産駒ファンの度肝を抜くものでした。

ゴールドシップ産駒の中京成績

実を言うとゴールドシップ産駒ファンのほとんどが勝利を期待していませんでした。
それは白毛だから…とか曖昧な理由ではなく、ゴールドシップ産駒の中京1600mの成績が非常に悪いからです。

9月8日までの中京成績は
283戦中17勝 勝率6%
(内訳 芝11勝 ダート6勝)

9月8日までの(全てのJRA競馬場での)ゴールドシップ産駒の1600mの成績は
265戦中10勝 勝率3.8%

中京に限ると以下の通り

中京の牝馬の勝利はプリュムドールの1勝(2000m)のみ
中京1600mはマイネルフォルツァの1勝
新馬戦勝利は全距離で0勝

1600mは唯一クロノメーター(引退)が得意としていましたが、それでも新馬戦では3着(東京)。
以降ぽつぽつと勝つものの1600mの成績は悪いままでした。

ゴールドシップ産駒の多くはパワーが足りず中山など坂のある競馬場を苦手とする。
中京の最後の坂は勝利を阻む大きな壁と化していました。

成績の悪い中京×成績の悪い1600m

最悪な組み合わせ。絶望的な相性の悪さ。
ゴージャスが勝利した新馬戦はゴールドシップ産駒にとって鬼門中の鬼門のレースだったのです。

2019年にゴールドシップ産駒が中央デビューして2024年までの5年間、一度の勝利のなかった中京1600m新馬戦でサトノジャスミンが勝利。

だからこそ
ゴールドシップ産駒ファンは大絶叫しました。
(筆者はした)

なお翌週のメイショウタバルでまた絶叫するのである。

国内の白毛牝系

日本最初の白毛馬は1979年に誕生した「ハクタイユー」です。
現在日本で繁殖されている白毛牝系は主に3つに分けられますが、ここでは簡潔に3系統を紹介します。

シラユキヒメ牝系(日本)
カスタディーヴァ牝系(ニュージーランド)
サトノジャスミン牝系(アメリカ)

シラユキヒメ牝系(日本)

日本で最も有名なシラユキヒメ牝系のシラユキヒメは父サンデーサイレンスと輸入馬の母ウェイブウインドの間に生まれた突然変異の白毛馬である。

白毛馬が生まれる確率
白毛以外の両親から突然変異で白毛馬が生まれる確率は非常に低く1万頭~2万頭に1頭と言われていますが白毛は優性遺伝と考えられ、両親のうち片方が白毛ならメンデルの法則により50%の確率で白毛が誕生します。

シラユキヒメからは12頭のうち10頭も白毛が生まれました。現在シラユキヒメ牝系は安定して数を増やし、子孫からは桜花賞馬ソダシをはじめ数々の名馬が誕生しています。
シラユキヒメとその子孫たちの多くはディープインパクトを所有した金子真人氏やノーザンFが所有者。
重賞馬を数多く輩出する名牝系です。

カスタディーヴァ牝系(NZ)

ニュージーランド(NZ)生まれのカスタディーヴァ。
ゴールドシップ産駒初の白毛馬アオラキの母である。
カスタディーヴァの白毛は母The Opera House(2006年生まれ)から。

2016年、ニュージーランドで開催されたNZBプレミアイヤリングセールへ上場された白毛の牝馬The Opera Houseの14(父High Chaparral)を、ディアレストクラブの高樽秀夫代表が45万NZドル(当時約3500万円)で落札しました。

ニュージーランドから輸入されたこの馬はJRAデビューの白毛馬としては18頭目。

元はディープインパクトを付ける予定だったそうですが、ディープインパクト体調不良のため代わりに抜擢されたのは(何故か)ゴールドシップ。
翌年無事に宝石のような美しい魚目をもつ白毛馬が生まれました。

その子がゴールドシップ産駒初の白毛馬であり、2024年のアイドルホースオーディションでJRA未勝利馬(地方馬)として異例の引退馬枠2位、全体2位に輝いた「アオラキ」です。

