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事例振り返り:腹部手術後突然の酸素化不良


わたしは育休中なので臨床現場とは少し距離を置いていますが、
たまに元同僚とお茶をして日々の業務について話を聞くのが大好きです
そこで、あーでもないこーでもないと事例を振り返ってアセスメントするのが楽しみの一つであります
(もちろん、個人が特定できない情報しか共有しておりません)
救急出身ということもあり、「これはどういう病態だったのか」とアセスメントについて聞かれることも多いです

ここ最近で興味深かった事例を皆さんと共有したいと思います
アセスメントしてみてください

事例紹介

患者背景:
一般病棟入院中の老年男性
腹部手術後2日目
離床はできているが術後排便みとめていない

場面:
準夜帯、大便をするためにトイレに行きたいと言われ、離床後SpO2値92%前後に低下(普段室内気にてSpO2値97-98%)
そのためベットに戻りバイタルサイン測定すると普段収縮期血圧140mmHg程度であるがあるが100台に血圧低下
安静にするもSpO2値上昇しないため、酸素投与開始
普段室内気であるが、徐々に酸素量増量し5L/分投与するもSpO2値は上昇せず
末梢は冷たくじっとりしている

あなたならどうする


①あなたは追加でどのように観察、情報収集しますか
②医師にどのように報告しますか
特にSBARでいうA(assessment:評価)、R(recommendation:提案)の部分
③何を疑いますか

SBARについて復習↓


わたしだったら・・・
①その他バイタルサイン:心拍数、呼吸数
呼吸様式 採血データ 手術詳細
その他の症状の確認
②患者背景を説明し、
A:酸素投与しても酸素化が安定しない、血圧低下が著名で末梢冷たい
R:診察してほしい
 追加で必要な処置・検査があるか
③まずは急いで治療や対応が必要なワースト疾患から考える
肺塞栓?心不全?虚血性心疾患?

結果


診察後レントゲン撮影してイレウスを確認
イレウスチューブ挿入
呼吸状態は徐々に落ち着き酸素減量し室内気に戻すことができた

追加アセスメント

みなさんはイレウスと呼吸状態の悪化、血圧低下・末梢循環不全は結びつきましたか?
以下はわたしのアセスメントです

術後の大量輸液などによる腸管と腸間膜の浮腫、イレウスによる腹腔内圧上昇
→横隔膜挙上となり換気不良
そこに体動による酸素需要増加も加わった  
というところでしょうか?

それでは血圧低下、末梢循環不全はなぜでしょうか?

血圧低下
イレウス等による腹腔内圧上昇
→下大静脈・腹部大動脈の圧迫、心臓の拡張障害
→血圧低下
末梢循環不全
下大静脈圧迫により静脈灌流量低下
→前負荷減少、後負荷増大
→心臓の拡張障害、心拍出量低下による循環障害(末梢循環不全)

循環障害がある場合、まず腹部臓器などへの血流維持のため末梢循環不全がみられますよね(冷たく湿った皮膚)

前負荷、後負荷の復習↓

ここからさらに対応が遅れた場合は、多臓器不全、呼吸不全につながってしまいます
事例について他にもアセスメントや意見を共有していただけるとありがたいです

救急の考え方は病棟業務にも活かせます


症状からのアセスメントは病棟業務においても役立ちます
普段疾患からアセスメントをしているぶん、症状からアセスメントをするには思考回路が異なるためトレーニングが必要です

また次回をお楽しみに!

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