清水エスパルス マッチレビュー J1第12節(H)横浜FC -整理して徹底すること- 22.Aug.20
こんにちは、El Gran Equipoです。
今回はJ1リーグ第12節、横浜FC戦の振り返りをしたいと思います。
真夏の3連戦の最終戦となった一戦、前節のような熱い試合を期待しましたが、メンバー固定のエスパルスはやはり動きが重かったですね。
また、横浜FCは攻守にわたってチームとしての戦い方が非常に整理されており、その戦い方を徹底してみせ、この試合ではエスパルスより多くの優れた点を見せていました。
しかしながら、きっとこの敗戦もこれからのチームの糧になるはずです!それでは行ってみましょう!
1.スタメン
エスパルスは前節から奥井のみが変更となりました。対する横浜FCは契約上エスパルス戦に出場できない、六反、瀬古、一美の3選手が変更となりました。
エスパルスは連戦の中でもメンバーを固定していますが、やはり体力面での厳しさがみえてきました。
2.前半の気になった場面
①外側に追い出され続けるビルドアップ
序盤から横浜FCの整理された守備組織に非常に手を焼いたエスパルス。
ボランチがセンターバッグの間に下りてビルドアップを助けるアクションも少なく、外回りのパス回しに終始してしまいました。
横浜FCは中央を強固に占めた状態で、中盤と最終ラインの2つのラインを深さ、幅ともにコンパクトに保った、守備組織を敷いていました。
フォワード2枚もボランチへのパスコース消しながらセンターバッグへアプローチし、センターバッグからサイドへパスが出ると、サイドハーフやサイドバッグが中央へのパスコースを消しながら、素早くプレスをかけることの繰り返しです。
エスパルスのボランチに対しても、横浜FCのボランチが警戒をした位置取りを取るため、中央への縦パスは数えるほど、序盤はロングボールを使ったサイドチェンジの意識も見られましたが、サイドに追い込まれてボールを失う場面が多かったです。
前線のプレッシングから、ボールを外回りさせる横浜FCの守備は、チーム戦術がよく整理されており、エスパルスの攻撃が苦労した要因かと思います。
②理論立てられたビルドアップに苦しむ
逆にエスパルスの守備はというと、相手のシンプルながら徹底した位置取りに苦労し、ビルドアップに制限をかけることが出来ませんでした。
エスパルスの守備はカルリーニョスと後藤が相手センターバックにプレッシングをかけるところから始まります。
この時、特に後藤は、横浜FCのフォワードと同様に、ボランチを背後に意識しながらプレスをかけていく動きが見られました。
しかしながら、横浜FCはボランチがセンターバッグ脇に下りることで、数的優位をつくり、ビルドアップを行ってきました。
センターバッグがボールを持った際には、サイドバックがワイドに開き、サイドハーフは中央に引いてくることで、パスコースを作ります。
このサイドハーフの動きに、エスパルスのサイドバック、ボランチ、ウイングの誰が制限をかけるのか、試合を通じて答えが出せず、かなりの頻度でこの場所を起点にされてしまいました。
(1失点目もこのボランチ脇のスペースを使われました)
横浜FCはこの位置にパスを入れると、前向きに立っているボランチにボールを落とし、そこからサイドに展開する等の多様な展開を見せました。
また、サイドハーフがフリーになれば、前を向き、特にスピードのある松尾はドリブルで仕掛ける等、上手く攻撃を進めてきました。
試合を通じて、ここが使われていた中で修正がなされなかったのは、中盤の守備がヘナト、竹内の守備能力に依存していることの裏返しなのかもしれないと、少し気になりました。
③苦労した中でも生み出したチャンス
ここまで横浜FCに上手くやられてしまった場面ばかりでしたが、エスパルスにもチャンスがなかったわけではありませんでした。
この場面では、先述の松尾のような中間ポジションを取った西澤に上手くボールが入ったところから、相手を押し込み、逆サイドで相手の危険なスペースを取ることが出来ました。
ボールを外回りにさせられる場面が多かったですが、このように一度中央にボールを入れることで、相手を押し下げ、また、一度相手の身体の向きを変えることが出来るので、そこからの展開が上手く行ったのだと思います。