仔馬時代のアオラキが載っている記事とアオラキ格上挑戦の記事

アオラキは現在地方馬。
所有者変更もあり(記事執筆時点で)名古屋から浦和へ転厩しましたが、アオラキに関わる関係者の方々のご厚意と努力のおかげで今でもX(Twitter)で(競走馬とは思えないゆるゆるモチモチな)日常の様子が垣間見れます。
浦和転厩初戦は重賞並みのファンが集まり話題となりました。

気軽に応援し会いに行けるアイドルホース。
地方を盛り上げるきっかけになってほしいところ。

昨年、待望の白毛牝馬(カスタディーヴァの24父フィエールマン)が生まれたのでカスタディーヴァの白毛牝系も繋がってほしいと願います。

サトノジャスミン牝系(USA)

アメリカ(USA)のPatchen Wilkes Farmで生まれたサトノジャスミン。
White Beautyから現在まで61年続くアメリカで認められた最初にして最古の白毛サラブレッド一族の血統である。

2016年にJRAデビューしたホワイトドラゴン
彼がデビューした年に生まれたのが半妹サトノジャスミン。
サトノジャスミンは2017年に日本に輸入
(記事内の「セリ以外で輸入された競走馬12頭」の一番最後)

サトミホースカンパニー所有馬としてサトノジャスミンと名付けられた白毛馬は2019年1月26日にデビュー。
馬体重は392kgと小柄でした。
12着。

次走も二桁順位となりわずか2戦で引退。
前述の通りラストレースの鞍上は浜中騎手。
中京1200mでした。

その後、2019年ジェイエス(秋季)繁殖牝馬セールに出品されました。

2019年10月23日
No.97
サトノジャスミン
落札者 ㈲村上欽哉牧場
落札額 5,720,000円(税抜き520万)

セールの様子がYouTubeに残っています。
サトノジャスミン上場は97番 2:35:43から

2020年、オルフェーヴルを配合し栗毛の牝馬「ラブリネス」が誕生。
2021年、種付けは前述通りアオラキを生産したディアレストクラブ代表のおすすめでゴールドシップを配合。
2022年、本馬ゴージャスが誕生。

その後はこの記事の冒頭へ。

2021年に続き2022年、2023年と三年連続でゴールドシップを配合。
2023年白毛牝馬誕生。
2024年鹿毛牡馬誕生。

ゴールドシップ産駒としてはアオラキ、ゴージャス、サトノジャスミンの23と3頭連続で白毛が誕生しました。(3頭連続白毛馬輩出は12.5%の確率)

情熱で繋いだ白の牝系

ゴージャスの勝利は海外まで届きました。
ここから先に出てくる英文はGoogle翻訳などの機械翻訳を使用しています。
誤訳、日本語の文章として歪な部分があるかもしれませんがご了承ください。

多言語で掲載しているグローバル競馬ニュースサイトのIdol Horseにゴージャスの記事が掲載されました。

X(Twitter)でも英語で書かれた喜びの声を多数見かけましたが、筆者はその中でもとあるコメントに目を奪われました。

Patchen Wilkes Farm lives on in Japan

パッチェンウィルクスファームは日本に生き続けている
(機械翻訳)

Patchen Wilkes Farmとはゴージャスの母サトノジャスミンの生まれ故郷であり、ゴージャスの白毛の祖先White Beautyを生産した牧場です。
一体どういう意味だろう。

言葉の意味を知るためにWhite Beauty誕生まで遡ります。

1963年5月7日
ケンタッキー州レキシントンにあるPatchen Wilkes Farmに真っ白な馬が誕生しました。
これに困り果てたのは所有者でありブリーダーであったHerman K. Goodpaster(ハーマン・K・グッドパスター)氏である。
白毛の歴史は古く、記録上最も古い白毛馬は1896年にアメリカで誕生した「White Cross」という馬でしたが、1963年「White Beauty」が誕生するまで当時のサラブレッドの血統登録に「白」という分類がなかったのです。

