エスパルスが目指すのは横浜FMのサッカーなのか。【エスパサポが横浜FMの試合を見て思うこと】
こんにちは、El Gran Equipoです。先日こんな記事を見つけました。
この記事の著者によると、
『今季の清水は、新たなスタイルのサッカーに取り組んでいる。簡単に説明すれば、徹底してボールを保持し、相手を押し込むサッカー。もっとわかりやすく言うなら、横浜F・マリノスがJ1を制したサッカーだ。』
『横浜FMのサッカーを参考にするとか、真似するとかいうより、そのものを移植するという表現のほうが適当なのかもしれない。』
とのこと。
8月3日のこの記事に少し違和感を覚えました。
「ボールを保持し、相手を押し込み、攻め続けるサッカーを標榜していることは事実ですが、現在のエスパルスは横浜FMのサッカーを単純に「移植」したものを目指しているわけではないのではないか。エスパルスのサッカーをそのように単純化してよいのだろうか。」
ということで、拙い分析によるものではありますが、直近の横浜FMの試合をみて、エスパルスのサッカーと比べてみようと思います。
(横浜FMサポーターのみなさま、ここ違うよ、というところがあれば教えてください!)
観戦したのは、8月8日行われたホーム 対柏レイソル戦。柏レイソルが先制するも、横浜FMが追い付き、1-1で終了した試合です。
1. まずは結論から
以下様々な局面での横浜FMの特徴をまとめ、比較していますが、先に結論を言えば、「相手には自由にボールを持たせず、ボールを奪われたらすぐに奪い返し、自分たちの攻撃する時間を出来るだけ長くし、多くの得点を奪う」という狙いは、両チームともに共通していると思います。
但し、そのための選手配置や、各ポジションに求められる役割や動き方また、ボール保持に対する考え方には大きな違いがあると感じました。
2. スタメン(中盤の配置に違い)
横浜FMのフォーメーションは4-3-3。但し、中盤の構成はアンカーを置いた逆三角形型を採用し、インテリオールに天野とMジュニオールを配置していました。
これは、第6節の横浜FC戦で初めて採用され、その後もダブルボランチを置く配置と併用されているようです。
試合を見ると、この中盤の配置とその活かし方にエスパルスとの違いがみえました。
3. ビルドアップの行い方(似ているところもある)
横浜FMのビルドアップは、時に喜田が両センターバックの間に入り、パスコース確保しながら、サイドを経由して行われることが多かったです。
特徴的なのは、両サイド共に、サイドバッグが内側に入っていき、相手サイドハーフを引っ張り、サイドのスペースを空ける動きをすることです。
ここで空けたスペースに、右サイドではMジュニオールが落ち、そこからボールを運んだり、センターバックから直接ウイングまでボールを通したりすることが出来ます。
この動きは最近のエスパルスでも、特にエウシーニョのサイドで多くみられています。エウシーニョが内側に動いたところに、ヘナトや後藤が入るという動きです。
一方で、エスパルスで奥井が見せていたようにビルドアップからハーフスペースの高い位置(相手センターバックとサイドバッグの間あたり)を取ることは横浜FMでは見られませんでした。
このあたりは、リスク管理の考え方に違いがあったのかもしれません。
4. 相手守備ラインの攻略(狙いは同じも方法に違い)
この試合の横浜FMは、特に左サイドで上図のような崩しにトライしているように見えました。
ティーラトンはボールを持てる且つ縦に鋭くパスをつけることが出来るので、ティーラトンにボールが入った瞬間に前線のアクションが始まります。
これはエスパルスとの違いに見えましたが、横浜FMはインテリオールがハーフスペースに飛び出す動きが非常に多く、そこにガンガンボールを入れていっていました。
ハーフスペースに飛び出すインテリオールには、ウイングを経由してパスを入れる等、このエリアにボールを流し込む意識が高いです。
また、常にワイドに開いたウイングへ直接ボールをいれる場合もありました。ここでのエスパルスとの違いは、横浜FMの1対1を仕掛けていくこと。
