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【読書感想文】 同調圧力社会の残酷さとその中を生き抜くノウハウを詰め込んだ韓国エッセイ『私は私のままで生きることにした』

今回紹介する本はキム・スヒョンさんが2019年に日本で発表したエッセイ『私は私のままで生きることにした』です。

キム・スヒョンさんは韓国のイラストレーター・作家。

表紙の可愛いイラストも著者によるものです。

しかしそんなポップな見た目とは裏腹に、中身は韓国社会の残酷さ・冷酷さに鋭く切り込み、「この社会の中で生きていくにはどのような心持ちでいればいいのか?」を説いたものとなっています。

「ほっこり系エッセイ」と言えるものではないかもしれませんが、自分の人生との向き合い方・ものの考え方などのヒントになるような一文がたくさん出てくるので、世間の「風潮」やら「暗黙の了解」やらに辟易している方はぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

● 私が韓国エッセイを好きな理由

いきなりですが、私、韓国エッセイがすごく好きなんですよね。

昨年読んだ本の中で1、2を争うくらい好きだったのも『死にたいけどトッポッキは食べたい』っていう韓国のエッセイだったくらいで。

韓国エッセイに心を惹かれる理由の1つは、日本人である私が抱えている悩みと同じような悩みを、韓国の人たちも持っているのだということがわかるからです。

例えば同調圧力、空気を読むこと、怒りや疑問を口にしないこと、感情を表に出さないことなどを、私は日常のあらゆる場面で求められてきました。

本当はそんなルールに則りたくないのに、「和を乱した変なやつ」扱いされたくないから則るしかなくて、でも自分の心にとってはそれが負担になるので、疲れてしまう。

そんな悩みをずっと抱えてきたわけです。


『私は私のままで生きることにした』や『死にたいけどトッポッキは食べたい』のような韓国エッセイにも、そんな悩みや息苦しさが描かれています。

それを読むと、「海の向こう側でも同じような悩みを抱えていて、自分と同じように戦っている人たちがいるんだ」と思えるんです。

そう思うと、なんだか勇気が湧いてくるんですよね。

これって私1人だけが抱えている問題じゃないんだな〜、異国の人も同じようなことで悩んでいるんだな〜と楽になれるので、私は韓国エッセイが好きです。

● 説得力を持たせる文章構成がいい

そんな韓国エッセイの中で、本作『私は私のままで生きることにした』は、著者の主張に説得力を持たせる文章構成がうまい作品だなと思いました。

たとえば「不安にとらわれないためのto do list」という章の中に「人生のあいまいさに耐えること」という項目があるのですが、ここはこんなふうな構成になっています。

●「韓国の占い師を検証する」というテレビ番組の紹介
(100人以上の占い師に占ってもらったが、占いの結果と事実が一致したのはわずか数例に過ぎなかった)

●著者の主張①
結局占いというのは少しだけ真実が含まれた推測にすぎないし、誰も未来を断言することはできない
それは人生というものがそもそもあいまいだから

●著者の主張②
人生とは結局あいまいさに耐えるということ
(人が占いに頼るのは「すべてうまくいく」という一言を聞き、人生の迷いを打ち消したいから)

みたいな感じで、 具体的な話から著者の主張へ話を掘り下げていくという構成になっています。

最初に具体例が来るので場面が想像しやすく、わかりやすいし、イメージがつきやすいんです。

これは普通に文章を書く仕事をしている身としては勉強になりました。笑

わかりにくい単語がなくてすらすら読めるのも良かったです。


あと、普通に「人生とは結局あいまいさに耐えるということ」という一文もめちゃくちゃいいな〜と思います。笑

みんな将来が不安だから保証が欲しいんですよね。生涯を閉じるまで安泰して暮らせるという保証が。

それを「あいまいさに耐える」と平易でやわらかな言い方で表せるセンスが羨ましい。

こういう名言がたくさん出てくるのもこの本のポイントですね。著者はもちろんですが、翻訳の方の表現力の賜物でもあると思います。

気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

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