1963年、Patchen Wilkes Farmでは牡馬と牝馬の2頭の白い馬が生まれ、牡馬「War Colors」は「Roan(芦毛)」として登録。

もう1頭の牝馬について当時アメリカの競走馬の血統管理を行っていたジョッキークラブが協議を始めました。
数か月の議論の末、White Beautyの時代には前例のなかったカリフォルニア大学によるDNA検査とHerman K. Goodpaster氏の熱心な努力により、ジョッキークラブはサラブレッドの毛色に新たな色「White(白)」を追加しました。

こうしてWhite Beauty世界で最初白毛のサラブレッドとして登録されました。

現代では栗毛と登録されているWhite Beautyの父Ky. Colonelがサビノ(栗毛と白の駁毛)だったことから、彼女の色の起源がKy. Colonelであると考えられていますが、1963年当時はサビノのカラーパターン(控えめなもの派手なもの、すべて白ものまで、白い斑点を引き起こすなど)の伝達と表現についての情報が少なかったそうです。

16戦2勝したあとPatchen Wilkes Farmに繁殖入りしたWhite Beauty。

White Beautyの6頭の仔馬は、ステークスに入賞した1頭と他の3頭の勝者を含むかなり目立たないものでしたが、Herman K. Goodpaster氏はその血を繋ぎ続けました。

1972年に生まれたWhite Beautyの娘World O'Beautyは「粕毛」と登録されていますが、World O'Beautyが繁殖入りしPrecious Beauty(1981年生)とLate ‘n White(1985年生)の2頭の白毛牝馬を産んでいるので(実際の写真は確認できませんでしたが)おそらく班目の白毛だったのでしょう。

World O'Beautyの白毛の娘たちPrecious BeautyとLate ‘n Whiteのうち、残念ながらLate ‘n Whiteは仔を産むことはありませんでした。
また未出走で繁殖入りしたPrecious Beautyから生まれた白毛牝馬はPatchen Beauty1頭のみでした。

白毛を繋ぐ牝馬が連続して1頭のみとWhite Beautyの白毛牝系は断絶寸前の状態が続きます。

その後23戦2勝をあげたPatchen Beautyが繁殖入り。
このPatchen Beautyが複数の白毛牝馬を産み、White Beautyの白毛牝系断絶の危機は免れました。

ちなみにWhite Beautyの白毛牝系の繫殖はすべてPatchen Wilkes Farmで行われており、白毛馬を生産する牧場として有名になっていたようです。

Patchen Beautyの娘Spot of Beautyから生まれた子に日本に輸入されたホワイトドラゴンサトノジャスミンがいます。

Spot of Beautyが生まれた記事

タイトルの無いの記事は競馬ニュースを取り扱うBloodHorseという海外サイトです。上手く反映していません。

BloodHorse

長年Patchen Wilkes Farmで繁殖を行ってきた白毛の血ですが二度の危機に見舞われました。

一度目の危機は2009年
White Beautyの血を紡いできたHerman K. Goodpaster氏の死去でした。
91歳。
Spot of Beautyの娘Precious Beauty(白毛)が生まれた年のこと。

サイトタイトル
A Horse of a Different Color
The first of the 'new' colors to earn The Jockey Club approval was white.
「違う色の馬」
「ジョッキークラブの承認を得た最初の『新しい』色は白でした」

1963年にWhite Beautyが誕生してから彼が46年間繋いできた白毛への情熱は、牧場を購入したWarren Rosenthal(ウォーレン・ローゼンタール)氏が引き継ぎました。

彼と妻ベティは牧場を購入する際、この牧場が白毛繁殖に力を入れているということを知っていたようです。

Warren and Betty donated Renfro Valley to the Kentucky Music Hall of Fame Museum. When Warren and Betty purchased Patchen Wilkes Farm, they knew this farm was something special: the home of the rarest Pure White Thoroughbreds. With farm manager, Barry Ezrine, they both dramatically increased the breed and earned national recognition. One of Warren's big smiles was there whenever one of his "White Patchen Beauties" raced at Keeneland and other local tracks. What the white thoroughbreds lacked in speed was compensated by the excitement racing fans showered upon them.
ウォーレンとベティがパッチェンウィルクスファームを購入したとき、彼らはこの農場が特別な場所だと知っていました。最も希少な純白のサラブレッドの生息地だからです。農場長のバリーエズリンとともに、彼らはこの品種を劇的に増やし、全国的に有名になりました。ウォーレンは、彼の「ホワイトパッチェンビューティー」がキーンランドやその他の地元の競馬場でレースをするたびに、満面の笑みを浮かべました。ホワイトサラブレッドはスピードが足りなかったものの、レースファンが彼らに浴びせた興奮でそれを補っていました。

