初雪
ラジオはキキの姿にあこがれて聴き始めた。
最初は父の大きなボックス型の機械、次にやっぱり父が持っていた小さな携帯用。夜、特に土曜日の夜、布団に入ってこっそり聴いていた。そのまま寝てしまって、音が漏れたから、自分の秘密の時間が母にばれてしまった、なんていうことがあった(わるいことをしていたつもりではないのだけど)。
料理人になってからはさらに毎日聴くようになった。仕事時間、開店前はデスクワークのときも仕込みのときも、ずっとかかっていたから。合わせてブラックコーヒーを覚えて、自分の大人度が増したような気がした。
リスナーと呼べるほどではないと思うけれど、ふいに音を探す。心地良い声や話すスピードってあるよなと思いながら、その時の感覚に沿って合わせる。土曜日はなんとなく、そんな時間がちょっとだけ多い。
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