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【補助金ガイド】給与支給総額・人件費の違い



✅「給与支給総額」と「人件費」の違い

本日は、補助事業の申請要件に定められた「給与支給総額」と「人件費」について、2023年9月時点の【事業再構築補助金】と【ものづくり補助金】の公募要領等をもとに要約・解説します。

要領は補助金の種類・募集回で変更される可能性もあるので、必ず申請時点で、当該補助金の公募要領等を確認し、不明点は事務局に問い合わせるようにして下さい。

両者の違いを解説する前に、それぞれの補助金で決められた申請要件を説明します。


✅各補助金要領で定められた申請要件

申請要件を達成する事業計画の策定は、補助金採択の大前提です。
主要な要件は大きく2つあります。

1⃣ 給与総額増加要件
例)「事業終了後 3~5 年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること」
2⃣付加価値額要件
例)「補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること」
※付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

【事業再構築補助金】第11回公募要領から抜粋・要約

上述の通りで、「給与支給総額」と「人件費」はそれぞれ評価のされ方に違いがありますので、混同しないようにして下さい。


✅「給与支給総額」として計上する費目

では、ここから本題の「給与支給総額」と「人件費」の違いについて説明します。
両者の大きな違いは、福利厚生費や退職金の計上有無です。「給与支給総額」は、福利厚生費や退職金を含みませんが、「人件費」は福利厚生費・退職金を含みます。
人件費は給与支給総額を包括します。


✅【事業再構築補助金】にて言及される「給与支給総額」

残念ながら、事業再構築補助金の公募要領やHPには、給与支給総額について明確な言及はなされていません。
その為次に挙げる【ものづくり補助金】にて言及される「給与支給総額」の定義を使って計上する事業者が多いです。
なお、公募要領には次のように回答されています。

給与支給総額の確認に当たって、法人の場合は、法人事業概況説明書の提出を求め、人件費の欄に記載された金額で判断します。

【事業再構築補助金】第11回公募要領から抜粋

上記から、「法人事業概況説明書」の人件費欄に記載された金額から、給与支給総額の判断がなされている可能性が高いといえます。「法人事業概況説明書」は申請書類として提出するので、人件費欄は正しく整備して下さい。

「法人事業概況説明書」見本

✅【ものづくり補助金】にて言及される「給与支給総額」

次に、【ものづくり補助金】の公募要領には、「給与支給総額」について、以下の通り言及されています。

給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)をいいます。

【ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金】第16回公募要領から抜粋

さらに、「よくある質問」には、次のような回答があります。

給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等であり、給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除きます。

[含まれるもの]
・従業員や役員に支払う給料、賃金、賞与
・各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当等の給与所得とされるもの)

[含まれないもの]
退職手当などの給与所得とされないもの
福利厚生費

『ものづくり補助金事務局』HPから抜粋

給料・賃金・賞与や、給与所得とされる各種手当は含まれます。一方含まれないものは、福利厚生費と、退職金など給与所得とされないものです。
給与所得とされるものは、下記URLの国税庁回答を参考にしてください。


✅「人件費」として計上する費目

続いて、「人件費」の定義です。


✅【事業再構築補助金】にて言及される「人件費」

『事業再構築補助金』HPの「よくある質問」には下記回答がされています。

(法人の場合)
以下の各項目の全てを含んだ総額を人件費とします。
・売上原価に含まれる労務費(福利厚生費、退職金等を含んだもの。)
・一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与及び賞与引当金繰入れ、福利厚生費、退職金及び退職給与引当金繰入れ
派遣労働者、短時間労働者の給与を外注費で処理した場合のその費用
ただし、これらの算出ができない場合においては、平均給与に従業員数を掛けることによって算出してください。

『事業再構築補助金事務局』HPから抜粋

給与等だけでなく、福利厚生費や退職金等も含まれます。


✅【ものづくり補助金】にて言及される「人件費」

『ものづくり補助金』HPの「よくある質問」には下記回答がされています。

人件費は、上記給与支給総額に加えて福利厚生費、法定福利費、退職金を含みます。

[含まれるもの]
・売上原価に含まれる労務費(福利厚生費、退職金等を含んだもの。)
・一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与及び賞与引当金繰入れ、福利厚生費、 退職金及び退職給与引当金繰入れ
派遣労働者、短時間労働者の給与を外注費で処理した場合のその費用

ただし、これらの算出ができない場合においては、平均給与に従業員数を掛けることによっ て算出してください。

『ものづくり補助金事務局』HPから抜粋

【事業再構築補助金】と同様に、給与等だけでなく、福利厚生費や退職金等も含まれます。


✅【一覧表】「給与支給総額」と「人件費」に計上する費目まとめ

各項目の該当有無を以下一覧にしました。

各項目や分類は、公募要領等の記載に基づく

✅個人事業主の場合

上述した見方は法人の場合です。個人事業主の場合、「給与支給総額」、「人件費」、「付加価値額」の考え方は以下の通りです。

給与支給総額=給料賃金+専従者給与+青色申告特別控除前の所得金額(⑳+㊳+㊸)

人件費=福利厚生費+給料賃金(⑲+⑳)
※個人事業主の場合、応募申請にあたっては、電子申請システムで「事業計画」を入力する 際の『人件費』は、この定義に基づいて算定した数値をご入力ください。

個人事業主の付加価値額※ =営業利益(㉝+㉒)+減価償却費⑱ +福利厚生費⑲ +給料賃金⑳

※個人事業主の付加価値額算定では、人件費の構成要素である㊳専従者給与(=ご家族の方等のお給料)および㊸青色申告特別控除前の所得金額(=事業主個人の儲け)の2項目を「人件費」に参入せずに計算します。

『ものづくり補助金』HPから抜粋

(個人事業主の場合)

青色申告決算書(損益計算書)上で以下の費目が人件費に該当します(丸数字は、所得税申告決算書の該当番号です)。

福利厚生費+給料賃金(⑲+⑳)

※個人事業主の付加価値額算定では、人件費の構成要素である㊳専従者給与(=ご家族の方等のお給料)および㊸青色申告特別控除前の所得金額(=事業主個人の儲け)の2項目を「人件費」に参入せずに計算します。

『事業再構築補助金』HPから抜粋

「人件費」の定義は、【ものづくり補助金】【事業再構築補助金】ともに同様と分かります。
「給与支給総額」は、【事業再構築補助金】では言及されていないので、【ものづくり補助金】を参考に計算すると良いかと思います。

「人件費」に関して、なぜ法人と異なった定義なのか正確には分かりませんが、税制上の配慮かと考えられます。


今回の解説は以上です。前提要件から要件未達・不採択は悲しいので、正しい費目算出をめざしてみて下さい。

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