2024毎日杯メイショウタバル紹介【ゴールドシップ産駒】
2024年3月23日
毎日杯(GⅢ)をゴールドシップ産駒のメイショウタバルが優勝しました。
衝撃的な勝ちっぷりに混乱した筆者の覚え書きと一緒に、メイショウタバルの経歴を簡単に紹介します。
この記事は2024年3月26日時点のものです。
毎日杯出走までの道のり
ゴールドシップ産駒を知る人ほどゴールドシップ産駒らしくないと感じる馬がメイショウタバルである。
メイショウタバルは2023年10月9日デビュー。
デビューと未勝利戦は若手の角田大河騎手を鞍上に走るも4着、5着。
産駒で勝利経験のある浜中騎手に乗り替わり、阪神の未勝利戦で初勝利。
順調にいくかと思いきや、ここからメイショウタバルの受難と快勝劇のサンドイッチが始まる。
若駒ステークスで連勝を狙うメイショウタバル陣営だったが馬場入場後に右前肢跛行で競走除外。
幸い大事には至らず、若駒ステークスから約1ヶ月後のつばき賞(1勝クラス)へ。
つばき賞では行きっぷりよく先頭に立つも、後方から迫ってきた9番インファイターと4番キープカルムの間に挟まれる形に。
コーナーで抜け出すとラスト4F(残り800m)11.4-11.1-11.1-11.8の持続力勝負に持ち込み見事優勝。
未勝利戦からの連勝を果たしOP入りした。
その後、皐月賞のトライアル競走であるGⅡスプリングステークスに登録し出走馬の中でも有力視されていたが、開催3日前に左前肢にフレグモーネを発症したため回避。
気になる次走はなんとスプリングステークスの翌週に行われる毎日杯(GⅢ)。
フレグモーネやその治療で使われる投薬での影響で出走を見送るのではと思われていたが、上籠助手によるとフレグモーネ一歩手前の症状であったため毎日杯へスライドすることができた。
毎日杯
メイショウタバル
坂井瑠星騎手
2024年3月23日
阪神11R 曇/重 芝右1800m
満を持しての初重賞。
数日前から続く雨で馬場は重馬場に。
抜群の調教であったがフレグモーネ明けともあり、10頭中5番人気。
最有力馬は日刊スポーツ賞シンザン記念(GⅢ)を制したノーブルロジャー。
いざ、スタート!と思いきやゲート入りからごねるごねる。
ゴールドシップ産駒らしい枠入りからゴールドシップ産駒らしからぬ好スタートで逃げるメイショウタバル。
1番人気ノーブルロジャーを引き連れてタフな馬場をマイペースで走る。
綺麗なコーナリングで直線を向くと荒れた馬場の最内を爆走。
そのまま後続を突き放し、逃げて初重賞制覇。
ゴールドシップ産駒では2019年札幌2歳Sを制したブラックホール以来の平地牡馬重賞制覇でした。
驚くべきはその内容。
なんと重馬場で1:46:0。
そして6馬身差の圧勝。
この勝利に競馬ファンに衝撃が走り、産駒ファンはドン引きした。
1着メイショウタバル 1:46:0
2着ノーブルロジャー 1:47:0
6馬身差の1秒0差はJRA3歳重賞ではリバティアイランドの2023年オークス以来。
牝馬限定戦を除くと1997年京成杯スピードワールドまで遡る。
また6馬身差は1966年アポオンワード、1987年ダイゴアルファ、2001年クロフネの5馬身差を更新する同レース史上最大着差となった。
1986年以降、毎日杯で0秒5以上の差で勝利した馬は以下の通り。
記録を見ると5頭中4頭のGⅠ馬が誕生している。
また6馬身という着差は重馬場だからという意見もあるが、1:46:0という時計が人々を混乱させた。
ずらりと並ぶGⅠ馬。
メイショウタバルの記録は歴代2位タイだけでなく他馬の時計は「良馬場」での記録。
時計がかかるはずの重馬場で良馬場の時計を叩き出していた。
また重馬場ゆえスローペースかと思いきやラップタイムも非常に優秀。
12.6-11.2-11.4-12.1-12.3-12.0-11.6-10.9-11.9
淀みのないラップを刻みドスローからよーいドンの瞬発勝負に持ち込ませず、己のペースを他馬に押し付けつつ逃げてラスト3F(残り600mからゴールまで)34.4の上がり最速。
2F(400m~200m)には10.9。
ただ単純に「重馬場だから勝った」のならわかりやすいが
