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ビジネス・ケイパビリティマップとバリューストリームのどちらが先か問題
ビジネス・アーキテクチャチームに入って、まずはビジネス・ケイパビリティマップを作るよ。それは組織が何をするかのWHATであって、誰がやるとかどうやるかは関係ないよ。それからバリューストリームとか、プロセスとかのWhat, Why and Whoにマップしていくよ、という感じで教わった。
そしていまだにビジネス・ケイパビリティをやりつつも、一部の部署はケイパビリティが終わったのでバリューストリームマップも始めた。で、思った。
これ、バリューストリームが先の方がやりやすくない?
ビジネス・ケイパビリティマップを先に作る際に感じた問題
ビジネス・ケイパビリティは組織が何をするか、だけを抽出したもの。誰がなんでどうやってやるか、どれくらい上手にできるかなどは完全無視で、何をするか、できるのか、だけ。これを作るのは、トップダウン(偉い人がうちの組織はこれやるよ、という)とボトムアップ(各部署がうちはこういうのやるよ)の合わせ技で作っていく。
でも、誰がどんな状況でなぜどうやってやるのかを理解しない状態で、何をやるのか、だけを抽出するのはすごく難しい、と私は感じた。HCDから来たユーザに寄り添いタイプだからそうなのかもしれないが、多分それだけじゃない。なぜなら、BCマップを見せると、ビジネスはたいていプロセスやバリューの話になって、BCマップではうちがやってること全部を表してない、となるのだ。
例えば、私のファミリーエンタープライズのBCマップをトップダウンでざっくり作ってみる。具体的なバリューとかプロセスとか無視で、ざっくり、うちではこんなことをしている、できる、よね、と。健康で教育が受けられて、仕事もあって、お金の管理もする一般的な家族の姿。
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例えば、ストラテジーやビジョン(strategy Management)があって、それに基づいてプランを立てるんだけど(Plan Management)、そのために家族のメンバーのニーズを聞いて(Needs assessment)、モニタして(Monitoringa nd evaluation_、そんでそれぞれに合ったプラン、家族全体に合ったプランを立てるよね。その時お金のこととかも考えないとだし(Financial management)、生きていくためには体にいいものを食べないといけないよね(health management)、それをするためには調理するというサポートが必要だね、などなど。
でも、これを持って例えば厨房担当者に行くと、厨房ではそもそもキッチンを機能的に整えるためにこんなことしてるよ、Facility Mangement、それ抜けてない? 後食べ物を注文したり買ったりするよ、Procurement Managmentも抜けてるよ、などなどと色々と出てくる。これがレベル2とか3とかの細かいレベルで死ぬほど出てくるのだ。
バリューストリームが先にあるとBCも見えやすいのでは
バリューストリームを先にやると、これらの抜けているものに気づきやすい、と思う。特に、BAとしてそのビジネスの当事者じゃない状況でドラフト版を作る場合、状況を理解するツールとしてバリューストリームが使える。
例えば、うちのファミリー・エンタープライズの一つのバリューストリーム「家族の健康を保つ」をみてみよう。このバリューストリームを書いている段階で気づいた、あれ、健康って食べ物と体だけじゃないね、精神的にも健康でないといけないね。精神面についてのBCが抜けていたな、トップダウンでBCだけを作っているときには気づかなかった。
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それも踏まえて、ざっくり5つのバリューストリームステージを作ってみた。
Understand the needs
Provide Nutritious food
Provide psychological support
Maintain Physical health (ちょっと言葉が納得いかないが、とりあえず)
Monitor health
これに、入り口と出口条件、バリューアイテム(そのステージの結果として得られるもの)、アクターなどを追加していく。英語と日本語混ざってすみません。
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で、それぞれにBCをマップしていく。本来はレベル2とか3でやることなのだが、説明のためにとりあえずL1も含めてやっていく。黄色はすでに上記で示したBCマップに含まれているもの、赤いものがこれをマップしながら気づいたもの。ピンクは私のコメント、疑問。
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食事を提供するためには、食材のオーダーとか買い物(Procurement & Order Management)も必要だし、キッチンを整える(Facility Management)も必要。なんなら、食事を美しく見せるためのプレゼンテーションなんかもBCになるかもしれない。
肉体的健康のためにはジムなどのサブスクリプションをマネージすべしだし、健康になっているか知るためには健康に関するデータを収集、トラックする必要がある。それにどんなジムがあるのか、マーケットリサーチも必要だよね。
こういうのにはバリューストリームなしではなかなか気づきにくいのだ。
EA & BAのスタンダードではどうなっているのか
TOGAF:どっちでもいいけどVSが先の方が簡単
TOGAFのサティフィケートのスタディガイドにまさにその質問があった。バリューストリームとビジネス・ケイパビリティどっちが先か問題。
答えは「どちらでも良い。なぜならどちらかだけが存在するというわけにはいかないので。実際にはバリューストリームマップからやる方が簡単である。特に全てをゼロからやる場合(すでに存在しているBCがない場合)、バリューストリームから始めた方が、早く終わりがち」というもの。
ほら! ね! でしょ!
The BIZBOK Guide: 両方一緒にやるべし
ガイド本文から見つけるのが大変だったので、AIさんにようやくしてもらったのが以下。ざっくりいうと、両方同時に進めるべし。
The BIZBOK® Guide emphasizes that both value streams and business capabilities are essential and should be developed in parallel. Here are the key points:
Value Streams: These represent the end-to-end activities that deliver value to customers or stakeholders. They provide a high-level view of how value is created and delivered within the organization.
Business Capabilities: These are the core functions or abilities that an organization needs to perform its activities. They enable the value streams by providing the necessary resources, processes, and skills.
結論:両方一緒にやる
この記事で説明した通りの自分の経験から、BCだけを先にやるというのはアウトだと思う。実際私たちはそれで進めてしまっていて、色々と困難にぶつかっている。私よりシニアのエンタープライズ・アーキテクツ&ビジネス・アーキテクツたちがそうやって進めているので、それに従っていたわけだが、小出しに異議を唱え始めた。
バリューストリームをビジネスと一緒に考え、それにケイパビリティをマップしながらかけているものに気づくので、BCマップをアップデート。この繰り返しで作っていくのがいいのではないか、と。