あれよあれよと、脱東京 〜前編〜
18歳で関西から上京し、2年ほどの海外留学を除いて、結局12年間東京に暮らした。
いつか海外移住したいな、なんてぼんやり考えたことがある程度で、東京は日本で最も暮らしやすい、サイコーの街だと思っていた。
まさかそんな私と家族が千葉のど田舎に好き好んで引っ越すなんて。
きっかけはコロナのような、そうでないような。
去年4月に始まった1度目の緊急事態。
私も例外になく、休みの日は子供たちとベランダでピクニックをしてみたり、お菓子作りをしてみたり。
対照的に平日はというと、夫婦共働きで、保育園は閉園=まるで地獄絵図。実家も遠く、結果的に当時4歳と1歳の子供と家族4人でテレワーク。
社外とのオンラインミーティングにも子供が登場してしまい、こっちの必死さもどこ吹く風、平然と話し続けた今も忘れぬS社の◯◯さん。初対面だったがそのことが原因でやな奴と決めつけてしまう私、なんて心が狭かったんだろう。
その後、夫とミーティングの時間が被らないようになんとか調整し、必死でやり過ごした2ヶ月。ほとんど記憶が残ってない。
緊急事態がようやく解除された6月の終わり頃、偶然SNSで見つけた千葉の外房にある自然に寄り添う循環型の生活体験できるブラウンズフィールドに行ってみた。
そこでの宿泊体験があまりに素晴らしかった。
たまたま同じ日程で宿泊していた別の家族とも意気投合。
それまで知らなかった「いすみ市」には田植えを終えたばかりの深い緑のドレスをまとった田んぼがどこまで〜も続いていた。
なんだか運命を感じた。
こんなところで暮らしてみたい
偶然にも夫婦揃ってそんなことを思い立ち、深く考えず物件探しに突入。
去年6月末に初めていすみを訪れて、およそ半年かけて10数軒以上の内見をしたが運命の家に出会えない。
ネットで気に入った家があっても、小さい子供を伴っての田舎の家探しは思った以上に大変だ。
・小学校まで徒歩圏内か
・ハザードマップではレッドゾーンではないか
・そもそも子連れで内見に行くこと!!!
月の半分程度の週末を家探しに費やしたが、
自家用車がないので毎回シェアカーを手配し、子連れだと日帰りは厳しく、気力もお金もかかり、毎回帰り道にはぐったりしていた。
あんまり好みじゃない見た目の家
家探し開始から半年。そろそろ気力も失いかけた11月の終わり頃、これがダメならしばらく家探しは休憩、と期待せずに向かった築35年の家。
生まれて一度も庭付きの家に住んだことがない私の第一印象は、庭が広すぎる上、化粧造りのお城風日本家屋で外見が好みじゃない。
一方で、アメリカ育ちの夫は広ければ広いほどいいと上機嫌。
家の中に足を踏み入れると黄緑色の土壁が広がっていた。
黄緑は私の一番好きな色。
玄関を上がってすぐの8畳が二間続く和室には、立派な柱。
一枚板に続く欄間もなんだか趣深いし、日のさす縁側もある。
農家をしながら、木材関係の仕事にも関わっていたという売主のお父さんが、庭のヒノキを伐採から10年寝かせ、柱として使ったという。
家の素材について無知な私たち夫婦でも、丁寧に作られた家だとすぐわかった。
水回りさえ変えれば、そのまま生活できそうなほど状態も良かった。
えいやで決めちゃった
もう10数軒見てきたので、なんとなくわかる。ナシの家、アリの家。
この家は間違いなくアリの家。
でもすでに意思表示をしている人がいるという。
その日は偶然にも私の誕生日、何か意思決定をするにはもってこいだ。
昔から根拠のない自信が湧く時がある、今日はそんな日。
さらにこれまで見てきた家の相場より、不思議と安かった。
別の物件でも何度か顔を合わせて信頼していた不動産屋さんによると事故物件ではないらしいから、迷っている暇はなかった。
貯金と株を売ってお金をかき集めればなんとかなるだろう、暗算だけど。
私たちはたった1度の内見後、その場で購入の意思表示である買付証明書を出したのだった。
続く・・・