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「偶然シンフォニー」の転調を解説します

「転調って何?」「転調について分かりやすく説明してほしい」という声を多数いただくので、転調について書くことにしました。

やや長い記事ですが、理論の説明などはほとんどありませんので、想像よりは読みやすくなっているとは思います。


このnoteではYouTubeへのリンクを大量に貼っていますが、転調直前のちょうどいいところから再生されるようにしています。ですので、実際に聞きながら読んでいただくと分かりやすいかと思います。


そして、記事の後半では≠ME「偶然シンフォニー」の転調について解説しています。

あの歴史的転調楽曲を、音楽が分からない人にも分かるように、頑張って解説しています。


なお、最後に有料部分を設定してみましたが、かなり短いので、本当に興味があるかたと、投げ銭したいという場合だけ読んでいただければと思います。




はじめに

私は、普通に素人です。音楽を職業にしているわけではありません。

ただ、25年以上ピアノを弾いており、耳コピを日常的にしているので、転調について一定程度の理解はできているつもりです。

ただ、音大などには行っていないですし、音楽理論を勉強したことも有りません。ピアノ教室もだいぶ早い段階で辞めたため、色々と独学で、感覚的な理解になっています。

ということでこのnoteは、転調に関して独学で分かった気になっている私が、誰にも分かるようになんとなくそれっぽく説明しているもの、です。



それでは、本題に入ります。



転調とは何か


転調とは「調」が変わることです。

ですので、転調について学ぶには、まず「調」を知る必要があります。


「調」は、「キー(Key)」と呼ばれたりします。カラオケとかで「キーが高い」とか言うと思うんですけど、それです。


ところで、「キー」ってなんなんですかね。

Wikipediaに「調」の記事があるので見てみましょう。

調(ちょう、key)は音楽用語の一つ。

メロディー和音が、中心音(tonal centre)と関連付けられつつ構成されているとき、その音楽調性(tonality)があるという。伝統的な西洋音楽において、調性のある音組織調と呼ぶ。(以下略)


全く説明になってなさすぎワロタ


ただ、Wikipediaを編集した人に文句とかを言うつもりは全然なくて、「調」をちゃんと説明するのって本当に難しいんですよね。

いろいろ考えましたがうまい説明が思い付かないので、とりあえず「型」とか「パターン」みたいな言葉と同じような意味だと思っていただければOKです。


そういえば、カラオケで「音が高い」とはあまり言わないですよね。「キーが高い」とは言うと思うのですが。

つまりは、「調=音」ではありません。「調」というのは、あくまで音の組み合わせ、パターンのようなものを指す言葉です。



「調」は、全部で12種類あります。

ピアノの鍵盤は誰でも見たことが有ると思いますが、12個で1セットになっていて、そのセットの繰り返しになっています。

ピアノの鍵盤を見ると、
白が7個、その間に黒が5個、
という繰り返しになっています


それぞれの音に対応する形で調があるので、12種類というわけです。

以下の12種類です。覚えなくて良いです。
 ・白: ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ
 ・黒: ド#、レ#、ファ#、ソ#、ラ#


