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前に出るための5枚【清水エスパルス vs 横浜FM】マッチレビュー J1 第17節 30.May.21

こんにちは、El Gran Equipoです。

今回は第17節横浜FM戦を振り返りたいと思います。
ルヴァン鹿島戦と話題の代表戦の狭間で。。

ルヴァン杯での5失点を踏まえてか、最終ラインに5枚を並べる形を取ったエスパルス。フォーメーション上は守備的とみられる采配ですが、実際にはかなりアグレッシブかつ攻撃への繋がりを意識した形だったように思います。

もちろんこの展開で勝ち点を持ち帰ることが出来なかったのは残念ですが、ロティーナさんの戦術の柔軟さが垣間見られた興味深い試合でした。

それでは行ってみましょう!

1.スタメン

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エスパルスは非保持では最終ラインに5人を並べる5-3-2でありながら、保持時にはウイングバックが高い位置を取り、片山が前線へと押し上げるような少し可変する形を作りました。

対する横浜FMはこれまで通りの4-3-3。前節からレオ・セアラ、仲川が替わり、前田とオナイウが先発しました。

2.相手をはじき出す仕掛ける5バック

この試合でロティーナさんが敷いた守備組織は、横浜FMの攻撃の特徴に対応したとても興味深いものでした。

特に前半は、横浜FMの攻撃を受けて、自陣に押し込まれてしまうことなく、きちんと相手を押し返す守備が出来ていたと思います。
(態勢を整え、落ち着く前に失点してしまったのは残念でした)

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エスパルスの守備陣形の前提として、横浜FMの攻撃について少し触れたいと思います。
横浜FMは攻撃になると、両SBが内側のレーンに入りボランチのような位置を取り、幅と高さを取った両WGへのパスコースを空けます(WGを孤立させ相手と1対1を仕掛けさせることが狙い)。
SBが内側に入ってくるため、ボランチの選手は最終ラインに下りたり、サイドに流れたりと流動的に動きます。

これに対して5-3-2の守備組織を作ったエスパルスはまず、立ち位置で相手の狙いに制限をかけます。

両WBは相手のWGを担当し、縦方向への動きに蓋をします。そして相手SBが入ってくる中間のレーンには中村と片山を立たせ、相手SBをけん制。
そして、この配置から中盤とCBが前向きに出ていくことで相手の攻撃に制限をかけていきます。
中盤では自分の背中で相手SBへのパスコースを消すことが出来れば、ボールを持つ相手CBへ飛び出していく狙いが見られました。特に中村は自分の担当であった横浜FM 小池を背中に捨てながら、チアゴにプレッシャーをかける場面が多く見られました。

前向きに中盤が出られるのも、その背後のスペースはCBが前に出ることで消すという仕組みがあったから。中村が出た背後に入ってくる選手には福森が自分のポジションを捨てて出ていくことで、相手に起点を作らせませんでした(福森が出ることで空くスペースは、鈴木とヴァウドがスライドして埋める)。

もう一つ興味深かったのが、逆サイドの中盤に入った片山の位置取りです。
前節のFC東京戦では中盤で選手同士の距離を均一に保つことでスペースを管理していたと紹介したのですが、この試合では相手SB(ティーラトン)の位置を基準にポジションを取ることが多かったように感じました。

宮本と片山の距離は少し開いてしまうのですが、空いたスペースを相手に取られてもヴァウドが前に出るという役割分担となっていました。ここには、片山が下がり過ぎないようにする意図があったのではないかと思います。

ちなみに、このCBが前に出るという守り方をチャンピオンズリーグ決勝のチェルシーが採用していて、ロティーナさんの戦術の幅広さに感動しました。

3.スムーズなミニ可変と相手を押し返す仕組み

1点を失いながらも、相手の良さを消す守備組織で、うまく試合を進めたエスパルス。守備における立ち位置を生かしながら、相手をきちんと押し返す攻撃が出来ていました。

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まず第一に、後ろを5枚としながらも最前線にはブラジル人選手2枚を置き、相手が攻撃している間にも、速攻で相手を刺せるという仕組みを作りつつ、ボールを奪い返すと、図のように選手が立ち位置を取ります。

