30代ラストの夜
40代は「走らない」と決めたのに、また走っている。駅までの道。発車時刻まであと2分。
いや、まだ39歳なのだから問題ないか。明日からは走らない。
30代ラストの夜、何か記録しておかきゃいけないような気持ちに駆られて、電車の中でメモをとる。
これからお酒を飲みに行く。
思い返せばちょうど10年前(!)まもなく30歳になるというタイミングで、ステーキ屋さんで人目もはばからず号泣した。ただ30歳になるというその事実が受け入れがたかった。無駄な抵抗だった。でもなりたくなかった。30代になんて。20代のまま。永遠に若いままがよかった。
でも今回は不思議と落ち着いている。穏やか。もはやあらゆる抵抗は無駄だと悟ったのだ。受け入れるしかない。全てのことを。老いも含めて。
コロナ禍を経てひとつの答えにたどり着いた。幸せとは何か、という命題について。
「おいしいものを好きな人と一緒に食べる」こと。これに尽きる。それだけでいい。
やりたいことをやるとか行きたい場所に行くとか、いわゆる自己実現、そんなことに一生懸命になった30代だった。でもその結果、何が残っただろう。と時々思う。
本当はとっくに手の中にあったのに。いつも「ここではないどこか」的なことに憧れて、ここにないものばかりを求めた。
40代はそうでない生き方をしたいと思う。
今ある大切なものにしっかり気づけるように、それを手放したりせずに、逆に執着することなくいつでも手放せるように。そんな風に過ごしたいと思う。
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