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岩手県立美術館─舟越保武との対面

前回記事で「ホテルマザリウムに泊まってみたくて盛岡旅行を計画した」と書いた。しかしそれ以上の動機をわたしにもたらしたのは先生から届いた一冊の本だった。

新幹線を降りて東北の空気を吸う。寒かった。もうほとんど春の空気に浸りきっていた身体に、保温下着やニット、冬物コートをまとってきたとはいえ冬に逆戻りの気温はこたえる。二泊三日の滞在中、初日の気温がいちばん低かった。それに曇っていた。
バスの時間をしらべるのも億劫でタクシー乗り場に直行。旅の荷物はちいさなバッグひとつだけだから身軽なものである。「美術館まで」と運転手に伝え、あとは車の窓から岩手の風景を眺めた。
わたしの故郷千葉は山が少なくて空が広い。
ここにはいくつかの高い山がありそうだったが、距離が離れているせいかやはり空が広く感じる。遠景に見える山並みは美しかった。

岩手県立美術館。前情報なしで来てしまったが、なかなかに凛としたコンクリート造りの建物に惹かれた。夫が一服しているあいだ、わたしは舟越保武の手になるブロンズ像を眺めて過ごした。


建物裏手にあたる
道東の四季─春─
舟越のサイン
きれいな人…そして布の質感が見事


建物内部もかっこいい。


外を眺めるための特等席
企画展は art festival Iwate だった
でんわ
エレベーターのボタンもしゃれてる
2階に常設展示あり
松本竣介・舟越保武展示室
コレクション展は杉本みゆき氏。とてもよかった
この広さに我が家がすっぽり入ってしまう
惚れ惚れ。


やはり舟越保武の彫刻を見たくて来たという思いがあったせいか、最後に入った展示室がいちばんよかった。出入り口に近い側に松本竣介の絵画が、奥に舟越保武の彫刻が展示されている。
彼らは旧制中学の同期生で、卒業後親しくなり一緒に展示会を開いたりもしていたそうだ。親友ふたりの作品をおなじ部屋に展示するセンスが好きだと思う。

わたしは舟越作品をひと目で好きになった。
大理石、グレーの砂岩、赤みのある砂岩。女性の頭像は触ってみたい衝動をおさえるのが大変なほどなめらかで美しかった。どうしたらああやって彫れるのだろう。
わたしは一つ一つの作品にたいして360度ぐるりとまわって眺めていった。スケッチもあったが、じっさいの彫刻はどれも完璧なかたちをしているように見えた。

見ているときは思い出さなかったが、新幹線で読んだ舟越のエッセイのなかに、頭像を風呂敷かなにかに包んで持ち運んでいるときに警官から職務質問を受けたエピソードがあった。あのエッセイにあらわれているユーモアは作品から受ける印象とはまったく異なる。

長崎26殉教者の像のうち4体の展示もあった。これは「手」についてのエッセイがあった。わたしも最近「手」のことをあれこれ考える機会があったので、連想が続いたことに喜びを感じた。

県立美術館を訪れた翌日、「盛岡てがみ館」という小さな博物館をみつけて行ってみた。そこにやはり舟越保武の手紙があった。高村光太郎もあった。
このあたりのエピソードも含めて、そのうち「トルソー」のために盛岡紀行を書きたいと思っている。


舟越保武による石川啄木像

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エリンギ
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