金井の位置取りも『らしい形』でしたので、決定的なチャンスにつなげたい場面でした。一方で、この試合、解説を担当された戸田さんからも指摘がありましたが、南のコーチングは危険な位置をよく分かって行われているものでしたね(その他の場面でもよく声が聞こえました)。
現地観戦ではないので分かりませんが、中継では梅田からはまだそういった声は聞こえないので、そういう面でも守備を引き締めてほしいですね。
3.後半の気になった場面
①ビルドアップの試行錯誤(カルリーニョスの場合)
後半も前半と同じように攻守に渡り、横浜FCに優位に試合を進められてしまいましたが、状況を改善するためにカルリーニョスが動きに変化をつけていました。
カルリーニョスが行ったのは、後方に下りてボールを引き出すというもの。
センターバッグがボールを持つと、普段は後藤が見せるようにボールを受けるべく下りてくる場面が多くみられました。
しかしながら、相手センターバックを引き出すことにはつながらず、相手中盤の守備ラインを乱すには至らず、外回りになってしまうボール回しに改善を見せることは出来ませんでした。
②ビルドアップの試行錯誤(竹内の場合)
同じく竹内もビルドアップを改善すべく、動きに変化を見せていました。
この動きは結果的にシュートチャンスにつながりました。
後半、竹内は時折、センターバッグの脇に下りて、横浜FCのビルドアップと同じように、相手ツートップに対して数的優位を作りました。
この場面では、相手ボランチの1枚が食いついたため、ソッコを経由して、中間ポジションを取った西澤にボールを繋ぐことが出来ました。
この位置でボールを受けると相手の守備対応にも難しさが出るので、結果的にカルリーニョスにフリーでボールを渡し、シュートに繋げることが出来ました。
カルリーニョスと竹内、どちらが正しいと言うわけではないですが、それぞれに工夫が見られた場面でした。
一方で、これから本当に勝てるチームになるには、このような選手個人の判断での変化だけでなく、選手の位置取りや配置を変える采配も見てみたいところだと思いました。
③プレッシングに対する答えは?
後半2点を追うエスパルスはフレッシュな選手を入れながら、守備のリスクを承知の上、前線からのプレッシングを強めていきました。
上図は横浜FCのリスタートからの繋ぎに対するエスパルスのプレッシングですが、ティーラシンを起点に、竹内、金子と連動して相手のパスコースを消すことで、ボールを奪い、ショートカウンターに繋げることが出来ました。
この場面では、竹内が飛び出していくことで、プレッシングがはまった場面ですが、この試合では、竹内が飛び出した後のスペースを使われる場面もかなり多く、チームとしてこの動きをどう考えているのかが気になります。
別の場面では、金子が袴田(センターバッグ)にプレッシングをかける場面もあり、そうすれば竹内は横浜FC 松尾の周辺のスペースをカバー出来ます。
相手センターバックにまでウイングが出てプレッシングをかける場合には、後方の選手(金井、岡崎等)はきちんと押し上げて、次のパスコースを消す動きが必要ですが、この試合ではそこも十分ではなかったように思います。
この辺りが、チームの戦術レベル、その戦術の浸透度合というところになるのだと思いますが、今後の試合でも注目していきたいと思います。
4.おわりに
今回は、逆にみれば横浜FCの戦い方が素晴らしかったともいえるほど、横浜FCが積み上げてきたものを上手く展開した試合だったと思います。
両チームともに、ボールを積極的に奪いに行き、ボール保持は丁寧に行うというコンセプトがあると思うので、横浜FCの戦い方は勉強になりました。
選手個人の能力では必ずしもリーグトップレベルとは言えない中で、監督の戦術を信じて、緻密に恐れず自分たちのサッカーを展開する横浜FCに、個人的にレアルソシエダを感じました(共感は得られないかもしれませんが)。
今回浮き彫りになった守備やビルドアップの構築について、エスパルスの今後の成長をこれからも見ていきたいですし、この状況で次節川崎フロンターレにどれだけの試合が出来るか、要注目ですね!
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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