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#37 迷惑ベース思考

冬服のセールが本格化した、とある婦人服売り場。
おそらく購買履歴や来店回数なんかに応じて割引クーポンの引き換えができる特設カウンターを通りかかると、50代くらいの2人連れの婦人の片方が苛立った様子で「よく分かんないんだけど何がいちばん得なの?」とスタッフに食ってかかっていた。
大きく動くマスクからは赤い鼻の頭が覗いている。

何がいちばん得かは人によるのではないか…?と他人事ながら思ってしまう。それを判断するのは他の人ではなくあなただし、そんなに血相を変えるほど大事なことなら他人に判断させるべきではないでしょう、とも。
そもそもクーポンは必ず取得しなければいけないものではないのだから、「よく分かんない」のならば端から無視すればいい。
そういう全部の意思決定の材料になる説明を今の今まで聞いていただろうに、最初から聞く耳を持たずに「よく分かんないんだけど」と開き直っているご婦人。
使えるクーポンの種類なのか、自分の購入金額なら最大でいくら割引になるのか?とか、あなたは一体何が「よく分かんない」のか。
それを言葉にして伝えたほうがいいんじゃないのか、大人ならば。「分からなさ」をぐしゃぐしゃに丸めて相手にぶつけるような無防備さと厚顔無恥さにこう、ウーっとなる。その後でかくいう自分にも思い当たる節があるかもしれないとソワソワしてきて、”気を付けなくちゃ”とひとり居住まいを正した。

なんというか感受性に贅肉が多すぎる。

ーーー

自分の勘違いで仕事のスケジュールにダブルブッキングが生じていたことに割と直前になってから気がつき、色々なひとに慌てて連絡をする。
結果として全然なんとかなったのだけれど、自分のせいで手間をとらせてしまった方々に申し訳がなく、自分がもっと早くに気付いてさえいれば、と肩を落とした。

人に迷惑をかけてはいけない、と私は思い過ぎているきらいがある。
それゆえ他人に迷惑がかかるようなミスは極力しないよう日頃から気を付けられる(あくまでも私の基準で)のは良いのだけど、だからこそ小さなミスでもしてしまった日には数日間ずるずる落ち込んでしまう。
それに自分の行動を「他所さまへの迷惑ベース」で捉えているから、相手に催促をしたり何か売り込んだりするのも本当は苦手で、ようするに及び腰なのだ。
フュージョンベリーダンサー業も会社員としての仕事も、プライベートの人間関係までも。
そのせいで近しい人に”もっと頼ってほしい”というようなことを言わせてしまったことがこれまでに何度もある。
多くの場合、親しみやリスペクトを感じている人に対して”あなたの手を煩わせたくない”という言動をとるのが私なりの、つまり「迷惑ベース」の人間なりの愛情表現であり、しかしそれは相手にはなかなか伝わらないのだった。

2日間返信がないので「その後いかがでしょうか?」とやんわり催促したチャットに既読のマークがつき、そこからさらに4日が経とうとしている。
先方の都合もあろうに、こちらから二度も催促の連絡を寄越すのはご迷惑ではなかろうか…などと逡巡する。
こっちも仕事なのだからさっさと追いチャット送るか、1本電話でもすればいい。そんなことは私にも分かっている。そう、分かっているのだ。
クーポンの1つや2つで初対面の人間に対して怒りを爆発させていたおばさんの姿が、脳裏に浮かんで消えた。

(本当は最近あった他の出来事について書こうと思っていたのだけど全然違う内容の日記になってしまいました。次回はダンスについてのあれこれを書こうかな!)

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Era | 物書きダンサー
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