Warren W. Rosenthal Obituary

下記サイトの仔馬は2017年生まれのサトノジャスミンの半姉Beautiful Devilの子。

その後もPatchen Wilkes Farmは白毛馬を生産していましたが2019年に二度目の危機が起こりました。
White Beautyから続く白毛牝系存続に関わる最大の出来事。

2019年10月Warren Rosenthal氏が死去。

Herman K. Goodpaster氏の死から10年後のことでした。

実業家Warren Rosenthal氏死去のニュース

https://www.kentucky.com/news/local/counties/fayette-county/article236446368.html

96歳で亡くなったWarren Rosenthal氏。

Warren Rosenthal, the late owner of Patchen Wilkes Farm, was very passionate about raising pure white thoroughbred horses and creating a certain type of community.
パッチェンウィルクスファームの故オーナー、ウォーレン・ローゼンタールは、純白のサラブレッド馬を育成し、ある種のコミュニティを築くことに非常に情熱を注いでいました。

PATCHEN WILKES TOWNHOMES

彼が亡くなった翌月の2019年11月。
サトノジャスミンの半姉Beautiful Devilが繁殖牝馬セール(キーンランド11月繁殖ストックセール)に出品されました。

記事があります。
タイトルは
End of An Era for Patchen Wilkes' White Horses
「パッチェンウィルクスの『White Horses』の時代の終わり」

記事にはこう書かれていました。

lacks the pedigree attractive to most buyers.
But what the mare lacks in residual value, she more than makes up for with her looks.
She will be the last white horse sold that was bred by Patchen Wilkes Farm, the Lexington nursery of businessman Warren Rosenthal, who died in October at 96.
【機械翻訳】
ほとんどのバイヤーにとって魅力的な血統を欠いています。
しかし、この牝馬には残存価値が欠けているが、その容姿はそれを十分に補って余りある。
この馬は、10月に96歳で亡くなった実業家ウォーレン・ローゼンタールのレキシントンの苗床、パッチェンウィルクスファームで繁殖された最後の白馬となる。

ほとんどのバイヤーにとって魅力的な血統を欠いています。
ドストレートな言葉です。

しかしながらその通りで、White Beautyから続く白毛牝系は何十年も続いていましたが目立った成績を上げた馬がおらず、サトノジャスミンの23の牝系紹介には八代前まで遡らないとブラックタイプが何もないという状態。

https://www.laurelclub.com/wp-content/uploads/2023/07/23022307.pdf

↑PDFです。

2019年11月16日
出品番号4147番
Beautiful Devil

https://secure.keeneland.com/sales/Nov19/pdfs/4147.pdf

Emerald Equineが15,000ドルで落札。
検索してみましたがその後の行方はわかりませんでした。

下記キーンランドセール検索サイト
2019年November Breeding Stock Saleで検索

競走馬が経済動物である以上、重視されるのは血の価値。
どれだけ勝ったか。

「白いだけで存続してきた牝系」とは皮肉でもない事実だと思いました。

ついに途切れるかと思われた2019年は、56年続いてきた白毛牝系の運命が動く年でもありました。
この年、日本に輸入されていたサトノジャスミンもまた繫殖牝馬セールに出品され村上欽哉牧場が落札
落札した村上欽哉牧場の代表にはある夢がありました。

村上「牧場を開業したときから『いつか白毛馬を生産したい』という夢がありました。400㎏に満たない体で未勝利馬。近親からも目立った馬が出ていないので繫殖牝馬として導入するには正直迷いもありました」