この「調は12種類ある」という話は、このnoteの後半で重要になってきます。



さて、調についてちゃんと説明すると大変なので、「色」にたとえてみます。


青、水色、緑、黄緑、黄色、・・・と12種類のパターンがあって、全ての曲は必ずどれかの色で成り立っている。

この曲は青色、あの曲は赤色、のようなイメージ。

そのような感じで、全ての音楽は12種類の中のどれか、に必ずなっています。


そして、その種類が曲の途中で変わることを「転調」と呼びます。

適当な例ですが、1番までは赤色だったのに、曲の終わりには青色になっている、みたいな感じです。



色には、それぞれ関係性が有ると思います。

青色と水色は似ている、緑色と黄色は割と近い、赤色と青色は似ていないけれど原色という共通項がある、みたいな。


調についても同じことが言えまして、

・ド と ド# は、近い
・ド と ファ は、割と似ている
・ド と ファ# は、かなり遠い

みたいなことがあります。


そして、「近い関係」「似ている関係」の間を行き来する転調は、割と自然に聞こえることが多く、実際に多くの楽曲でも見受けられます。

つまり「調」の中には「転調しやすい関係」というものが存在するってことです。

逆に言えば、「転調しにくい関係」もあります。

色にたとえるなら、水色から青色に行くのは自然に聞こえるけど、青からピンクに行くのは変化幅が大きすぎて不自然に聞こえる、みたいなイメージです。


具体例を聞いたほうが分かりやすいと思うので、ここからは実際の転調をご紹介します。




まほろばアスタリスク

落ちサビからラスサビにかけて、転調しています(03:12~)。キーが1段階上がっています。

色にたとえるなら水色から青色になっているイメージ。色が濃くなるような。



はにかみショート

これも「まほろばアスタリスク」と同じで、ラスサビの前で転調しています(04:02~)。キーが1段階上がっています。

冒頭や1番・2番のサビの前にも転調していますが、ここでは説明を省きます。



チョコレートメランコリー

「まほろばアスタリスク」「はにかみショート」と同様にラスサビでも転調していますが、それよりもだいぶ前の段階、1番のサビの途中で転調します(01:00~)。1サビの途中で1段階上がっているのです。色にたとえると水色から青色になっているイメージ。色が濃くなるような感じ。

ちなみに、2サビでも同じことが起きます。


それに加えて、落ちサビで2段階下がっています(2:45~)。


そして最後には、ラスサビで3段階上がる(3:00~)、という珍事が起きています。


更に、ラスサビの途中でも転調しています(03:15~)。


ということでチョコレートメランコリーは、とんでもない回数の転調を繰り返す曲になっています。


この動きを色にたとえるなら、1サビや2サビでは水色から青色に濃くなるのを繰り返し、落ちサビでは急に黄色になって、ラスサビで青色になって、ラスサビの後半で紫色になる、みたいな感じです。


転調しすぎです。ここまで何回も転調するのは非常に珍しいです。

一般的には、曲中で1回でも転調すれば「おっ!転調してる!」となりますし、3回くらい転調してたら「めっちゃ転調してる!!!」となります。

チョコレートメランコリーは10回くらい転調してます。これは相当な転調っぷりです。



さて、転調がどういうものか、なんとなく分かってきたかと思います。



では、なぜ転調するのでしょうか?




なぜ転調するのか


先に書いておくと、楽器を弾く側にとっては、転調しないほうが楽です。

転調が多ければ多いほど、弾くのは難しくなります。(正しく言うと、覚えるのが難しくなる、のほうが正確な表現かと思います)

歌う場合でも同じだと思います。転調だらけの曲を歌うのは、転調がない楽曲に比べて、とても大変だと思います。

実際、アカペラでチョコレートメランコリーを正確な音程で歌える人はほとんどいないと思います。同じようなサビのメロディが何回も出てきますが、4種類の音程があるのです。連続して聞き比べてみると分かると思いますが、これを正確に歌い分けるのは本当に難しいと思います。

また、当然ですが作るのも大変です。


ということで、転調する曲を演奏したり歌ったりするのはそこそこ難しく、人間にとって負荷がかかります。

それなのになぜ転調するのか、ということを私なりに考えてみました。


恐らく最大の目的は、「雰囲気を変えるため」です。大体の転調はコレが目的のはずだと思います。

実際、前述の「まほろばアスタリスク」や「チョコレートメランコリー」では、転調する瞬間に雰囲気が変わるような印象があったと思います。

人によっては、音がちょっと大きくなったように聞こえたり、テンポが速くなったように聞こえたりするのではないでしょうか。転調すると、そんな感じで雰囲気が変わります。(実際に音が大きくなったり速くなったりする例もあります)


