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-ロティーナ清水の幕開け- 【清水エスパルス vs 鹿島アントラーズ】 マッチレビュー J1 第1節 27.Feb.21

こんにちは、El Gran Equipoです。
遂に開幕したJリーグ。ロティーナ清水の初戦となったアウェイ鹿島アントラーズ戦を振り返ります。

開幕スタメン予想では誰しもが、4-4-2や3-5-2の布陣を予想していた中、蓋を開けてみると4-1-4-1(もしくは4-3-3)の布陣を敷いてきました。
試合開始早々から驚かせてくれたロティーナさん。そこには勝利を手繰り寄せるための様々な仕掛けが散りばめられていました。

苦手な鹿島相手に逆転勝利を収めたエスパルスの狙いを紐解いていきたいと思います。それではいってみましょう!

1.スタメン

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エスパルスは先述の通り、竹内をアンカーに置き、4-1-4-1の配置で臨みました。純粋なフォワードのディサロはインテリオールの位置に入りました。
一方の鹿島は、これまでと同様にオーソドックスな4-4-2。両サイドハーフは内側のポジションを取り、ツートップは縦関係ではなく、横並びになることが多かったです。

2.縦パスを管理する仕組みづくり

驚きをもって迎えられた中盤3枚の配置。試合が進むにつれてその意図が明らかになっていきます。
それは①相手ビルドアップに対して角度をつけて制限をかけること、②縦パスを制限することです。

(1)試合序盤のビルドアップに対する守備組織の構築

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まず、相手最終ラインのビルドアップに対しては、チアゴと中山が出ていきます。ポイントとなるのは、中山のアプローチの角度で、サイドから中央に出ていくことで、背中で鹿島の永戸を消しながら町田にプレッシャーをかけることが出来ます。

パスコースを制限した中で、待ち構えるのはエスパルスの中盤3枚。
青色で示した、左ハーフスペース、中央、右ハーフスペースをそれぞれが埋めるイメージ(もちろん左右にスライドはしますが)で、最終ラインから入ってくる縦パスを監視します。
ディサロは特に永木とマッチアップする場面も多く、慣れないタスクを献身的にこなしていたと思います。

また、中山の制限を超えて、永戸にボールが入った場合には、ディサロが持ち場を離れてアプローチをかけることもありました。
その際には、後方の竹内、中村がディサロの空けたスペースを埋めるべくスライドし、中央のスペースを管理していました。

(2)鹿島のビルドアップへの変化とエスパルスの守備対応

上記の通り、鹿島の攻撃にうまく制限をかけたエスパルスに対して、前半の途中から鹿島はビルドアップの行い方を変えてきました。

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鹿島はボランチの1枚が両CBの間に下りることで、最終ラインの数的優位とサイドバックの押上げを狙いました。

これに対して、特に後半、エスパルスは4-3-3のような形でのプレッシングへと切り替え、相手最終ラインの3枚にチアゴ、カルリーニョス、中山の3人を当てていきました。
3枚に対して3枚を当てることになるので、ここでも縦パスを制限しながらプレッシングをかけることとなり、鹿島の攻撃は外側に押しやられることを余儀なくされました。
時々ボランチが2枚とも下がる場面もあり、鹿島はビルドアップに苦労していたようにも見えました。

前線の守備対応の修正もあり、中盤の3つのレーンの管理は試合を通じて、非常にうまく行われており、鹿島は最終ラインや中盤から縦パスを入れることがほとんど出来ませんでした。

前半はCBからの縦方向のロングボール、後半は少し幅を取ったCBから斜めのロングボールが入ることも多く、エヴェラウドの高さは脅威であったものの、エスパルスとしては予測が出来た中での守備を続けられたと思います。

3.守備の固さを見せたクロス対応

先述のようにショートパスでのビルドアップが制限された鹿島は、特に後半に最終ラインからの斜めのボールやサイドからのクロスを入れ込む場面が多くなりました。
一見、攻め込まれているように見える場面でしたが、ロティーナさんの作り上げた強固なクロス対応により、怖さを感じずにはじき返すことが出来ていたように思います。

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CBからの斜めのボールはハーフスペースにポジションをとる鹿島 アラーノを狙ってのものが多かったのですが、ここは先述の通り、このハーフスペース(上図緑色)を担当した中村がカバー。時にかなり低い位置まで下がることもあり、守備意識の高さを見せました。

そしてサイドからのクロスに対しては、最終ラインが青色のエリア、その前の黄色のエリアを残りの中盤2枚で埋めるという位置取りが徹底されていました。
黄色のエリアはマイナスのクロスやクリアボールの回収のために重要な位置取りですし、青色部分は言わずもがな最もゴールに近いエリアです。