繫殖牝馬としても小柄なサトノジャスミンから生まれた初仔は栗毛。
そして2021年アオラキを生産したディアレストクラブの高樽代表におすすめされゴールドシップを配合。

2021年11月25日撮影(G1ショータイムさん)

2019年にWarren Rosenthal氏が死去してから3年後の2022年
サトノジャスミンに白毛の牝馬が誕生しました。

White Beautyから続く白毛牝系の7代目
ゴージャス

1963年、世界で初めて白毛のサラブレッドとして承認されたWhite Beauty
Herman K. Goodpaster氏、Warren Rosenthal氏が繋いできたその白毛牝系のバトンが日本へ渡った瞬間でした。

この長い長い物語は終わりません。

White Beauty誕生から61年後
2024年9月16日
歓喜の瞬間が訪れます。

7代目ゴージャスのデビュー戦勝利でした。

ゴージャスの母父Wilburnはアメリカ生まれの重賞馬。
9戦5勝。
主な勝鞍はインディアナダービー(GⅡ)

2011 Indiana Derby - Wilburn
https://youtu.be/5IzHioQfEMU?si=gCsYttyxxq-oR1ou
(検索お願いします)

種牡馬にしては平凡な戦績です。
日本に繁殖登録されているWilburn産駒の繁殖牝馬はわずか3頭
(内競走馬としてJRAに出走したのはサトノジャスミン1頭です)(2024年9月現在)

Wilburnの3頭の繁殖牝馬の成績がこちら

わずか3頭の繁殖牝馬からGⅠ勝馬ジャンタルマンタルを輩出。
また2024年9月現在母父Wilburnの競走馬(2歳以上)の6頭中3頭が勝ち上がり。
インディアマントゥアナとラブリーベルナデットは海外重賞馬で社台ファーム繋養と良血や育成環境が整っているのは承知ですが、ここまで散々お話ししてきたゴージャスの牝系の成績とゴールドシップ産駒の鬼門中の鬼門レース中京1600mでデビュー戦を勝たせたのは前例のない快挙でした。

ここまでを読まれた方にはお気付きの方もいるかもしれませんが、ゴールドシップ産駒白毛馬ゴージャスが生まれデビュー戦を勝利するまでいくつかの偶然が重なります。

日高の種牡馬であるゴールドシップ。
母父Wilburnの繁殖2頭を所有する社台ファームが、ゴールドシップを繁殖につけるのは毎年2頭のみ。(多分ゴールドシップの株持ってる)
なので社台ファームのWilburnの繁殖牝馬にわざわざゴールドシップを種付けするというのは、ほとんど期待できません。

ゴージャスが生まれ勝利するために必要だったのは
サトノジャスミンが村上欽哉牧場に落札されたこと。
そして
初仔が栗毛であり、(事情は分かりませんが)配合変更を検討したこと。
それより前にアオラキが白毛で生まれていたこと。
(アオラキを生産した)ディアレストクラブ代表が村上代表にゴールドシップをおすすめしたこと。
1発で白毛牝馬が産まれたこと。(2頭連続白毛の確率25%)
また小柄な母馬から生まれたその子が馬体重54kg、骨量があり飛節もしっかりした馬体だったこと。
(ゴージャスデビュー時の馬体重は母392kg、半姉375kgを超える424kg)
サトノジャスミンの持つアメリカ血統がゴールドシップと配合相性が良かったということ。

数々の不思議な巡りあわせの結果でした。

村上代表の夢は
「8代目の白毛馬生産」
「白毛(繫殖牝馬)ばかりの放牧地」

それはPatchen Wilkes Farmが目指した風景。

Herman K. Goodpaster氏からWarren Rosenthal氏へ。
Warren Rosenthal氏の白のバトンは海を越え。

執念のような愛情と情熱で繋いできた白毛牝系の血は、異国の地で一輪の花を咲かせたのでした。

Patchen Wilkes Farm lives on in Japan

パッチェンウィルクスファームは日本に生き続けている

最後に

今回この記事で一番作りたかったのは最後のWhite Beauty誕生からゴージャス勝利までのWhite Beauty一族の時系列表です。

ゴージャスが勝利した時、記事を書く前に下調べしたところWhite Beautyシラユキヒメ白毛についてはWikipediaに記載がありました。(Wikipediaの内容はとても詳しいのでぜひ一読ください)
また、ゴージャスについてもピクシブ百科事典やニコニコ大百科が作られており「これ記事書かなくてもいいんじゃない?」と思っていました。