メイショウタバルは「重馬場なのに良馬場のタイムを出して(かつ10.9で突き放して勝って)いる」という。
バケモノか。
坂井騎手のコメントは以下の通りである。
最後の直線、メイショウタバルの1頭だけ最内にピタリと張り付くように走っている。
JRAに公開されている全周パトロールを見ると他馬は大きく土を蹴り上げている様子が見て取れるが、メイショウタバルも土を跳ね上げる様子が映っており、「重馬場の中では良い方」と捉える方が妥当だろう。
筆者的には気性的にクセがあるとよく言われるゴールドシップ産駒を「乗りやすい」と評したところにびっくりした。
2024年3月26日
浜中騎手との再コンビで皐月賞へ参戦することが発表された。
毎日杯で勝利した坂井騎手はシンエンペラー先約で乗り替わりだが、2戦2勝の浜中騎手なら想定通りか。
これまでロジャーバローズで日本ダービー、スリーロールスで菊花賞を制している浜中騎手。
メイショウタバルで三冠唯一の忘れ物『皐月賞』を勝ち取ってほしい。
体質が弱いところはあるが、このままクラシックレースまで順調に行ってほしいところ。
石橋守調教師とのつながり
この勝利で石橋守騎手は開業11年目で初のJRA重賞勝利。
レース後には幼少期の遊び友達の弟であった「幼馴染」武豊騎手と抱擁し喜びを分かち合った。
騎手としてメイショウサムソンでGⅠを勝った石橋調教師。
騎手時代最後の勝利はメイショウタバルの母メイショウツバクロでした。
母が贈った最後の勝利。
仔が贈った最初の重賞。
思い出の勝負服で再び栄光を。
まるで父ゴールドシップと須貝調教師のつながりを彷彿とさせるめぐり逢い。
巡り巡った赤い糸がつながる瞬間。
競馬の魅力を目の当たりにした瞬間でした。
あの馬場を逃げての勝利。
その走りはまるで「ゴールドシップが逃げたらどうなるか」を再現したようなレースでした。
三嶋牧場
メイショウタバルの生産牧場は種牡馬ゴールドシップを繁養するビッグレッドファームではなく三嶋牧場です。
三嶋牧場のゴールドシップ産駒の特徴は少数精鋭。
三嶋ゴルシの勝ち上がり率は
4頭中3頭の75%
勝ち上がり75%という驚異の打率を誇る三嶋牧場。
また勝ち上がりした3頭が準OP、OP、そして重賞も制覇する超優秀なゴールドシップ産駒を輩出する牧場です。
ゴールドシップの馬主、小林オーナーもアメリカからゴールドシップの繁殖にと輸入したランドネ、ハイパーストームを三嶋牧場に預託しています。
また、2024年も預託馬チリツバキからゴールドシップ産駒が生まれており、今後も期待したい牧場です。
最後に
ゴールドシップ産駒の強い産駒は中山でも勝てるだとか、坂を苦にしないとか、細かく言うとキリがないのですがそれなりの傾向があります。
メイショウタバルも少なくともつばき賞の時点で「この仔は強いぞ!」とファンの間では評判でした。
ですが…
メイショウタバルは、なんかそういうのとは別次元すぎる、史上に残るレベルのあまりにも強すぎる勝ち方だったので
競馬ファンがざわつく中
「え、なにそれ知らん。こわ」
と筆者を含む多くのゴールドシップ産駒ファンはドン引きしていたのでした。
種牡馬ゴールドシップの環境は社台グループに所属する種牡馬に比べ圧倒的に不利な状況です。
2024年3月現在、現役のノーザンファーム生産のゴールドシップ産駒は1頭。
初のGⅠ勝利牝馬が繁殖にきたのは2016年に種牡馬を始めてから4年後の2020年。
かつスクリーンヒーロー不受胎、ハーツクライ不受胎で回ってきた14歳の高齢に近い繁殖牝馬(ドリームエンプレス)でした。
そんな状況でも2020年以外は毎年重賞馬を輩出し奮闘しているゴールドシップ。
そこに突如現れた後継者候補メイショウタバル。
クラシックへの大きな期待もありますが、とはいえ大きな怪我はしていないものの何かと脚元不安なメイショウタバルなのでまずは馬優先。
万全の状態で挑んでほしいですね。
ちなみに
我らが障害王マイネルグロンが出走する中山グランドジャンプが4月13日。
メイショウタバルが出走する皐月賞は4月14日と2日連続で胃の痛いレースが続きます。
ゴールドシップ産駒ファンは胃薬を買い込んでおきましょう。
ゴールドシップ産駒から怪物誕生か。
メイショウタバルの今後に注目です。