その中で、特に良かったと感じたのが、最終ラインの上げ下げです。
クロスが上がる瞬間にラインをスッと下げ、クロスに対して正面からヘディングが出来る態勢を作っていました。
ゴール方向に下がりながらヘディングをするのに比べ、跳ね返しやすさが格段に変わると思いますし、相手FWの位置を視野に入れながらクロス対応が出来るのだと思います。
クロスを跳ね返した後のラインの押上げもすごく連動出来ていたと感じました。

4.今年もサイドバックは内側へ

ボール非保持の局面ではうまく準備していたものが出せたエスパルス。保持の局面はどうだったでしょうか。
個人的には序盤は鹿島のプレス強度が高かったこともあり、中々うまく前進出来なかったという印象でした。

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ボール保持の局面では、鹿島が積極的に前に出てきたため、エスパルスの4バックに対して、鹿島のツートップとサイドハーフによる4枚がプレッシャーをかけてくる状況になりました。
また、鹿島のダブルボランチにエスパルスのディサロと中村が監視されていたため、ビルドアップは外回りになりがちでした。

ここでもディサロが右サイドで中山とレーンをずらしながらビルドアップに加わることを試みましたが、外側に追いやられ潰される場面が多かったです。
個人的には鹿島 エヴェラウドと上田の間に立ち続けた竹内の位置取りがどれだけ有効だったのか気になりました。

そんな中、ビルドアップの局面で原がボランチの位置にポジションを上げることで、相手の守備に迷いを生じさせ、ビルドアップを改善出来た場面もありました。

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上図のように、原が竹内の脇に入ることで、3-2-4-1のような形でビルドアップを行う形へと可変します。
これにより、最終ラインでは3対2の数的優位を作り、且つヴァウドや片山から前方へ斜めの角度をつけたパスコースが出来るようになりました。

また、中村やディサロ(後藤)が中途半端な位置を取れるようになり、特に鹿島のボランチに対して目の前の竹内や原に出ていくべきか、後方の中村や後藤を見るべきか迷いを生じさせることが出来ていたと思います。

そのような状況の中で、中村や後藤が相手ボランチの脇でボールを受けると、鹿島のCBをつり出すことにもつながり、一気に相手の前がかりなプレスをひっくり返し、相手最終ラインと数的同数(もしくは数的優位)を作り出すことが出来ていました。

中々苦労したビルドアップでしたが、原の位置取りで優位性を作る構造はこれからも続くとみられ、注目していきたいと思います。

ちなみにこの原の位置取りは、昨年のモフ監督時代で見られたようなハーフスペースを駆け上がるような上がり方ではなかったため、あくまでボランチの位置で、ビルドアップのサポートやカウンター対応を意識したものだったように思います。

5.試合を分けた同点ゴールについても少し

セットプレーのこぼれ球を押し込まれ、試合終盤に差し掛かるところで失点を喫したエスパルスでしたが、今年も期待の河井さんの素晴らしいクロスから同点ゴールが生まれました。
早い段階で同点に持ち込むことが出来たことで、鹿島に焦りを生じさせ、前がかりになったところを突いて得点を重ねることが出来たと思うので、この得点は非常に大きいものだったと思います。

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エスパルスの同点ゴールは失点後のキックオフの流れから生まれるのですが、中央で後藤が粘ったところからサイドに流れていた河井にボールが渡ります。
ここでドリブルを選択し、持ち運んでからマイナスのクロスを上げたところに河井さんの上手さが凝縮されていましたが、先述したエスパルスのクロス対応とは反対に鹿島は上図青色のエリアが手薄になっていました。

通常ボランチがこの位置を埋めると思うのですが、三竿は河井の対応へ飛び出しており、永木は戻ることが出来ていませんでした。
後半の終盤は特に、鹿島はツートップとサイドハーフが攻め残ることも多く、守備陣の負担が大きくなっていたようにも感じました。

そこを上手くつけたエスパルス。いずれの得点も美しいゴールでした。

ちなみに、ここでも原はサイドバックながら内側に絞りボランチの位置でカウンターに備えていました。
このあたりも抜かりないのがロティーナさんのサッカーなのかもしれませんね。

6.楽しみなシーズンの幕開け

シーズン開幕、そして鹿島に対してアウェーで逆転勝利!と早くもエスパルスサポーターの心をつかんだロティーナさん。
戦術的にもおもしろい要素が多く、見どころ満載な試合がこれからも続いていくだろうと期待を抱かせてくれました。

特に選手の位置取りやスペースを埋める動きが90分間徹底される点は本当に心強く感じました。
この試合のチーム走行距離は121.5kmとかなり多かったのもポジション修正を常に繰り返し続けたからだと思います。

次節はルヴァン杯を挟んでのホーム開幕戦、昨年守備が固いといわれていた福岡相手にどのような試合を見せるのか注目したいと思います!

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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