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-右サイドをめぐる冒険-【清水エスパルス vs 大分トリニータ】 マッチレビュー J1 第12節 2.May.21

こんにちは、El Gran Equipoです。

ルヴァン杯を挟んでの投稿となりましたが、第12節大分トリニータ戦を振り返りたいと思います。

前節対戦した湘南ベルマーレと同様に守備の局面では5バックとなるシステムが特徴の大分。前節の成功体験を引っ提げて、右サイドから斜めのボールを相手のボランチの背後へ、そんな意図が多々見られた試合でしたが、大分のスペースを消す守備に得点を奪えず、CKの1点に泣き、敗れてしまいました。
試合の中でも修正が見られたように、左右の攻撃を織り交ぜることの重要性を教えられた、そんな試合でした。

それではいってみましょう!

1.スタメン

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前節からの変更点は西澤⇒中村の一人のみ。左サイドハーフは内側でボールの受け手となる役割は変わらずも、中村の場合は少し低い位置取ることとなりました。
対する大分は、伊佐に代わり長沢が先発。長沢は第7節川崎フロンターレ以来の先発だったようですが、相変わらずの存在感でした。

2.頭越しのビルドアップで無力化されたプレス

この試合も非保持の局面でのエスパルスの狙いは、ツートップ+中山の3枚のプレスにより相手のビルドアップに制限をかけることにあったと思います。
しかし、この狙いを大分は徹底したロングボールで無効化してきました。

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大分が最終ラインでボールを持つと、以下のような立ち位置を取ることが多かったです。
①ウイングバックは幅を取り、エスパルスの中村、中山の背後もしくは同じくらいの位置に立つ(特に松本は背後の位置を取ることが多い)。
②シャドーの町田、小林成はビルドアップに参加せず、長沢の周囲に位置取り、前線の深さを作る。
③ボランチはほとんど最終ラインには下りず、エスパルスツートップの背後に立つ。

この状態で、最終ラインの坂、三竿から、対角のWB、そして時に下りてきた長沢へとロングボールを蹴りこんできます。

エスパルスの最終ラインからすると、両WBに幅を取られ、中央にも相手選手3枚が構えていることもあり、ある程度中央に絞る必要があるため、WBへ対角線のロングボールが出てきた際に、十分な準備をもって対応が出来ない状況を作られました。

本来であればボールの出し手に対してプレッシャーをかけ、良いボールを蹴らせないようにしたいのですが、鈴木、チアゴの背後にはボランチが2枚並んで立っているので、自分の背後にパスが通されることが気になってか、中々勢いをもってプレスをかけることが出来ませんでした。

となると、ボランチの宮本、河井が前に出て、大分のボランチを捕まえることで、ツートップがプレスに出やすい状況を作れればよいのですが、ボランチが前に出ると、ディフェンスラインの前のスペースを空けてしまうことになるため、難しい判断が求められました。
(後半、ボランチが前に出る場面がありましたが、その背後のスペースを町田や長沢に使われる場面も見られました)

大分は中盤を省略した攻撃をかなり徹底していた印象があり、エスパルスのプレスを攻略するための片野坂監督の采配が奏功してしまった局面でした。

3.塞がれた成功体験と狙いたかったスペース

今節と同じ5バックの湘南に相手中盤の選手をずらすことで面白いように縦パスを入れることが出来た前節。

この試合でもその成功体験を再現すべく、エウシーニョ、河井、中山のコンビネーションを生かしながら、鈴木、チアゴへの斜めのパスを狙っていたエスパルス。
しかし、今節は相手の守備陣形が5-4-1と中盤が厚く(前節は5-3-2)、また、大分がエスパルスの右サイドにぐぐっと押し込むような守備を行ってきたことから、右サイドの攻撃は度々塞がれてしまいました。

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エスパルスの最終ラインのビルドアップに対して、大分は右肩上がりな恰好で、町田と長沢が前に出ることで圧力をかけてきました。
エスパルスが右サイドを強みとしていることもあり、ボールが右に流れると、ボールの出所となる河井、鈴木には大分 下田、三竿が厳しくマーク。

下田の相方の小林裕、3バックの坂、小出もボールサイドによることで、前節のような縦パスのコースは消され、エスパルスの右サイドの攻撃は詰まってしまいました。

その中でも、前がかりになっている町田の背後に出来たスペースで中村が上手くボールを受ける場面もありました。
しかし、身体の向き、目線はどうしても右側へ。右サイドの攻撃が充実していたこともあったのかもしれませんが、大分からすると揺さぶられることが少なく、狙い通りの対応となっていたように思いました。

この状況の中でも、右サイドの攻略を目指すうえで、個人的に狙い目だと思ったのは、鈴木に食いついた大分 三竿の背後。
一度、そのスぺ-スを狙って中山が飛び出した場面がありましたが、このような裏抜けが続けて行われると、三竿の対応を迷わせることが出来たと感じました。

4.左サイドで攻撃の厚みとバランスを

既にレビュアーのみなさんが書かれているように、後半は中村、そして選手交代後は中山が左サイドの開いた位置を取ることで、両サイドで幅を取り、攻撃のバランスを改善する修正が取られました。

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前半、大分の網にかかってしまっていた右サイド中心の攻撃も、逆サイドを織り交ぜることにより、相手のつかみどころを分散させることになります。

左サイドから右足で精度の高いキックを蹴ることが出来る中村からはファーサイドをめがけたクロスが何度か入り、折り返しからチャンスが作れそうな場面を作ることが出来ました。

また、縦への突破力のある中山は、スピードで縦に抜けてからのクロスを上げる形を作ることが出来ていたと思います。

しかしもう一歩のところで得点は生まれず。特に後半は相手をかなり押し込む展開だっただけに、より厚みを持った攻撃が出せればよかったと感じました。

というのも、大分を押し込んだ状態で前線に残るのは長沢の一人のみ。
左サイドの幅を取れた状態で、その内側のスペース(上図左側青色)に走りこめる選手が出てくると更に相手に怖さを与えられたのではないかと感じました。

5.相手の目線を変えて困らせる

ここ数試合で、河井、エウシーニョ、中山の右サイドとトップ下の鈴木のコンビネーションで右側の攻撃がうまく行っていたエスパルスに対して、右サイドへ圧縮し、スペースを消すことで対応した大分。

両者の戦術的な取り組みが、静かに、しかし熱くぶつけられた試合でしたが、エスパルスからすれば、後半の修正も織り交ぜつつ乗り越えたかった相手であったことには間違いありません。

この試合で突き付けられた新たな課題は、「攻撃でいかに相手の目線を変えられるか」ということかもしれません。

右に人が集まれば、逆サイドへ展開する。後方から斜めのボールを入れる。相手の背後へ抜け出す。ロングボールで逆サイドに展開する。ファーサイドにクロスを入れる。

相手の目線を変え、首を振らせ、自陣ゴール方向に身体を向けながらの対応を迫れば、自ずと守備対応を難しくさせる攻撃が出来るはずです。

言葉で書けば簡単に聞こえますが、6戦勝ちなしとなったチームに、ロティーナさんはきっと新たな手を施してくれるはずです!

大分同様に勝ち星を取れず苦しむ横浜FCを相手に、次節こそリーグ戦ホーム初勝利を期待したいです!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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