他の理由としては、カラオケでキーを変えるように、「高すぎたり低すぎたりするのを回避するために転調する」というものもあったりするようです。

たとえば「誰もいない森の奥で一本の木が倒れたら音はするか?」(以降、誰森)では、落ちサビからラスサビにかけて1段階上に転調するのですが、実はそれよりも前、落ちサビに入る直前で1段階下に転調しています(02:52~)。

つまり「誰森」では、ラスサビに入るときに「上がっている」のではなく、落ちサビに入るときに1段階低くしておいて、そこから元に戻す、ということが行われています。

結果として、1番のサビ、2番のサビ、ラスサビは同じ高さです。そして、落ちサビだけ1段階低い


一般的に、音が上がる方向に転調すると音程が高くなるため、歌うのは大変になってしまいます。

そこで、前述の通り「1段階下げておいて元に戻す」という工夫を行うことにより、転調により曲の雰囲気を変えて盛り上がりを演出しつつも、「高くなりすぎない」という目的が達成されます。

実際そういう目的でそのような転調が行われている楽曲がある、と某作曲者から聞いたことがあります。ただし、この「誰森」の転調がその目的なのかは分かりません。

参考まで「誰森」は、≠MEの楽曲でも屈指の高音である「ファ」の音が登場する曲です。3:32の「見ていと 叫ぶんだ」の部分です。

「誰森」は、この部分に限らず高い音が続く曲なので、下げておいて戻す、という工夫が取られているのだと思います。


そういえば、Marcatoにて「ファ#」が初めて登場しました(02:56~)。これは既出の「ファ」よりも1段階高い音です。ちなみに「ファ」は、≠MEでは「誰森」と「このままでモーメンタリ」で登場していました。

ファの時点で相当に高いのですが、「ファ#」となると本当に高いです。「ファ#」が登場する曲は、ほとんどないと言って良いレベルです。



少し話が反れましたが、そんなわけで、曲の雰囲気を変えるため、あとはちょうどいい音程にするために、多くの転調は行われています。

(補足しておくと、ギターなどの特定の楽器で弾きやすくするため、みたいな理由のときもあるはずです。)




ここまで転調について色々と書いてきましたが、実は、別に転調しなくても、雰囲気を変えたり、盛り上がりを演出することはできます。

転調転調と狂ったように書いてますが、転調がない曲もたくさんありますからね。

いくらでも例は挙げられるのですが、2つご紹介します。


君はこの夏、恋をする


す、好きじゃない!


どちらも曲中に転調はありませんが、曲の後半にかけてかなり盛り上がりますよね。

このことから分かる通り、転調が絶対というわけでは全くありません。転調があってもなくても「良い曲は良い曲」です。転調があるから神、とか、転調がないからダメ、とか、そういうことはありません。転調が絶対的に良いことであるなら、世の中は転調だらけになってしまいます。

ただ、珍しい転調を見かけると興奮するし、ときには感動さえします。転調には、そういう魅力があります。


ということで「珍しい転調」について触れたいと思います。

そのための準備として、まず「よくある転調」を見ていきましょう。





よくある転調


よくある転調といえば、「1段階上がる」です。世の中の転調の7割くらいはコレだと思います。J-POPに限れば恐らく9割がコレです。


次の2曲は、どちらも「ラスサビで1段階上がる曲」です。


秘密インシデント


ラストチャンス、ラストダンス


他にも沢山あります。

ということで、「1段階上がる」はよくあるんですよね。ラスサビで1段階上がる曲を聴くと、その瞬間に盛り上がりが加速する感じがあると思います。





珍しい転調

珍しい転調について語る前に、転調のトレンドを少し話したいと思います。

これは≠MEに限る話ではないのですが、「2段階上がる」転調も最近は増えてきました。以前はそこまで多くなかったと思います。(個人的な感覚です。統計を取ってるわけではありません。)