ここのアグレッシブさは横浜FMの特徴だと感じました。
エスパルスサイドバッグがゴール前まで入り込むのに対して、相手を押し込む時間帯でなければ、サイドバッグがゴール前まで入り込むという形は思ったほど多くありませんでした。
柏のカウンターを警戒してのことかもしれません。ただ、インテリオール2枚が前線へ飛び出すことで攻撃に厚みを持たせ、その位置に両サイドバッグが入ることで、攻→守の切り替えで、ルーズボールを回収しやすくなっていたように思います。
5. 攻→守の切り替え(プレス強度に大きな違い)
基本的に横浜FMの攻撃はボールを保持しながら、センターバックも相当高い位置まで上がり、相手を押し込んだ状態を作った中で行われます。
(これはエスパルスも狙っているところ)
そのため、ボールを奪われた際、相手に時間を与えると、最終ラインの背後を取られるリスクがあります。
そのため、即座に強度の高いプレッシングをかけ、ボールを奪いきる、プレーを切る、相手にボールを蹴らせるように追い込みます。
先ほど述べたように中央は両サイドバッグがスペースを埋め、ルーズボール拾えるよう構え、最終ラインの背後にボールを入れられた場合は、裏のスペースを埋めるGKが処理を行います。
基本的に最終ラインはハーフライフ付近という相当高い位置に設定されており、今のエスパルスとはかなり違う部分です。
また、エスパルスのネガティブトランジションは、プレスをかけてボールを奪い返すというほどの強度のものではなく、基本的に守備配置を整えるように少し下がっていくことが多いように思います。
5. ビルドアップに対する守備(前線の狙いは同じ)
相手ビルドアップに対してもセンターバックに対してワントップ、両サイドバックに対して両ウイングといった形で、プレッシングをかけ、相手に時間を与えない守備を行います。
この時もラインはかなり高く設定され、相手のプレーできるスペースを圧縮していきます。そして、背後はGKがカバーするというかなり強気な守り方となっているかと思います。
エスパルスも前線3枚の相手最終ラインへの当て方は同じような形ですが、最終ラインの設定はだいぶ低くなっていると思います。
6. 選手の位置取り以外の違い(能力、意識の差)
フォーメーションやライン設定、ポジションごとの役割は、自分たちのチームの目指す攻撃や守備と、所属する選手の能力や特性に応じて決められるものと思います。
その中で、横浜FMの選手が求められることや、考え方のようなものにも違いがあると思いました。
それを特に感じたのは、ゴールを奪うという意識についてです。
横浜FMは攻撃においても、相手に時間を与えないことが強く意識されていると感じました。攻撃では、タッチ数が非常に少なく、パススピードの速いボールを常に前に前に入れこんでいく。ボールを保持するものの、それにこだわり過ぎず、ガンガン殴っていくというイメージです。
ティーラシンはいくら狭くても、スペースがあれば縦にボールを入れ、そのパススピードもすごく速い。ウイングの選手は、常に一対一を仕掛けていく。サイドで時間が出来れば、速いボールのクロスを入れていく。
この徹底した気迫のようなものが、エスパルスとは大きく違う部分に見えました。エスパルスは、ドリブルも織り交ぜながら、相手をきちんと崩し切ろうとしているように思います。そして、時にそこにこだわるあまり、自分たちで状況を難しくしてしまうこともあるのではないでしょうか。
結果が出る方が正しい、というのが勝負の世界ですが、今のエスパルスのサッカーにこの気迫が加われば、より怖いチームになるのかなと思います。
7.まとめ
長々と書きましたが、どちらのサッカーにも魅力があり、短期間で徐々に良くなっているエスパルスのサッカーは、大きな可能性を秘めていると思います。
まずは一つの試金石となる、8月19日の両チームの対戦がすごく楽しみです!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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