ただ気になったのは「時系列がよくわからん」ということ。

White Beautyに関して知らないことが多かったので、情報収集も兼ねてYouTubeのまとめ動画を見てネットに書き込まれた噂話も確認したのですが、「牧場の所有者が亡くなり白毛牝系が離散の危機」という噂は分かったけれど、具体的な話(亡くなったのは誰、いつ、離散は本当か)が全く分からない状況。
Patchen Wilkes Farmに関しても検索してみるとどうやら管理者(馬の所有者)が途中で変わっていることがわかりました。
つまり「White Beautyの生産兼所有者」はHerman K. Goodpaster氏だけど、上記の白毛牝系離散の危機となった時の「亡くなった所有者」は白毛繁殖を引き継いだWarren Rosenthal氏ということ。

White Beautyという白毛馬に情熱を注いで繋いだ人が誰だったのか。
そこはハッキリさせたいと思いました。

そしてゴージャスにまつわる「知ってほしい!」と思っている事柄の記載があまりないこと。(ピクシブ百科事典で気性について「ゴールドシップ同様気が強く」って書いてあるけれど、せっかく暴れまわってるサトノジャスミンの動画も公式にあるのだから母馬の気性も知ってほしいなぁ、などなど)

そこで執筆に着手しましたが、過去一番と言っていいほど莫大な情報量でした(Patchen Wilkes Farmに関しては大体英語で読めない)
それほどまでにHerman K. Goodpaster氏、Warren Rosenthal氏が残した白毛牝系には長く深い歴史があったということです。

「この牝馬には残存価値が欠けているが、その容姿はそれを十分に補って余りある」

これはセールに出品されたサトノジャスミンの半姉Beautiful Devilの記事の一文。

ゴージャスの1勝は多くの競走馬にとっては第一歩。
しかし大きな一歩でもあります。
それは中央競馬で勝ち上がることが、とてつもなく大きな意味を持つと誰もが知っているから。

容姿は抜群。
あとは残存価値を見せつけるだけ。

これから先の未来は誰にも分りません。
1勝で終わる可能性も十分あります。
しかし前例のない勝利をもたらしたゴージャスならばきっと…

最後になりますが
動画の引用紹介のお願いを快諾してくださったみなみの競馬channelさん。
そして全く関わりのない筆者がダメ元で送った引用許可の依頼を快諾してくださったG1ショータイムさん。
本当にありがとうございました!!
この場を借りて感謝を申し上げます。

重ねてになりますがみなみの競馬channelさん、G1ショータイムさんの動画は無断転載禁止です。
よろしくお願いいたします。

父ゴールドシップと母父Wilburnの血統評論はきっと詳しい方がやってくれる(と信じています)ので楽しみに待っています。
白毛の母と芦毛の父から生まれた鹿毛のサトノジャスミンの24くんは母父Wilburnパワーでメイケイエールしてほしい。

アメリカからきた血の末裔。
斜陽となった星旗牝系で大きな花を咲かせた父ゴールドシップを彷彿とさせる長く深い歴史を背負った白毛のゴージャス。

たくさんのGorgeousな花を咲かせる活躍を願っています。

【補足情報】
「ゴージャス」という名前の同名馬は複数頭います。
今回の記事内容では重要ではないと判断したためこちらに一覧を置いておきます。

最初は牡馬に名付けていたのが興味深いです。

あとは日本最初の白毛馬ハクタイユーの毛色を決めるときWhite Beautyの議論が前例になったとか…

今回使用した血統検索使用サイト
日本
公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル

海外(アメリカ)
equineline .com 


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