1段階の転調が多数派だったのに、最近は大幅な転調が増えてきたのです。

その背景について、少し考えてみたのですが、勝手な仮説が3つ、思い付きました。


(1)転調が世界中で行われ続ける中、普通の転調ではありきたりになってしまい、大幅な転調が増加している、という説。転調のインフレ。そもそも楽曲って増える一方で減ることはないので、ネタ切れというか既出の曲と被らないようにすると、必然的に転調を活用する必要が出てくるという事情もありそうです。

(2)技術の向上により、いかに「歌いづらいか」「作りづらいか」「弾きづらいか」を追求するようになった、という説。技術のインフレ

(3)DTMの普及により、「弾きやすいか」「歌いやすいか」などがあまり意識されなくなった、という説。
(DTM:デスクトップミュージック)


いま挙げたのは全てふと思いついた説ですが、なんか的を射ている気がします。時代が進むに伴って色々な要素が重なり、転調が過激になってきたのです。




そんな過激な転調の代表例が、YOASOBIです。

YOASOBIは転調大好きなんですよね。転調しない曲が無いのでは?と思うレベルで転調だらけ。代表曲の「アイドル」をはじめ、多くの曲で転調だらけです。

ちなみにYOASOBIは小説を題材にして楽曲を作るコンセプトゆえ起承転結の「転」を大事にしていて、それもあって「転」調しまくっている、という説を見たことがあります。真偽は知りませんが、面白い説だと思います。

余談になりますが「アイドル」は、AメロやBメロではピアノの黒鍵(黒いとこ)ばかりを弾くメロディになっており、サビは転調してピアノの白鍵(白いとこ)ばかりを弾くメロディになっています。

この「白」と「黒」という鍵盤の色が、歌詞を連想させている、という考察があります。かなり面白い考察だと思います。

ちなみにラスサビは黒鍵だらけになります。



さて、「大幅な転調がトレンド」ということを軽くご紹介してきましたが、それでも、「5段階上がる」とかになると、かなり珍しくなります。

珍しい理由は色々あると思いますが、「作るのも歌うのも弾くのも聞くのも難しくなってしまう」というのが理由だと思います。作るのも歌うのも弾くのも当然大変だし、聞く側にとっても恐らく複雑すぎるのです。