ビルドアップ隊は最終ライン3枚と中村、宮本の中盤2枚とし、WBのエウソン、奥井は幅と高さを取ります。
ここでポジションが浮く片山は、右サイドに出るのですが、時にツートップと同じくらいの高さまで上がり、相手を押し込みます。

横浜FMはエスパルスのビルドアップ隊に対して、オナイウ、マルコス、前田(もしくはエウベル)の3枚とボランチ2枚で圧力をかけつつ、後方からの組立を詰まらせ、ボールを即時奪還したいという思惑があったと思います。

これに対してエスパルスは相手のプレスに付き合うことなく、右サイドで作った片山とティーラトンの体格面でのミスマッチと数的優位を生かしてダイレクトに攻撃を仕掛けます。

左CBにボールの扱いに長けた福森が起用されたのも、ここで対角線のロングボールを蹴る狙いがあったためだと思います。

同点弾もこの形から生まれましたが、その他の場面でも右サイドを起点にした攻撃が何度もあり、ここが一つの狙いであったのだろうと思います。

守備時の片山の立ち位置について、下がり過ぎないと書きましたが、攻撃へ切り替わった際にスムーズに高い位置を取れるように、といった理由もありそうです。

4.作られたずれと剛腕を押し返す力

前半を1対1で折り返し、後半も序盤は上手く戦えていたエスパルスでしたが、若干配置を変えてきた横浜FMに徐々に押し込まれてしまいました。

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前半はWGに幅を取らせ、SBが内側を取っていた横浜FMでしたが、後半、徐々にSBが幅を取り、WGが内側に入る場面が増えていきます。

前半は相手SBが自分と同じレーンに入ってくるため、対応がうまく行っていた中村と片山でしたが、相手SBに幅を取られることで、迷いが生じます。

幅を取ったSBに自分が付いて行ってしまうと、流石に中盤がスカスカになってしまいます。前半、前に出てきてくれていたヴァウドや福森は、引き続き前を狙っていますが、相手WGが内側に入ってくることもあり、ここにも難しさが出ていました。

そこで片山は相手SBをエウソンに任せる選択を取るのですが、相手WGが自分の内側に入っていることもあり、相手SBの位置まで前に出ることが出来ません。
結果として、片山の前をパスが通り、畠中からティーラトンへ展開され、エウソンが遅れて守備対応を行うという場面が増えてしまいました。
サイドで相手に時間を作られてしまうことになり、徐々に相手に押し込まれてしまうことになりました。

押し込まれた状態から、攻撃を仕掛けるには、前線の選手に一度ボールを預け、陣地を回復したいところでしたが、チアゴとカルリーニョスが交代してからは中々難しく、相手の攻撃を押し返すことが出来ませんでした。

そして最後の失点。。非常に悔しい失点でしたが、宮本が前に出たところをひっくり返された時点で、対応としてはかなり難しくなってしまいました。
この場面については、hirotaさん海月亭さんとも色々とお話しさせていただきました。ありがとうございました。

状況を何とか改善して、相手を押し返すという賭けを仕掛けて、敗れた形で、エラーとまでは言えないと思っていましたが、ロティーナさんの試合後コメントではこの場面で2つ小さなミスがあったということでした。
(どこだったんだろう?)

後半、特にラスト20分は相手が支配するという展開になった。その中でも大きな問題はなく、権田(修一)が止めるというシーンも少なかったが、相手に支配されると何かが起こりうる。細かい部分で2つミスがあって、2失点目が生まれてしまった。それで試合を落としたという印象だった。
(出典:https://www.s-pulse.co.jp/games/report/2021053001)

5.幅を広げ、勝つ術を掴む

出来る限りの策を打ち、それに選手が応え、途中までは思い通りに試合を運べた。そんな印象だっただけに、最後に守り切れずに敗れてしまったことはとても悔しい。。しかし、この試合はチームの幅を広げるためには大きな収穫だったと思います。

実際、ルヴァン鹿島戦も西澤がWBのような位置を取っていましたし、徐々に戦い方の種類が増えているようにも感じます。

横浜FM戦を見て、ロティーナさんは経験がありながら、考え方が柔軟でよい監督だと感じましたし、今後のチーム作りがまた楽しみになりました。

カップ戦と中断期間を経て、次節は仙台戦。
手倉森監督の下徐々に結果が出ている不気味な相手ですが、順位を上げていくためにもきちんと叩いてほしいです!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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