そもそも、前述のように転調しなくても十分に盛り上がるのですから、言ってしまえば、大幅な転調を曲に入れるのは、割に合いません。



ただ、前述の通り、調の間には「転調しやすい関係」と「転調しにくい関係」があります。

そんな「転調しやすい関係」の間柄であれば、自然に転調しているように聞こえることがあります。

それを巧みに利用した上で、エグいことをしているのが「偶然シンフォニー」なのです。





偶然シンフォニー


このnoteの核心部に入ります。

≠MEの1stアルバム「Springtime In You」の1曲目、「偶然シンフォニー」の転調を解説してみたいと思います。

MVはコチラ。初見の方はまず最後まで聞いてみてください。

キャッチーなメロディで、ライブでも盛り上がる曲です。



先に、簡単な歌詞考察をします。

「偶然シンフォニー」の歌詞には、落ちサビで「モジュレーション」という言葉が入っています。

君に出逢い メロディが動いた
やっと気付く これが恋でモジュレーション Ah
テスト中の君 初めて見た
この恋は常にフォルティッシモ

このモジュレーションのスペルは「modulation」のはずですが、意味を調べてみると「転調」と出てきます。

歌詞が先に作られたのか、曲が先に作られたのかは知りませんが、偶然シンフォニーは「転調」をテーマに書かれた曲である、という予想が立ちます。



曲の解説に入りますが、実は転調回数はそこまで多いわけではありません。転調するタイミングと、転調する幅が異質なのです。


イントロからサビが始まる直前までは、ずっと「シ(B)」の調で進みます。調が分からない人は青色だと思ってください。

青色のキャンバスの上に、青色の歌声が乗っているイメージです。



まず、サビ前で転調します(0:39〜)。


そして、サビ途中で再び転調します(1:12~)。


実は、「サビの途中で転調」ってだけでかなり珍しいんです。

序盤に紹介したチョコレートメランコリーも同じでサビ途中に転調していますが、実は、かなり珍しいのです。

どのくらい珍しいかというと、1グループで2曲もサビ途中転調楽曲がある時点でかなりヤバい、っていうイメージです。


前述のチョコレートメランコリーでは、サビ途中で1段階あがります。1段階あがるので、曲が持つ不気味な雰囲気が加速したような印象がある。色にたとえるなら、水色が青色に変化するようなイメージでした。

ただ、偶然シンフォニーのヤバいところは、転調する幅が「1段階」とか「2段階」とかじゃないんです。5段階なんです。

通常、こんな転調が認められるわけがありません。しかもサビの途中にいきなりです。


ただ、偶然シンフォニーは曲として成立しています。

これが成り立つ背景は、2つ考えられます。


1つ目が、メロディです。転調の前後でメロディが大きく離れていません。そのため、そこまで不自然に感じません。これが仮に音がめっちゃ離れていたら、さすがに不自然に聞こえてしまうと思います。急に高くなったり低くなったりしたら、曲として変ですよね。

2つ目が、転調前後の調が「転調しやすい関係」にあることです。色にたとえると原色の青色原色の赤色みたいな感じです。色自体はかけ離れているんですが、原色であるという特徴が似ているんです。だから、転調前後で大きな違和感がない。(まじめな音楽の話をすると、構成音がかなり共通している、という話です。)


先ほど「5段階」と書きましたが、これが4段階だったらとんでもない違和感が生じます。逆に6段階でもダメです。5段階だから、サビの途中でも転調できるのです。

この「5段階」というのがポイントなので、中には、サビの途中で転調していることに気付いていなかったかたも多くいらっしゃるようです。


そんなかたは以下の動画をご覧いただくと分かりやすいかと思います。仮に、サビの途中で転調しなかったらこういうメロディでした、という架空の話をしています。

原曲を聞いてからこの動画を見るとメロディに違和感ありますよね。裏を返せば、つまりはサビの途中で大幅な転調をしてるっていうことです。

つまりは、転調することで違和感をなくしているのです。転調するからメロディが繋がっているんですよね。ということで、ここで改めて断言しますが、偶然シンフォニーは転調ありきで作られた楽曲です。

これがかなり重要です。

偶然シンフォニーは転調ありきで作られた楽曲です。

この事実が本当にヤバい。こんな例、聞いたことがありません。



まほろばアスタリスクや秘密インシデントのように、ラスサビで1段階上がる曲は、メロディについてそこまで大きな制約はないんです。1段階の転調であれば、基本的にどんなメロディでも繋がっているように聞こえるからです。


このことについて補足します。

曲を1段階上げる転調って難しくないんです。

カラオケで、転調の無い曲、たとえば「す、好きじゃない!」を入れて、ラスサビになる瞬間に自分でリモコンの「+1」のボタンを押してみてください。最初は違和感あるかもしれませんが歌えると思います。「+1」をする前と比べて少ししか上がっていないので、歌うのは難しくないと思います。

ということで、一般的には、「曲を一旦作ったあとに、編曲の段階とかで、転調を入れる」ということは不可能ではないんですよね。実際、そのような形で誕生した転調も有ると思います。


一方で、偶然シンフォニーは違います。そもそも転調が5段階という驚異的な幅であり、かつ、転調するおかげでメロディが繋がるように作られているので、転調がなくなっちゃうとメロディが一変してしまいます。転調ありきで作られているのです。

試しに「す、好きじない!」をカラオケに入れて、ラスサビに入る瞬間に「+5」してみてください。元の音程と離れすぎてて訳分からなくなると思います。そして、そもそも高すぎて歌えないはずです。

でも、偶然シンフォニーは違います。「+5」することでちょうどいい音程になるように意図的に作られているのです。



さて、先ほど偶然シンフォニーではサビ前でも転調をしている、と書きました。

実は、サビ前では7段階転調しています。

サビ途中の5段階転調もヤバいのですが、サビ前の7段階転調も異次元です。




さて、ここで思い出して欲しいのですが、調には12種類あります。

そして、サビ前に7段階転調して、サビ途中で5段階転調することで、合計で12段階転調していることになります。

つまりは、元に戻っているんですよね。7ヶ月後の5ヶ月後は今日と同じ月、みたいなイメージです。

なんとなく偶然シンフォニーのヤバさが伝わったでしょうか、でもこれだけでは終わりません。偶然シンフォニーの真骨頂はここからです。



ということで、落ちサビの話をします(03:00~)。

落ちサビのメロディは1番・2番と同じ高さです。

しかし!

1番2番のサビと、落ちサビを比べると、転調は確かにしています

このnoteの最初に「転調とは調が変わること」と説明を書いたはずですが、偶然シンフォニーの落ちサビでは、調が変わっているのに歌声の高さは変わっていないのです。

言い換えると、ボーカルは転調していないのに、ボーカル以外のギターとかベースとかの楽器の音は転調しているのです。

色にたとえると、青色のキャンバスに、赤色の絵が描かれている、という極めて珍しい状態が起きています。

今まで私は普通に生きてきた中で恐らく数千曲くらい音楽を聞いてきたとは思うのですが、このパターンを見たのは、私は初めてでした。(アニソンでは前例があるらしいです。)



そういえば、偶然シンフォニーのサビのメロディってかなりシンプルですよね。歌詞も「好きだ好きだ好きだ~」の繰り返しですし。

このことに関して、偶然シンフォニーが解禁されて数時間後に私が投稿したコレ。作曲者本人からイイネされているので恐らく正解です。自分でも書いててよく意味が分かりませんが……

複雑なメロディにしてしまうと、転調の前と後のどちらにも合わせるのってかなり難しくなるので、あえて単純なメロディにした、と考えられます。

色の話でたとえると、単純な色で絵を描いたおかげで、違う色のキャンバスなのに綺麗な絵になった、というようなイメージ。



ということで話を戻すと、偶然シンフォニーでは、

  • 曲が始まったときは、青色のキャンバスに青色の絵が描かれていた

  • サビの途中で転調し、赤色のキャンバスに赤色の絵が描かれ始めた

  • 落ちサビでエグい転調が起きて、青色のキャンバスに赤色の絵が描かれ始めた

みたいなことが起きています。


このことを認識した上で歌詞を見ると、意味深に見えてきます。

君が主旋律の世界が好き
自由に 奏でて

元々は違う調だったのに「君が主旋律の世界が好き」なので無理やり転調して合わせに行った!?みたいな考察ができそうです。


そういえば、最初に紹介したこの歌詞をもう一度見てみましょう。

君に出逢い メロディが動いた
やっと気付く これが恋でモジュレーション Ah
テスト中の君 初めて見た
この恋は常にフォルティッシモ

モジュレーションは「転調」を意味する言葉でしたが、そもそも「君に出逢い メロディが動いた」のです。メロディが動くっていうのも「転調」みたいじゃないですか?

このnoteでは歌詞考察は深く掘り下げませんが、なにか深い意味が秘められている気がしますね。




さて、ここまでで既に自分が狂いそうになっているのですが、まだ終わりません!

極めつけはラスサビ前の大転調です(03:20~)。


青色のキャンバスに赤色の絵が描かれていたところから、ラスサビでは、1番や2番のサビと同じ高さに戻すため、更に大幅な転調を行うわけです。そう、7段階の転調です。

他の曲では、ラスサビ前に1段階転調するだけで大盛り上がりですが、偶然シンフォニーでは7段階も転調します。ラスサビにかけて偶然シンフォニーでは一気に7段階も転調して、盛り上がりを最大限に爆発させるわけです。


といっても、まぁ1サビ前でも7段階転調していたし、サビ途中でも5段階転調していたので、それと似たようなことをもう一度やるだけです。



……と思うじゃないですか?


サビ前や、1サビ・2サビの途中では、一瞬で転調していましたよね。この「一瞬で転調」は簡単なんですよ。なにせ「5段階」「7段階」は「転調しやすい関係」にあるので、スムーズに聞こえるのです。

ただ、ラスサビ前の転調は違います。7段階の転調を、段階を踏んで転調しまくります(03:19~03:26)。

何回転調してるか僕も未だによく分かっていないのですが、多分2〜3回くらいに分かれて転調しています。

つまりは、2段階⇒3段階⇒2段階、みたいな感じで転調!転調!転調!って感じで転調しまくってるようなのです。

ということで、「転調しやすい関係」である7段階を、一気に行くのではなくあえて分けて複数回転調することで、めまぐるしく雰囲気が変わるような印象が生まれます。

そして、この大転調を繰り返した結果、ラスサビ開始時点(03:27~)では元通りになり、青色のキャンバスに青色の絵が描かれるわけです。

そして再び、ラスサビの途中で再び転調して赤色のキャンバスに赤色の絵が描かれるわけです。




はい、これで偶然シンフォニーの解説は以上です。自分で書いてて何書いてるのか分からなくなってきました。かなり疲れました。


音楽分からない方からすると、偶然シンフォニーのメロディは非常にシンプルに聞こえると思います。歌詞も「好きだ」の連呼なので分かりやすく聞こえるかもしれません。ただ、実際は全くシンプルではありません。最上級に複雑な楽曲だと思います。


音楽が分かる人向けに追加で解説書いておくと、こんな感じです。

ハ長調(C)って黒鍵ないじゃないですか。(ドレミファソラシド)
ト長調(G)ってファだけ黒鍵じゃないですか。(ソラシドレミファ#ソ)

基準音のドとソってかなり離れてますが、ハ長調(C)とト長調(G)を比べると構成音はほぼ同じなので転調しやすそうですよね、

っていう話です

ただそんな単純な話じゃないのですが・・・

だって、ト長調(G)の伴奏にハ長調(C)のメロディ合わせてるんですよ、意味わからんすぎません?





以上です!

訳わからんところ多いと思いますが許してください、そのくらい転調を説明するのって難しいのです……。

間違っているところがあればご指摘ください、直します。


参考になった!というかたがいれば嬉しいです。


今回のnoteでは≠MEの楽曲「偶然シンフォニー」の転調のすごさについて頑張って解説してきましたが、この楽曲の1番すごいところは、この異常な転調が全く気にならないくらい会場が盛り上がるところだと私は思っています。

この曲について「転調が無い」と錯覚している人も多くいるくらい、転調が自然すぎるのです。

それだけ、シンプルなメロディと転調のタイミングが絶妙すぎるのです。

メロディはかなりシンプルですが、これほどの超大作は私は見たことがありません。そんなレベルで「偶然シンフォニー」に感動しています。





最後にお知らせ

気長にピアノYouTubeチャンネルをやっています。
気が向いたらご覧ください!




(おまけ)≠ME激ヤバ転調楽曲3選


ここからおまけです。最後に≠MEのヤバ転調楽曲を3つ紹介します。有料にしちゃいましたが、興味があれば読んでみてください。

姉妹グループの=LOVE、≒JOYにも転調は沢山あるのですが、≠MEが最も転調に恵まれていると思います。(恵まれている?)

今回ご紹介した「偶然シンフォニー」が最上級にヤバくて、「チョコレートメランコリー」も同じくらいヤバいのですが、それだけではありません。

私なりに3つ厳選してご紹介します。


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